【M-1グランプリ2017】3回戦動画感想_準決勝進出コンビ(東京)
ハライチ「異星人の連れ去り」
岩井の猫T。ww
乗りボケ漫才を捨てて岩井のサイコキャラで勝負をかけるようになったハライチ。
一昨年は最下位の辛酸をなめることになった。
こちらですごいバズっていることや「お笑い風」という冷笑派お笑いファンのバズワードを生み出したことからも岩井のセンスは完全にばれてきている。
「ちがいます」
今回は澤部が異星人に話しかけられていると思いきや人違いというボケの天丼がひたすら行われる(奇しくも設定は霜降り明星と被ってますね)。ただそれだけなのだが、一回一回ボケの角度や澤部の反応が違うので飽きずにみられるのはすごい。
ただ、俺はやっぱりこれでは優勝は狙えないのではないかと思う。
「私は全人類を支配するためにこの星に来たのだ。そして寄生する人間を探したい。普通の人間ではだめだ。人間を憎んでいる人間、これがちょうどいい。そして私はついに見つけた。幼少期に両親に捨てられ、山奥でオオカミに育てられた人間を憎んでいる人間、そう、12歳の君さ」
「やっぱり俺じゃねーじゃねーか」
これが落ち前のボケなのだが、わかりにくくないだろうか。まずこの12歳の君というのが、澤部が12歳のころを指しているのか澤部以外の別の人間を指しているのかがわからない。文脈から言って澤部以外の人間なのだろうが、だとしたら今までのボケと角度が全く同じなのでわざわざオチ前に持ってくる意味が分からない。アニメやサブカルに対する理解や背景を想像させる長台詞の設定自体が面白みなのかもしれないが、そこまで飛びぬけた世界観でもないような……。
アイロンヘッド「親戚の子ども」
「さっきから不透明なお金増えていってるぞ」
親戚の子供に気前よく小遣いを上げたいと語る毛利。そこから漫才コントに突入するも、事あるごとにお金を渡すクレイジーなおじさんになってしまう。
正直華がない立ち姿だな、と思ったし、M-1チャンピオンになったとて売れる気配がない。←ファン激怒
でもあるあるからクレイジーなキャラクターへ。多彩なボケを見せつつ引用部分のようなセンス系のツッコミも放り込むというのは理想的な形だし、決勝にあがったのもむべなるかな。
まあ俺の判断する華なんて優勝すれば途端に目に見えてくるだろうよ。
ランジャタイ「寿司屋」
天才ランジャタイ。
想像力がある人ほど面白くなるイリュージョンネタ。
俺はあんまり想像力がないので人ほど楽しめていない自覚があるのだが、とにかくほかにないパワーがある。
寿司屋の大将が狙撃してきて、警察に電話をかけても病院に電話をかけても現れるというのはほとんど"IT"的なホラーなのだが、それを笑えるホラ話に昇華できるのが國崎のすごいところだ。ほとんどピン芸人でも成立する世界観の強さだが、そこに尖った伊藤のうるさくないツッコミが加わることでよりゴージャスになっている。
「耳の始まりを抑えるな」
今年の三四郎はいいぞ、と聞いていたが確かにかなりいいな。
一歩も進まないディスコミュニケーション。
こうして並べると天竺鼠と同じく設定に頼らないセンス系のボケばかりで、こりゃゆにばーす川瀬名人もあこがれるわという感じである。
確かに小宮がいじられキャラとして認知されてしまったことで「優勝」という称号がどうにも似合わない芸人になっちまったなという感じはあるが、それでオチの胆石持って帰るところで爆笑が起きればありうるぞと思ってしまう。
あと、ラジオ(三四郎のオールナイトニッポン)を通してどんどん相田が成長している感じがする。先週の電気屋の話も面白かった。
笑撃戦隊「取り調べヒーローインタビュー」
行くだろうと思っていた。
面白いが畳みかけができない構造上、勢いに欠ける大喜利形式のツッコミ先(せん)漫才を捨て、生み出した新たな形式が、採用するにふさわしい発想の賜物だったからだ。
まあ正直完璧に美しく構成されているとは言えない。
ほとんどコント「犯人にヒーローインタビュー」だよね。野球要素ほぼない。
でもやっぱりそこにもっていく手法は芸人が金出して買うレベルの発明だし、早めに罪を認めるという意外な展開も良かったと思う。
東京ホテイソン「水族館デート」
「い~や、クリオネの尺!!」(手を広げながら)
ダークホース。
今回の準決勝進出者の中でも圧倒的に無名ではないか。
ツッコミ能やないか。
すしざんまい式に両手を広げるたけるのツッコミがいちいち爆笑を生む。
「マナティのボルテージ」「ボラの面構え」といわゆる面白ワードのチョイスがはずれなしなのがでかい。ボケ数は少ないがその一個一個の威力がでかいタイプということで、まさにダークホースにふさわしい。
22歳と23歳という激若のコンビ。今年以降の大注目株だ。
マヂカルラブリー「野田ミュージカル」
「って客じゃねーかてめー!」
ボケ野田クリスタルがセンス系でありながら動きのあるボケをするのがパンチ力だ。
つかみでめちゃくちゃウケたのがでかい。
「村上です」
「村上殺しです」
正直なんでそんなにウケたのか解説が欲しい。なにか俺のとらえきれていないニュアンスがあるのか? いや確かに面白いんだが。
奇怪な動きをする人間がすべて客に回収されていき、それさえも客に回収されてい句と思いきや外されて、かと思いきや回収されるという人間の心理の隙をつきまくったネタ。かなりすごい。そもそも動きのおもしろさだけでオモシロクナール3杯はいけるのだ。決勝言ったら全然優勝あると思う。なくてもかなりテレビ露出は増えそう。
ゆにばーす「合コン」
「誰が最強漫才師じゃ」
1つ前にネタを披露したアモーンのフレーズを引用したネタ。はらが自分で考えたのか川瀬名人が入れ知恵したのかは杳として知れないが、こういうことを普通にできるあたり、両人のお笑い能力が高いのがわかる。
自衛隊のくだりはちょっと政治・思想に踏み込んでいるので客席の笑いが引いていた。あそこをテレビに出すとしたらもうちょっとマイルドにすべきかなと思う。
これも複数人を演じる系やね。
ここも決勝さえ行けば全然優勝のビジョンが見える。そしたら川瀬名人ホンマに引退するのかね。
Aマッソ「物欲のレナ」
「村上魂ガバガバやん!!」
正直加納のワードセンスが面白さよりもすごさに偏って評価されている気がして世間は評価しすぎじゃないかなと俺は疑いのまなざしをこの漫才師に向けていた。。
でもこのネタはそれすらも凌駕してきた。面白すごい。
ダブルボケ的なスタイルは捨てたとはいえ、こてこての大阪弁漫才にファンタジーな世界観を持ち込んだということで、笑い飯の「鳥人」を思わせる。これこそまさに新生Aマッソの代表作ではないか。
やばい、決勝で100点ついてまう。
さらば青春の光「はだかかい」
いや俺はだかかーい
コント師ならではの演技力で新しい漫才の地平を開拓してきた東(今は)のジャルジャル「さらば青春の光」。
いやこれそういう芸術なん!?
ただ、そのシステム一本で勝負するきらいがあって、一度構造を理解したらあとは飽きるまでの勝負な部分が欠点だなあと昨年までは思っていた。
しかし、引用部分の通り、”芸術”という視点をそれまでのシステムに組み込むことで、新たな地平が開けた。一皮ズル剥けた。
さらばで芸術といえばKOC2015でまさかの最下位となった「芸術家の苦悩」ネタが思い浮かぶが、このネタにはまさにその「芸術家ってなんかいじられへん空気あるよな」という面白の発見が見事に漫才に昇華されている。燃え尽きた火の鳥からまた新たな子が生まれた時のような感動だ。
これはもう、すごい。
囲碁将棋「死ぬ気で頑張る」
THE MANZAI 2014 で肛門を連呼して茶の間に嫌われた囲碁将棋。
今回は死んだらジャーキーになりたいというネタだった。
こういうギリギリの発想、胸がぞわつくようなキモさの境界線が好きなんだなあ。
俺も好きだからわかるよ。
ただ、今回はギリギリ茶の間にも受け入れられるかなーというラインがちゃんとわきまえられていた。性的なワードでないし、セロいじりなど、ボケも多彩。
正直年齢とか地味さが祟ってあんまり優勝するビジョンは見えないが、自肩はめちゃめちゃ出来上がってるので決勝でもちゃんとウケるだろうなという安心感をここに書き記しておく。
カミナリ「昨日何食った?」
「米のなかにバカが隠れてたな!」
昨年最も記憶を残し、最も上沼恵美子のせいで割りを食ったカミナリ。
これは結構見たことあるネタだな。
見慣れたせいでダークホース感は薄れた一方、勝ちどつき漫才に対する怖さは完全になくなった。題材が食べ物の話題で「石田がまなぶを心配する」という体もある以上、去年よりはえみちゃんも受け入れてくれるのではないか。
相席スタート「好きな人のタイプ」
今女芸人がすごい。
と東京ポッド許可局で言っていた。
TBS RADIO 東京ポッド許可局 2013年8月24日 第21回 「女芸人論」 - TBSラジオ 東京ポッド許可局
その意味が山崎ケイを見るとわかる。
このネタは男にはできない。
下ネタでもない。自虐ネタでもない。さりとて面白い。
女芸人NO.1を決める「THE W」も始まったことだし、この勢いで決勝に行く確率は高い。
↓去年の感想
ニューヨーク「運命の出会い」
「クソ女が」
著しく吉本にプッシュされており、著しく芸人にもファンを持ち、著しく男女ともに人気のあるコンビ、ニューヨーク。
「イタイやつあるある」にとどまっていたネタが、昨年複数人を嶋佐が演じ分けるドラマ系のネタに進化し、今年は屋敷の畜生視点ツッコミが際立った。
「そんな女本読まへんわ」
お笑いファンはみんな性格が悪くてこういうネタが大好きだ。
なんとかこの視点のツッコミと、昨年の複数演じ分け型嶋佐漫才コント劇場を組み合わせられないか。それができたとき、時代とニューヨークが一致すると思う。
人気があるのにここまで尖った視点を持ってポップでいられるのは、まさに才能としか言いようがないのだから。
南海キャンディーズ「山ちゃんの結婚式」
「これかあの有名なストレスって」
「俺の頭に「裁判」の二文字が浮かんでるよ」
「不毛な議論」で失敗したといっていたネタだ。でも、かなりウケてるやん!
さすが山ちゃんである。お笑い意識が高い高い。
まあそうじゃなきゃこのキャリアで地位も人気も築いた人がM-1には出ない。
これまたラジオで行っていたことだが、今回のネタは熱心な不毛な議論リスナーがメモを取って改善点を指摘してくれたとのこと。
たしかに清水良太郎ネタはちょっと鮮度がありすぎ&しずちゃんのキャラにしては皮肉利きすぎで客が「笑っていいのかな…」となっていた様子。
そこが改善されて準決勝突破となると、これはもう止められない。
俺は何を隠そう『山里亮太の140』で「やっぱり山ちゃんはすごい」と感動したばかりである。決勝に行ってほしい。
和牛「困ってる人を助ける」
ど真ん中、165kmのストレート。
昨年銀シャリとしのぎを削り、惜しくも2位となった和牛。
優勝候補ど真ん中というお笑い的にはやりにくい状況の中、また新たな上質なネタを生み出してきた。
漫才コントコントコントとでもいうべき、映像的なネタだ。
理屈っぽい屁理屈漫才とはまたベクトルの違う、水田の演技力でそこにない物語を、そこに生み出す。もはや新作落語の様相である。
漫才コントという枠内でしっかり物語的な笑いを成立させる手つき。日本一美しい「もうええわ」の使い手川西が相方ということもあり、技術点はもはや満点以外はあり得ない。
全体の総括
こうしてみると、ほんとに「複数演じ分け」のボケが今年はブームだなという感じがする。
2人の不良の立ち話。という漫才の世界は、もはや何人もが誕生可能な話芸のスタジアムと化した。
俺が「好み」とか「このネタが決勝で見たい」だけでこの中から10組選ぶとすると、以下の通りです(順不同)。
1.天竺鼠
2.ジャルジャル
3.からし蓮根
4.ランジャタイ
5.三四郎
6.東京ホテイソン
7.マヂカルラブリー
8.ゆにばーす
9.Aマッソ
10.さらば青春の光
実際のところは今までの功績とかいろいろな要素が加味されて「スーパーマラドーナ」「和牛」は上がってくると思うけど。
あー面白くなってきた。
12月3日が楽しみですね。
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