裸で独りぼっち

マジの日記

『トレインスポッティング』  これが青春なのか? 70点 

※ネタバレがあります

これが青春なのか?

ドラッグやって、犯罪やって、親に甘やかされて。

そう思ったので30点引いた。

だけれど、70点残った。その原因は2つ。たったの2つなのだ。

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ストーリー

ヘロイン中毒のレントンは不況に喘ぐスコットランドエディンバラでヤク中仲間と怠惰な生活を送っていた。人のいいスパッド、モテモテでジャンキーのシック・ボーイ、アル中で喧嘩中毒のベグビーらと悲惨な現実を前にしてもドラッグやナンパ、軽犯罪やクラビングを繰り返す毎日。そうこうするうちスパッドが受刑者となりレントンは何度目かのドラッグ断ちを決意。必死の麻薬治療を受けた彼は、ひと旗揚げようとロンドンで仕事を見つけ真っ当な生活を目指す。しかし、未だ更生しないベグビーらがそんな彼を追いかけてきた。

wikipediaより引用

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%83%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0

 良い点①絵作りと音楽

方々でいわれていることだが、前衛性と大衆性が重なり合った画面作りがすごい。

例えば以下のような。

・有名な「世界一汚いトイレ」に入り込むシーン

・ヘロインの幻覚作用でカーペットに沈み込むシーン

・4人がミルクバーでトイレを仮に来た男を付け狙い金を奪うシーン

・禁断症状で部屋に赤ン坊の幻覚や友人の幻覚が現れるシーン

・終盤のカメラをあえて90度傾けたシーン

音楽はイギーポップの『Lust for life』に始まりBlurNew Orderなど。

ブリットポップは好きだけど別に詳しくないから何も言えない。

ただ、ちょっと想起した曲があるので後述する。

 

良い点②ウシナワレヌフレッシュさ

この曲を聴いてほしい。

youtu.be

BlurのTracy Jacks(『parklife』収録)だ。

トレィシー・ジャックスという40代の真面目な男が日々の閉塞感に狂っていき、ついには自宅をブルドーザーでつぶすまでになってしまう歌。

日に日に彼は自覚していった

彼はもう行き過ぎだって自覚してた

僕はこのまま普通でいたい

でも、そんなのただの買い被り

 ちょっと主人公レントンの心境とかぶらないだろうか。

なんかこの曲、中毒性があって俺は好きだ。

そして、この中毒性は時代が変わっても古びないタイプだと思う。

かっこいいとか美しいはすぐに古くなる。

だけど、中毒性は古びない。だから、昔の漫画でもとにかく妙なシーンはいまだにインターネットでコラ画像等で流布しているではないか。

この映画はヘロイン中毒の主人公たちのトリップ感や鈍くなった感覚をそのまま描くことに腐心して作られている。

スプーンに乗せられたヘロインを水で溶かして注射針に入れるシーンが何度も出てくる。それを打ったスパッドはゆっくりと地面に頭を打ち付ける。クッションにギリギリ届かない場所に。それでも特に痛がるそぶりはなく、完全に薬で気持ちよくなっているのがわかる。

それは、古びないのだ。

 

所感

最初、俺はこれが1時間くらいで終わる映画かと思った(実際は1時間33分)

そのくらい話にとりとめがないし、主人公に目的がない。

正に『Lust for life』(人生の無駄)の話だからだ。

ハリウッド式脚本術では主人公に友情なり、愛情なり、金なり、欠けた部分を作り、基本的にはその穴埋めを物語の目的(=推進力)とするそうだが、主人公レントンらは一見して欠けたとこだらけだ。

学歴もないし、仕事もないし、ドラッグ中毒だし、初めの方はレントンには女もいない。

でも、それは物語の推進力にはならない。

レントンはずっと悪友に振り回されて意思がないだけだし、それはそれほど咎められもせず、赤ん坊が死にさえもするのに警察に気づかれることはないからだ。

ここら辺の主人公たちへのセカイの甘さがどうにも気にくわないという人がYahoo!映画で辛辣な感想を書くのだと思う。

レントンはなんどドラッグを辞めようとしても辞められない。辞めようとするといってもちょっと決意してはそのご褒美にとヘロインを注射するくらいの本気度だ。

僕はこのまま普通でいたい

でも、そんなのただの買い被り

 彼はマトモでいたいと願う時もあるが、そんなのは周りの人間や不況が許さないと最初からあきらめてしまっているようである。

そんな甘ったれたスノッブな気持ちはある種の人間の金銭を揺さぶる。

そうなのよ、俺もあきらめちゃってるし、くずなのよ。

キャッチコピーは「未来を選べ」だが、この映画の魅力は「未来を選びかねて人生を無駄にする感覚」のトレースっぷりにある。

だからキャッチや外枠が蛍光に光るオレンジでも、レントン・スパッド、シックボーイ・ベグビー・ダイアンは灰色なのだ。

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