M-12016決勝進出コンビの動画を見て無責任に思うことー②カミナリ
アキナについて書いた前回の文章を読み返して、「なにさまやねん、素人が、俺がアキナやったら腹立つなあ~!」と思いました。
でも書く(やる)んだよ!Ⓒ根元敬
…どうせ目に入ることはないのです。
今回は、カミナリです。
m-1の舞台に盛夏の雷のように現れたニュースタイルどつき漫才。
なのになぜか、懐かしいにおい、泥臭さを感じるのもお笑い好きの心をくすぐるでしょう。
竹内まなぶと石田たくみの高校同級生コンビ。
表層的には、見てるこちらが思わず顔をしかめてしまうほどの迫力で放たれるツッコミがこのコンビの顕著な点。
バチ!という音に思わずしかめつつも目が吸い寄せられてしまいます。
2016年9月10日放送名古屋のバラエティ『本能Z』のネタ祭りにおいて、今田耕司に現在のネタの形が出来た経緯を尋ねられて
「地元で単独ライブをやったとき、あまりに受けなさすぎで石田が本気で竹内をひっぱたいたのがきっかけ」
と本人たちが説明していたことから、彼らもそれが一番の特徴だと考えているようです。
しかし、カミナリの漫才の本当の特徴は、いったんボケを見逃してから100のテンションで突っ込むという、オンオフの切り替えと、それによって生み出される独特のリズムです。
・「あのさあ、たくみくん」「なんだい、たくみくん」といういかにも紳士的で安心感のある入り
・電話でアルファベットを伝える方法、という日常的なテーマ
・石田の7:3わけの髪型
すべてが、ツッコミがオンになる瞬間に向けての伏線です。
そこまで些細な違和感を感じつつも、ツッコミがないため、展開を待ちわびていた観客に、いきなりぶつける100%のツッコミ。それによってたまっていた笑いたい気持ちが解放される瞬間には、たまった尿を流しだすときのような快感すらあります。
通常の、会話の流れという直線があるとします。
その流れの乱れが、ボケです。
そして、その曲がりくねり方の形や歪さを際立たせるのがツッコミです。
通常の漫才の場合、1ボケが放たれれば、すぐにツッコミがなされます。直線のたとえを使うと、直線に歪みが生じた瞬間、そこにスポットが当てられるということです。
カミナリの漫才の場合、1ボケが放たれても、いったんは見逃されます。そして、そのまま会話は流れ、客が違和感を感じつつも忘れかけたそのとき、いきなり100%のあのツッコミが放たれます。直線のたとえを使うと、直線に歪みが生じるが、まったくフォーカスされず、「気のせいか」と思ったところで急に近くにカメラがドアップで寄せられるような状況です。
そのインパクトたるや……。
出番は2番手と、不利と言われる序盤ですが、一発目のインパクトで、決勝の3組に残ることが出来ても何らおかしくはありません。
ただ、心配なのは2本目でしょうか。未見の一発目と比べると、システムを知ってしまった2本目に対してはどうしても衝撃は薄れてしまうと思います。
(まあそもそも、審査員の芸人はカミナリがどういう漫才をするかは当然耳にしているでしょうし、見たこともあるでしょうが、会場や茶の間の受けとして)
ですから、やはり2本目に勝負ネタを残しておくことが優勝には、不可欠ではないかと思います。
ただ、そうなると1本目をインパクトだけで乗り切れるのかという問題は発生するのですが、……。
以上です。