裸で独りぼっち

マジの日記

『バーフバリ 英雄誕生』92点『バーフバリ 王の凱旋』85点 ぜったい前作を見た方がいい※ネタバレ

※今更なことをいいます。

 

インド映画のPOWERを強制的にトゥ・ザ・ピーポーしてしまう映画、バーフバリ。

後編『王の凱旋』がこの度公開され、以下のような話題を生んでいる。

 

togetter.com

 

正直、こういうネタ映画的な消費の仕方は苦手だ。

こういう無茶苦茶なコンテンツを面白がるウチらwという観客の特権意識が透けて見えるような気がするから。

という自意識の問題は置いておいて、傑作と言って差し支えのないほどこの作品にはには楽しませられた。

 

まずは前編の感想。

 

『バーフバリ 英雄誕生』92点

ここでいうインポッシブルとはこのコンビのこと↓

f:id:hadahit0:20180128222529j:plain

インポッシブルの宣材写真(吉本公式HPより)

改めてみたらなんだこの宣材。
なんかバランスがおかしい。

巨大生物と2人でただただ戦う様を見せるなど他では見られないコントのスタイルから自分たちの役割を”ボケとツッコミ”ではなく、”スピードとパワー”と表現する。

その、存在自体のダイナミクスが高じて笑いを生んでしまう感じ、それはやっぱりバーフバリとインポッシブルで共通している部分ではないかと思う。

我ながら冴えた例えをしたものだ。

 

ストーリー

 

英雄誕生は妙齢の女性(おばちゃん)が赤ちゃんを抱えて河を渡り、流されるところから始まる。

水量の増した川におばちゃんは沈み、手だけを天に掲げる。

その赤ン坊の名こそアヘンドラ・バーフバリ。伝説の始まりである。

バーフバリはそこからすくすく育って5分くらいで大人になる。

天女に誘われたバーフバリは難攻不落の滝を上り、美しき女アヴァンティカを発見。

*1*2

アヴァンティカとなんやかんやあって相思相愛になったバーフバリ。

アヴァンティカは強大な王バーララディーヴァが支配するマヒシュマティ王国に祖国クンタラ王国を滅ぼされた者たちのレジスタンス、の一員であった。

敵のもとに攻め込もう――とした瞬間とらえられるアヴァンティカ(このあたりの弱体化はご都合主義だがそれゆえに神話的)。

そこを救ったバーフバリはマヒシュマティ王国へ攻め込むことを誓った。

 

マヒシュマティ王国で鎖につながれていたのは元々は王女であったデーヴァセーナ。

「お前たちを地獄の業火で焼き尽くし、生きたまま苦しめたい」

めちゃめちゃ口が悪い。

王国に奴隷として忍び込んだバーフバリは城にわざと火事を起こし、デーヴァセーナを救って城を飛び出した。*3

それを追うのはバーララデーヴァのひ弱な息子パドラと奴隷将校カッタッパ。

バーフバリは2人を迎え撃ち、パドラの首を雷鳴とともに切り飛ばす。

その顔を見て驚愕するカッタッパ。バーフバリの脚を頭に乗せる。

「誰だお前は!?」

尋ねるバーフバリ。カッタッパは過去を語り始める。

 

数十年前、マヒシュマティ王国は王ヴィクラマディーヴァと王妃の急逝という事態に襲われていた。次代の王を選ぶ権利を持つのはヴィクラマディーヴァの弟ヴィッジャラデーヴァの妻である国母シヴァガミ*4

彼女は先王の息子アマレンドラバーフバリ(以下バーフバリ(父))と、自身の息子バーララディーヴァの2人が成人したとき、いずれを時代の王か選択することを宣言した。

その言葉に邪悪なヴィッジャラディーヴァは驚き罵るがなぜか素直に従う。意外にかかあ天下である。

すくすくと育つバーフバリ(父)とバーララデーヴァ。

彼らが成人を迎えようとするとき、蛮族カーラケーヤが襲ってきた。

その兵の数は10万。実にマヒシュマティ王国の5倍以上である。

シヴァガミが兵を均等に分け、それらを指揮してカーラケーヤの大将の首を取った方を次代の王とすることを宣言する。

ビッジャラディーヴァの姦計により、武器や防具は与えられなかったバーフバリ(父)。しかし、機転を利かせて蛮族を制圧。すんでのところまでカーラケーヤの大将を追いつめる。しかし、漁夫の利を得たのはバーララディーヴァであった。

ところが、シヴァガミが次代の王と宣言したのはバーフバリ(父)。

古代洗車のような道具で民衆もろとも敵を攻め、多くの犠牲を出したバーララディーヴァよりも、民を守ったバーフバリ(父)の方が王にふさわしい器であると見抜いたのだ。

 

「――しかし、その数か月後彼は裏切者のせいで命を落とすことになります」

そう、カッタッパは言う。

「裏切者はだれだ?」

尋ねるバーフバリ。カッタッパは答える。私です、と。

 

www.youtube.com

感想

長い感想となった。それだけ長く、語りがいのある物語なのだ。

先述したが、俺はこの前編の方が話題の後編より好みである。

それは、構成上の妙が大きい。

先に語ってしまうことになるが、前編の内容は大きく分けて「バーフバリの登場&活躍とバーフバリ父の登場&活躍」である。つまり、風呂敷広げ放題なのだ。

バーフバリという物語は、神話故、細かい粗もある作品ではあるが、その風呂敷のあまりの広がりっぷりに観客も細かい疑問は忘れてバーフバリ!状態になってしまうところにそのパワーがある。

ほかにないパワーだ。

だから、その持ち味が生かされるのは風呂敷広げ放題の前編に決まっているのである。

 

もう一つ、理由があるとすれば、デーヴァセーナがあんまり出てこない。バーフバリ(父)の妻であり、バーフバリの母であるデーヴァセーナ。

正直こいつが怒りっぽすぎるせいでいろいろ問題が生じた気がしてならない。

悪として描かれないしそう断定もできない分、俺はコイツの方が「タチ悪~」と思ってしまう。

その点この話のヒロイン、アヴァンティカは信頼できる。バーフバリとのディズニー映画ばりのファンタジックなミュージカル求愛シーンは絵ヅラの美しさも併せて必見である。

 

『バーフバリ 王の凱旋』85点

 

バーラディーヴァの悪口をここでも言っている。

この映画は仙台の中規模映画館『フォーラム仙台』で見た。

朝から9:20の回だったが長蛇の列で、立ち見まで出る始末。

15分くらい(バーフバリが象を倒して母を看病しながら歌いだすところ)で不具合から音声が止まり、中断ののち再開することになった。そのお詫びにタダ券を人数分配る決断をしたフォーラムが気の毒であった。

フォーラムはGoogleの評判では「社会人としてあり得ない店員がいる」だの「音が漏れる」だの評判が悪いがそういう真っ当な対応をしてくれるところだ。店員の態度も良い。音は漏れるときもあるが俺は気にならない。

もっと評価が上がってよいと断言できる。

ともかく、そんなトラブルがありつつも、前評判通りの面白さではあったと思う。

しかし、前編を見てのものだったので、正直ちょっとテンション下がる時間はあった。

それが現れ出たTwitter感想である。

 

ストーリー

マヒシュマティ王国には、王妃が燃え盛る燭台を手に城の周囲を3周すれば、願いが成就するという言い伝えがあった。

それをシヴァガミが実践中のところから物語は始まる。

暴れ象が登場し、シヴァガミの行く手をふさぐ!

危うし! というところで現れるのが我らのバーフバリ(父)。

王になる彼の力でシヴァガミは無事回り切り、民はバーフバリを讃えた。

バーフバリ!

 

しかし、ヴィッジャラディーヴァは国の乗っ取りをあきらめてはいなかった。

バーララディーヴァは意外にも殊勝な態度をとるが、その真意は不明。

一方、実の息子である彼を王にできなかったシヴァガミはそれを負い目に感じていた。

大勢の象をプレゼントしようとして断られるシヴァガミ!

 

バーフバリ(父)は父代わりのカッタッパとともに嫁探しの旅に。そこで、若きクンタラ国の王女、デーヴァセーナと出会う。その美しさと凛々しさにに一目ぼれしたバーフバリ(父)は、愚かな従者とその叔父という設定で、デーヴァセーナらの懐に入り込む。*5

バーフバリ(父)はアホの不利をしてデーヴァセーナに近づく。そこへ襲い来る蛮族ピンダリ! バーフバリ(父)はそこで本領を発揮して国を救い、デーヴァセーナの心もゲットする。

このくだり、コメディリリーフ、クマーラが勇気を出す展開が熱い。

デーヴァセーナのヤダ味が最初に出るのがここである。バーララディーヴァはデーヴァセーナの美しさに心を奪われ、バーフバリ(父)から奪ってやろうと計画。母に頼んで金銀財宝を遅らせる。しかし、デーヴァセーナは断り、こう書いた手紙を送らせる。

「金銀財宝で女を手にしようとする王子の妻になるくらいなら死んだ方がましだ。私の使い古しの剣を送るからそれとでも結婚しておけ」

やりすぎやろ! 外交上のことを考えてもこんな返答は悪手過ぎる……。

本来ならばこの時点でクンタラ王国は滅ぼされても仕方なかったのだ。

そう考えると、後の悲劇も薄れるではないか。

ここは、もう少し賢王(女)っぷりを発揮して欲しかった。

 

国を守ったバーフバリ(父)はデーヴァセーナを連れて帰国。当然シヴァガミの怒りを買っているので王の地位は剥奪。そのままデーヴァセーナの起こしたトラブルのせいもあり、城を追放されるまでに落ちる。

しかし、バーフバリ(父)は、落ちぶれはしない。民の中でリーダシップを発揮し、どこにいても王は王の器であることを示す。

その様子を目にしたバーララディーヴァらは悪知恵を働かせ、バーフバリ(父)がクーデターを起こしたことに偽装。カッタッパをけしかけてバーフバリ(父)を殺させるのだった。自らの過ちに気づいたシヴァガミは幼いアマヘンドラ・バーフバリを抱いて逃げる。そう、妙齢のおばちゃんはシヴァガミだったのだ。

ここらへん、ちょっと登場人物の頭が悪い気はするものの、「実の息子バーララディーヴァに負い目を感じる母シヴァガミ」という絶妙な心理描写があるのでそこまで気にはならない。まあ、あれだけのことがあったらそうなってもおかしくないかなと納得はできるレベルである。

 

過去をすべて知ったバーフバリはレジスタンスを率い、クーデターを決行する。

↑ここまでの展開が激早。バーフバリの顔が、デーヴァセーナの血入ってないやろ級にバーフバリ(父)と瓜二つ(同じ人が演じている)なので、レジスタンスがすぐに率いられるのも納得できる乱暴なようでスピーディかつロジカルな展開である。

ヴァーララディーヴァを追い詰めるものの、逃げられるバーフバリ。

やみくもに向かおうとするも、カッタッパに「父のように知恵を使いなさい!」と説教される。

www.youtube.com

↑その結果がこのシーンである。

この映画をネタ映画として処理するのは悔しいと冒頭でコメントしたが、やはり、このくだりはバカすぎる(良い意味で)。

 

バーフバリはバーララディーヴァと決闘。死闘の末に破り、デーヴァセーナの悲願の火あぶりによって親子の復讐を果たす。

そして、王となったバーフバリ。人々は彼を讃え、川を流れる破壊されたバーララディーヴァの破壊された首(黄金像)は川下へと流れていくのだった。

 

感想

前編に比べてちょっと不満がある。

 

1に、悲劇(過去)パートがやや長い

…このせいで、バーフバリ(息子)の主役感が薄れている気がする。前編未見の方は一瞬「あれ?どっちが主人公?」と思ったのではないか。

それにやはり悲劇は重く物悲しいものだし、圧倒的な陽の気が売りのバーフバリでそこはあまりおいしくないのではないかと思った次第である。

 

2に、前編の主要人物(バーフバリの育ての母とかアヴァンティカ)の影が薄い

アヴァンティカは完全にモブと化していた。前編の正妻感は遠い昔である。後編から見た人には彼女の魅力は伝わらなかったのではないか。前編では後半弱体化したもののバーフバリを導くまさに女神だったのに。

育ての母は全然出てこなかった。世界配給に従って映像がカットされているらしいのでもしかしたらそこで描かれているのかもしれない。それを見ないとまだ何とも言えないが、少なくとも日本版ではバーフバリが産みの親をすぐ受け入れて育ての親を忘れたお恩知らずに見える。

 

とはいえ、今思い返すと最期にバーバラディーヴァの首が流れるところなど、川下と川上という上下関係が世界の力関係のメタファーとなっていることを示す丁寧なつくりとなっていた。

それもほかの解説を見聞きするまで気づかなかったのだ。

とはいえ、2作続けて見るべき一作であった。

 

www.youtube.com

 

 

 

 

*1:勝手に手にタトゥーを書いて求愛する。

*2:この部分についてラッパー・映画評論家・ラジオパーソナリティのライムスター宇多丸は”ストーカー的”と表現

*3:この時、焼けた岩で行く手をふさがれるが、なんと吹っ飛ばして逃げるw

*4:シヴァ神と関係あるのだろうか

*5:このときのデーヴァセーナは好戦的(すぎる)性格がまだ凛々しさと受け取れる。しかし、すぐアホをクンタラ国は受け入れすぎだろとも思う