週刊ヤングジャンプ 2017年21号 新連載「カオリわーにんぐ」感想―ぬるいペット漫画
新連載。出来が悪い。
動物を以上に惹きつけてしまうフェロモン「ペロモン」を分泌する特殊体質の新米巡査伊井カオリが動物と人間の共生を実現する都市仲良市で、「ペット安全対策課」で巡査長の三日月と繰り広げるドタバタ日常コメディ。
あらすじは上記のようにまとめられるだろう。
ここからだけでも伝わるだろうが、この漫画はいわゆる「箸休め枠」を狙っている。
ヤングマガジンでいえば「手品先輩」とか、同じヤングジャンプでいえば「もぐささん」とかの枠だ。
正直ほかにも「結崎さんは投げる」とか「しらたまくん」とか「潔癖男子!青山君」とか箸休め枠はたくさんあるのだからなんでこの枠を増やしたと俺は言いたい。
とにかく、「伊井カオリ」(良い香り)や「仲良市」(仲良し)といったダジャレネーミングに象徴されるように、緩くてテキトーなよく言えば癒し系?の雰囲気を読者に楽しませたいという意図からもその狙いは強く感じられる。
だからまあ、100歩譲って登場人物の動機づけや世界設定の杜撰さには目をつぶろう。
「医者の口ぶり通りペロモンが世界でも唯一の特殊能力ならカオリさんはもっと有名なはずだろ」とか「隠していたとかの特殊な事情で有名じゃないなら三日月巡査長すぐに受け入れすぎだろ」とか「話や趣味が合いやすいってだけでペット所有率100%の町作るってどんな行政だよ」とか「話や趣味が合いやすいから町を作ったのにペット原因の住民トラブル生まれてんのかよ! 逆効果だからすぐに町を解体しろ」とかいろいろ言いたいことはあるが……。
しかし、この杜撰ポイントには目をつぶれない。
それは、「カオリさんが動物を使って犯人を懲らしめる」という部分だ。
ドジでときどき辛辣な言葉を吐くが動物が大好きで心根の優しい人間、というのがカオリさんの基本設定だろう。
そんなカオリさんが動物を使って犯人に懲罰を加えるとは何たることか。
犯人は平気で動物に危害を加える人間である。動物が反撃にあって、傷つく可能性もあるだろう。
それに馬鹿なカオリさんは気づかなかったとしても、そもそも動物を武器的に使うというのが動物が好きで心優しいという美点と大きく矛盾するように思われるのである。
ペロペロなめさせるのが罰というのも、「お前、なめられるの罰と思ってたんかい!」と動物好きポイントを大きく下げてしまうしな。
漫画のキャラがムツゴロウさんにダブルスコアで負けてどうする。
また、ペロモンの概念もなんかグラついていて飲み込みにくい。
カオリさんというキャラ=この物語の推進力となる設定なのに1話時点で以下のような矛盾点が見える。
・汗に動物が寄ってくるなら、投げた上着になんで動物が寄って来るのか?インナーの方がよっぽどペロモンついてるやろ。
・感情が高ぶったらペロモンがでるっていうけど基本感情豊かなキャラやから常にペロモンででるやろ。ボケツッコミの下りなんか感情グラグラやったけど動物来てないとこたくさんあったで。
これはすぐ打ち切りだろと思うが、同レベルの「結崎さんは投げる」も続いているのでヤンジャンは猶予期間が長いのかもしれないという危惧がある。
できればほかの作品に枠を譲ってほしいものである。