『アルテ』―昔のヨーロッパを舞台にした話、かっこいい娼婦でがち
16世紀初頭、フィレンツェ。貴族の娘アルテは、画家になりたいという夢を持っていた。しかし、当時は男尊女卑が根強い社会。女は持参金を持ってよい貴族の元に嫁ぐのが理想とされていた。しかし夢を諦めきれないアルテはさまざまな工房に弟子入り志願。女ということで断られ続けるが、ひょんなきっかけから偏屈な画家レオの下で試練を与えられることになり、見事突破。一人前の画家となるために弟子として修業を積むことになる―。
御覧のとおり、設定としてはそれほど珍しいものではない。
その上、話も結構ベタである。
どこがベタかというと、まず主人公アルテのキャラクター。
貴族の娘でありながら、おてんばで、そそっかしい。しかし、明るい性格でひたむきに前向きに仕事に取組み、決してあきらめない。また、すべての人に分け隔てなく接するまっすぐな性格で嘘は苦手である。
そりゃーこの舞台設定なら主人公はこのキャラになるわな、という感じだ。
続いて、娼婦ヴェロニカ。
昔のヨーロッパが舞台の漫画、かっこいい娼婦でがち。
この漫画も御多分に漏れず、高級娼婦ヴェロニカが出てくる。そうそう、高級娼婦の名前はヴェロニカだよな。
ヴェロニカはアルテを気に入り、要所要所で助言をする良いお姉さんとして厳しい現実で彼女を導く。
最後に、仕事への熱い思いを秘めた偏屈男との恋愛。
あらすじで誰もが悟ったと思うがアルテはレオに恋をする。とはいえ、その思いは早々にヴェロニカの導きを経て封印されるのが目新しい点といえるかもしれない。
いずれ再燃するのはわかりきっているし、それは大きな山場として作者も温めているに違いない。
今のところ2巻までしか読んでいないが、きっと4巻の終わりぐらいでそんなシーンがあるはずだ。
ここまでベタだベタだと言ってきた。
しかし、それは必ずしも悪口ではない。
絵が美麗だし丁寧にキャラの考えを描き、関係性を作りだしている。
別にそれだけでいいのだ。
家に帰って今日の現実から丹念に作られた気持ちの良い夢に飛び込むのだ(ベッドでなく)。
だからそのほうがいいのだ。
16世紀初頭といえばダヴィンチ、ラファエロ、ミケランジェロたちが活躍したいわゆるルネサンス期であるが、それらのスターは登場させるのか、それともあくまでファンタジー世界のイタリアとしてアルテの物語を描くのか。
まだ読んでない3巻以降で気になるポイントである。