裸で独りぼっち

マジの日記

『バットマン ビギンズ』 70点 等身大、はじまりの小品

初心者にもわかりやすい。

 

忍者ダサい。

不殺の誓いにはすでに矛盾がある。

わかっていながらそれに対して何がいえるわけでもない。

そう、それがバットマン

 

所感

 そもそもアメコミ映画は”アメコミ映画”というジャンルムービーなのだから原作を知ってそれありきでないとそもそも語り切れない。

そういう意味で、俺は『バットマン・ビギンズ』を表する資格がない。

ゲーム『バットマンアーカムアサイラム』の実況動画を、それも途中まで見ただけで、ほかのバットマンの作品にはほぼ触れず、もちろん「男のこのまざらん事非ざる」『ダークナイト』も見ず、その前作『バットマン・ビギンズ』に手を出したわけなのだから。

バットマンのルーツが「ニンジャ」にあるというのも、知らなかった。*1

子どものときに両親を何者かに殺されたのは知っていたけどそれが貧困が生んだただのチンピラだというのも知らなかった。

だから、この作品を見ていろいろと腑に落ちた面はある。

ジャスティスリーグ』でフラッシュに「あんたの能力は?」と問われて「金持ちだ」と回答したブルース・ウェイン

彼は基本的にゴッサムシティの浄化という両親が歩んだ道をたどってゆくビジランテ(自警団)でしかない。

等身大のヒーロー。

ほかの作品を知らないので「これ、合ってる?」という不安は禁じ得ないが、*2彼が『スーパーマン』とある意味表と裏の軸で並べられ、評価される所以は非常によくわかったのだった。

 

ストーリー

大金持ちのウェイン家に生まれたブルース。ある日のオペラ観劇の帰り道で彼の両親は殺害されてしまう。忠実な執事ペニーワースのもとで両親の遺産を使って暮らしていたブルースは、両親の復讐を決意。銃を携えて犯人チルの裁判に出廷する。しかし、チルはその不正を暴露されることを恐れたゴッサムシティの犯罪王ファルコーニによって殺害されてしまう。幼馴染のレイチェルに殺害計画を立てていたこともばれ、自暴自棄となるブルース。家を飛び出し、気づけば中国の刑務所にいた。

そこでラーズ・アル・グールが率いる影の同盟に招かれたブルースは忍術を体得。しかし、罪人の処刑を拒否。直属の上司であったヘンリー・デュカードを救って祖国に帰った。

7年ぶりに祖国へ帰ったブルースは両親の遺志を継ぎ、腐敗した街を正し、悪を一掃することを決意する。悪にとっての恐怖にならねばならない。そのシンボルに。

そうして彼は自らの幼少期のトラウマであり恐怖の象徴であるコウモリをモチーフに、コスチュームを作り上げ、街の不正をただすことを決意した。

悪にとっての恐怖――バットマンの誕生である。

 

小さくまとまってる感

アメコミ特有の(というとアメコミファンに無知の偏見だといわれるだろうが)明るさやパワーはなく、*3かといってファミリーが見れなくなってしまうようなグロシーンはなく、お話としては小さくまとまってる感が否めない。

ただ、小さくともまとめられているというのは驚嘆に値することな気もする。

要するに3部作の1作目なのだから、普通設定説明とキャラの配置に終始してストーリーはどっちらけになるのが当たり前である。

だとすると、今回は

・コウモリの大量発生

スケアクロウのガスによる街のパニック

バットモービルのカーチェイス

と3つも見せ場があるし、まあうまくできている。

大したものだよノーラン監督。

とはいえ、驚きはなかった。70点くらいの面白さを凌駕しないのも当然か。

 

バットマン倫理観

次作『ダークナイト』でがっつり掘り下げられるであろう「ただの私刑執行人」としてのバットマンの側面。

そこには、この作品も非常に自覚的だ。

毒薬を吸ったレイチェルを救うため、警官とカーチェイスを繰り広げ、多くの事故を引き起こしたブルース。翌日、ペニーワースは彼を問い詰める。

「死人が出ます」

「レイチェルを救うためだ。仕方なかった」

 ペニーワースに比べると、まだまだブルースは利己的である。

そのことは制作陣も重々承知で、黒幕との対決で、ついに追い詰めたバットマン

「お前も人を殺すのか」(黒幕)

「殺しはしない。ただ、救いもしない」

 そうして電車から飛び去るブルース(このシーンも絵的にかっこよかった)。

結局死んだであろう悪人。

これじゃあ、「未必の故意はセーフセーフ」と言っているだけでかなりこじつけ感は否めない。とはいえ、俺がブルースでもそうするだろう選択肢なので、そうあしざまにも言えない。

等身大のヒーロー、バットマン。彼は悩みもその解決もいまだ等身大だ。

 

スケアクロウ

この作品で一番面白い敵はスケアクロウ(ジョナサン・クレイン)。ゲームでも幻覚作用で巨大化したりして面白かった。

演じている俳優さん(キリアン・マーフィー)の顔が良い。

『28日後…』の主演の人か。。当初はバットマンを志向してオーディションを受けたが、落選し、その目に惹かれたノーランにフックアップされたらしい。

慧眼である。

ただ、だとしたらもう少し案山子は怖くてよかったぜー。

精神衰弱になったファルコーニ(スケアクロウ…)ってつぶやいてたけど、あの人もともと案山子怖かったの? .自分の最も怖いものが引き出されるという設定が無視されてるような。

そういえば原作では自分には恐怖のスプレー効かないっていう設定あるらしいな。

今回効いちゃった上になんかコールタールの化け物みたいなのが怖いことになってた。

なんだあれは?

 

まとめ

3部の序章としてきわめて優等生的でそれ以上でもそれ以下でもない作りだったと思う。次の『ダークナイト』が大傑作だとしたら、まあ計略通りだよね。

 

 

*1:そもそもことはそう単純ではなく、さまざまな格闘術を学んだ一部に忍術も含まれるというだけらしいが

*2:アーカムアサイラム』のバットマンはもっと強いしヴィランももっとマンガ的

*3:決め台詞でどや顔展開が多かったのはアメコミ味を感じたが