裸で独りぼっち

マジの日記

台風の日の学校

台風は非日常を連れてくる。

学生時代、我々が文化祭準備に精を出す8月には必ず台風なんとか号がやって来ては学校に閉じ込めた。

精を出すといっても自主的なものではなく、ほぼほぼ奴隷労働も同然の単純作業担当となり、段ボールを切ったり発泡スチロールを結合したりしていただけである。

それは何のための作業なんだ?

と問われればお化け屋敷作りのためだ、年か言い様がないし、お化け屋敷作りだなんて児戯そのものだといわれれば、何も否定する言葉を俺はモテない。

それでも、台風で封鎖された学校の空気感は好きだった。

俺の通っていた高校は――今では珍しいのかな――内装は完全木造で校舎には世界大戦の爪痕が残されているほどの旧弊的なものだったため、校舎は良く軋んだ。

このままオズの冒頭のごとく飛ぶ教室となって、知らないところに漂流できるんじゃないかと思ったのだ。

その結果ぺんぺん草1つ生えないのに巨大サソリや巨大ヒトデが跋扈する世界に飛ばされたってかまわない――とは、口が裂けても言えないが、スウェーデンの野っ原に着地できるなら少々の手負いは厭わない、と思う程度の本気度ではあった。

 

今日は台風の日だ。バスは遅れ、窓は曇り、俺はこのバスごと何処かへ飛ばされていっちゃくれんか、と不謹慎な願いを学生時代のあの気持ちを噛みしめている。

もうほとんど味のない、青春の十二番出汁を堪能している。

 

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