裸で独りぼっち

マジの日記

『42~世界を変えた男~』75点 伝記映画、それ以上でも以下でも

生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え - Wikipedia

 つまりは背番号が42だったから世界を変えた男ってわけ?

 

真っ当で良い映画。

ただ、ちょっと伝記過ぎたかな~。

 ストーリー

 4月15日、メジャーリーグの全選手は背番号”42”をつけてプレーする。その番号はアメリカ・カナダの全プロリーグを通しての永久欠番であり、世界初の黒人メジャーリーガー、ジャッキー・ロビンソンの背番号だ。

ブルックリン・ドジャーズの会長ブランチ・リッチーは、その当時ニグロリーグでしかプレーを許されていなかった黒人をドジャーズに入れる計画を立てる。

まさか、白人のファンは減るに決まってる!

――黒人の客を入れればいいだろう? 金は白でも黒でもなく、緑なんだよ。

そうして白羽の矢が立ったジャッキーロビンソン。彼に与えられた使命は結果を出すこと、そして耐え忍ぶこと。

ニグロ野郎。うちのホテルに泊まるな。お前の女房を犯してやる。

これは、さまざまな言葉に「やり返さない勇気」をもって世界を変えた男の物語である。

所感

伝記映画を見て気になるのが、「どこまでが史実で、どこまでがフィクションか」ということだ。

たとえば『ドリーム』はそのほとんどが史実に基づいたエピソードだというし、『グレイテスト・ショーマン』はほとんどフィクションだったろう。

この映画も、「史実忠実系」に属する。

 

かなり抑制された描写が多く、事実を歪めて作品にしないようかなりの配慮がなされていうことがわかる。

差別と野球は政治・宗教と合わせて4大喧嘩の種だが、この映画ならば論争や炎上を生むことはそうそうないだろう。

 

 彼自身の自伝もあるようだ。

どこまでが史実化を知りたいなら、これらにも目を通すべきだろう。

とはいえ、ひとまずはWikipediaをチェックしてみる。

すると―― 史実の方がかっこええやんけ。

特にこの、リッチーとジャッキーが初対面したときのくだり。

 

リッキーは「君はこれまで誰もやっていなかった困難な戦いを始めなければならない。その戦いに勝つには、君は偉大なプレーヤーであるばかりか、立派な紳士でなければならない。仕返しをしない勇気を持つんだ」とロビンソンに言い、右の頬を殴った。ロビンソンは「頬はもう一つあります。ご存じですか」と答えた

ジャッキー・ロビンソン - Wikipedia

映画では聖書から引用した「右の頬を打たれたら左の頬も差し出しなさい」のくだりはリッチーが言っていた。

たぶん、この時点でそこまでロビンソンを成熟したキャラクターにしてしまうと成長の余地がなく物語に求心力が亡くなってしまうと判断したのだろう。

 

良い点―抑制された感動

差別は醜悪である。耐え忍ぶ勇気はときに立ち向かうこと以上に尊敬に値する。

小学生が見たってこの映画からそのメッセージは受け取れるだろう。

 

さりとて、中高生が見てもゲンナリするような説教臭さはない。

 

感動的な場面――例えばロビンソンのチームメイトが彼のためにひどいヤジを飛ばす相手チームの監督に抗議をした場面とか、ロビンソンに心無い手紙が何通も来ていることをしって愕然とする場面とか――にベタ甘で涙を誘うようなBGMが流れることもない。

 

きわめて淡々と、ロビンソンの戦いと苦悩と栄光を描いている。

 

特に俺が注目したいのはシャワーを浴びる場面。

 

あからさまに周囲に避けられているようなところは描かず、ロビンソンがたった一人で試合後にシャワーを浴びている1枚絵をさしはさむことでその孤独を表している。

シャワールームは真っ白。その中で1人その日の汚れと疲れを洗い流すロビンソンの重荷が、言葉でなく画面で理解できる。

 

良くない点――史実以上のダイナミクスの欠如

結局ロビンソンが野球選手としてどれくらいすごかったのかが伝わってこない。

 

「野球をしようぜ」「ただ、野球がしたいだけなんだ」

――これは、物語の終盤で何度も語られるキーワードだ。

 

そういうからには、もっと”野球”を描いてほしかった。

 

ロビンソンが俊足で盗塁に大きな力を発揮したことはわかったが、そのあたりの技術をもっとピックアップしても良かったのではないか。白人の子どもがロビンソンの真似をしていたということがリッチーから知らされるくだりでも真似されるのはバッティング前のしぐさだった。盗塁王ならその俊足を真似しようとするんじゃないの?

それとも、ホームランを打つくだりもあったし、バッティングもいける人なの?

そのあたりの野球選手としての特性はもう少しわかりやすく描いても良かったのではないか。

それであれば、終盤の3塁への盗塁成功が差別への勝利=野球選手としての活躍という二重のカタルシスを発揮することができたはずだ。

 

まとめ

良い映画だったのは間違いない。

だけど、ジャッキーロビンソンの史実はもっと面白い映画になる素質を秘めているのではないか。

こちらもWikiから読みかじりの知識だが、野球選手になる前の軍人時代のエピソードも非常に興味深い。

ロビンソンは射的の名手として評価され、知性やスポーツでの好成績、大学時代の教育など幹部候補生学校の候補として秀でていた。

ジャッキー・ロビンソン - Wikipedia

バスで白人の運転手がロビンソンに対し、黒人用の座席へ移動を命じたが[15]、陸軍ではバスの中での人種隔離を禁止しており、ロビンソンは移動を拒否した

ジャッキー・ロビンソン - Wikipedia

その期待を寄せての75点である。

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メモ

監督:ブライアン・ヘルゲランド

主演:チャドウィック・アーロン・ボーズマン

助演:(リッチー)ハリソン・フォード