裸で独りぼっち

マジの日記

『IT イット "それ"が見えたら終わり。』 ネタバレ感想「別に終わりじゃない」

全米で『エクソシスト』超えを果たし、歴代ホラー映画No.1の興行収入を達成したスティーブン・キング原作のホラー映画『IT イット "それ"が見えたら終わり。』を見てきました。

 

Twitterの感想は以下の通り。 

 

70点

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全体所感

Twitter感想に尽きるんですが、良くも悪くもお化け屋敷映画でした。ペニーワイズ(ピエロのお化け)がワッと出てきてギャーと驚かされる感じ。

よくこのようなハリウッド的ホラー演出はJホラーと比較して「怖くない」「子どもだまし」といった低い評価を下されがちですが、やはり純粋に楽しいことはこの映画の大ヒットを見ても明らかだと思います。

まあ、僕自身はJホラーの静的な怖さとお化け屋敷的なハリウッドホラーが2つに峻別できるというのにもそもそも懐疑的で、「緊張→恐怖」の割合の違いが傾向として表れているだけのようにも感じています(Jホラーの方が緊張の割合が大きい)。

実際今回も図書館で太っちょ少年ベンが襲われるシーンの何か出てきそうで、出てこない感じはJホラー的でしたしね(とはいえ首なしエッグボーイが出てきたシーンはあまりにお化け屋敷的でしたが)。

 

良かった点

 

1.演出(とくにペニーワイズ)

1989年のTVドラマ版も含めて、このIT独自かつ最大の魅力はピエロの怪物の造形の奇矯な禍々しさにあると思います。

――ピエロ恐怖症。

自分も幼少期には上記の罹患者で、実家2階のトイレ前に飾られたそれには得体の知れないものを感じで目をそむけていました(当時「マダーサーカスゾンビ」という遊戯王カードを所有しており、そのイメージが脳裏に焼き付いていたのもあると思います)。

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そのペニーワイズの雰囲気がしっかり表現されていたし、しっかり演出されていたかなと。

演じたビル・スカルスガルドさんは演技本番まで子供たちにペニーワイズの造形を見せないようにしていたそうですが、その演出も効いており、子どもたちのリアルに怖がっている気持ちが見ているこちらにも伝わってきました。

 

2.ベバリーの魅力

ベバリーはこの作品のヒロインであり、周囲からあばずれのレッテルをはられ、実際には父から性的&モラル的虐待を受けている少女です。

彼女は弟をペニーワイズによって失った主人公ビルらが属するルーザーズ(負け犬軍団)入会することになるのですが「こんな子がいるなら負け犬で全然いいや」と思えるほどの魅力がありました。

大人びた魅力、つまりは淡い気持ちを抱かせる進んだお姉さん的な、でも気軽に話せる気安さも持ち合わせている。

例えば、ルーザーズが崖の上から川に飛び込むのを躊躇しているところへ彼女がさっそうと現れビキニで海へと飛び込みます。その際のルーザーズの驚きとニヤケと喜びが混じったような雰囲気がすごくいいんですよね。そのあとの川遊びの青春感もたまらなかった。

実際には性的虐待を父親から受けているという非常に重たい背景を持つキャラクターなのですが、そういった弱みをルーザーの前ではほとんど漏らさないというのも、幻想を維持するという意味でよかったと思います。もちろんこの点は虐待がそれほど痛みとして機能していないのではないかという批判の種にもなるとは思うのですが。今回は虐待の直接的な描写はありませんし、この程度のバランスが良かったのかなと。

 

悪かった点

 

1.キャラ大杉問題

ビル(主人公)、ベバリー(ヒロイン)、ベン(太っちょ)、リッチー(おしゃべり)、スタンリー(パーマ)、エディ(過保護)、マイク(黒人)と7人がルーザーズとして登場するのですが、この中でもリッチー・スタンリー・マイクの掘り下げが薄すぎ。。

リッチーは家庭環境が一回も出てきませんし、スタンリーは怖い女の絵に脅かされるだけ。マイクは両親を不良少年ヘンリーに焼き殺され、自身も殺されそうになったところを反撃して井戸に落とすという結構なことをするのですが、その割にその後どうなったとか両親を殺された痛みなどの描写が薄い。

原作がそうだから仕方ないのですが、やはり2時間と少しの映画の尺で7人の腫瘍登場人物を出すのは無謀です。キャラはまとめてしまって5人くらいにした方がよかったんじゃないのかなー。その方が人数も減って恐怖感も高まりますしね。

 

2.ルールがわからん

ベバリーの家の排水溝を通して血を噴出させたり、ベンの家の地下室に弟の幻想を伴って出現するなど現実改変能力&空間操作能力を持つことを想像させる怪物ペニーワイズ。

しかし、そんな怪物はルーザーズの暴力でいともたやすく傷つきます。

怖がらせられるだけで物理攻撃はできない敵なのかなと思いきやベンの腹に爪で傷をつけたりしてますし、どういう種類の敵かわからないので、まあ主人公たちを致命的に傷つけるようなことはできないのだな、と途中から高をくくってみてしまいます。

そして、やはりその想像は超えてこない。

敵がなにがなんだかわからないのはホラーとしてはむしろプラスに働く要素だとは思うのですが、主人公グループも殺せるくらいのいい意味で悪い得体のしれなさを見せてほしかったなと思いました。

邦題で”それ”が見えたら終わりというので、『リング』における貞子の余蘊い見たものは絶対に殺してしまうジンクスを発揮するのかと思いきや、別にそんな設定もなく、むしろ見た人をびっくりさせてからが長いですからね。

 

終わりに

キャラが5人でやれば文句なしの作品になった気がします。特に前半はペニーワイズの恐怖感とスタンドバイミー的青春感が交互に出てくる緩急がとても気持ちよかった。次は主人公たちが大人になった27年後を描くpert.2が予定されているとのことですが、だれか主要キャラが冒頭で死んだぞ、という噂を耳にしたらマストで見に行こうと思います。だとすれば前半が最高のふりとなって後半に襲い掛かる恐怖が期待できるので。

でも、そうはならなそうだなあ。