『ダークナイト』 85点 知らなきゃよかった、幼稚に見える
※ネタバレがあります
Dark Night じゃなくてDark Knight。
でも、印象に残ったのはDark Night。
jokerとJOKERがDark Night。
夜が明けても桂はとれず。
所感
ダークナイトといえば、東山アキコの『東京タラレバ娘』で「男しか好きじゃない映画」としてディスられていたことが念頭にあった。
↓詳しくはこちらのブログがわかりやすい。
「大体なんで男ってアメコミヒーローものの映画がすきなわけ?あんなもん現実にいないのによくまぁヒーローの悲哀だとかプレッシャーだとか言って
大体あたし『スパイダーマン』とかも全っ然面白いと思わないし
つーかゴッサムシティって何よ
さっさと捕まえりゃいいじゃないのよ
このジョーカーのおっさんブラブラ歩いてんだからケーサツと軍で一気に捕まえりゃこんなん10分で終わる映画よ」
『東京タラレバ娘』作中セリフより引用
まあこのセリフは東村明子が男女の差を極端に戯画化することで描いたギャグなわけであって、マジにとるようなものではない。
まず、男がみんなヒーローものが好きという前提がそもそも間違っているし、『バットマン』と『スパイダーマン』は全然違う(だから『バットマン』がつまらないと『スパイダーマン』がつまらないはイコールで結べない)し、ジョーカーはブラブラ歩いてるときは捕まったし(つかまったけど脱出した)。
第一、このセリフを主人公が脳内でつぶやいている間、男は『知ってる? このシーン ここ本当はNGだったんだけどジョーカーの芝居がすごすぎてそのまんま使ったんだよ』とべらべらしゃべるが、男は本当に好きなものを人に薦めるとき、ベラベラしゃべって集中をそぐような真似はしない!
というわけでこれは多分に職人作家的気質の強い東山アキコが、タラレバ娘掲載紙の読者層(20後半~30代女子)ウケを狙って、(もしかしたら)個人的な体験を交えつつ、あえてヘイトを投げつけたシーンなわけだ。
とはいえ、この作品が見方によっては「幼稚でリアリティがない」という意見には首を縦に振らざるを得ない。
だって、ジョーカー強すぎだし。
トゥーフェイス顔の骨むき出しだし。
バットマン犬に負けたりするし。
それでも、「ジョーカー(ヒース・レジャー)だけは認めざるを得ない」というのが大方の意見だろう。
ただ、俺はそれを知りすぎて作品を見てしまった。
それでもがっかりしなかったのだからやっぱりヒース・レジャーの演技はすさまじいということなのだろうが、期待通りであって期待をはるかに超えるものではなかったのも事実だ。
前述のようなアラが目についた。
いや、それでも『バットマン・ビギンズ』やほかのアメコミ映画と比べて格段に面白かったのは事実で、冷静に見たら80点は超えるけど、でも85点くらいじゃないか?
97点はヒースレジャーの演技点だと思う。
ストーリー
日夜ゴッサムシティで犯罪者を取り締まり、街の浄化に取り組むバットマン(ブルース・ウェイン)。その姿は市民に広まり、格好を真似したフォロワーが出るほどであった。そして、バットマンに対抗する勢力も当然現れる。
香港マフィアのラウが不正資金を隠すたびに高跳び。現地に残ったマフィアたちと会議を行っていると、道化のメイクをし、ヨレヨレの紫スーツを着た道化師のような男が現れる。
「この鉛筆を消して見せよう」
男はかかってきたマフィアの部下を瞬殺。バットマンを殺害する代わりに資金の半分を要求する。
一歩、バットマン側にも味方といえる人物が現れていた。それは地方検事のハービー・デント。”光の騎士”という渾名を持ち、街の不正を暴き立てる。前作からの警察内協力者ゴードン警部とともに力を合わせ、バットマンら3人は街の浄化に努めていた。
そんな中、ジョーカーから一通のビデオレターが。その中でバットマンのフォロワーを殺害したジョーカーは、バットマンに言った。
「カメラの前で正体を明かせ。でなけりゃ毎日1人死んでいく」
ジョーカーのキャラ
ヒースレジャーの怪演があるとはいえ、そもそもジョーカー自体がバットマンの中でも最もおいしいキャラだし、そのジョーカーが出てくる『ダークナイト』はシリーズで最も盛り上がるに決まっている。
『ビギンズ』は『ダークナイト』のお膳立てだし、『ライジング』は『ダークナイト』の後始末なのだ。
・金・名誉・女・示威などのいずれにも興味を持たない
・タイマンではほぼ最強
・割けた口のルーツは毎回ホラ話。それを聴かせながら相手を痛めつけることも
・残虐行為は厭わない(むしろ好む)
・カルネアデスの板やトロッコ問題みたいな思考実験をリアルで促してくる
まあ、現代の一つのサイコパスキャラの典型例であり、理想形である。
上記の要素をうまくみせるだけでもキャラ萌えで引っ張れる。
ただ、あんまり描きすぎると「キャラ化」して矮小化してしまうのがサイコパスキャラの痛いところだ。ダークナイトでは演技の力でうまく格を保っているけど、それでもヤバさ(魅力)のピークは冒頭の強盗シーンだったのではないか。
裏切りの連鎖、そのすべてが紛れ込んだジョーカーの計略という。
トラックの荷台から弾を渡してもらってロケットランチャー売ってるときはちょっともう怖さは半減してたよね。弾渡してくる奴が裏切ったらどうするんだっていう。
ジョーカーには裏切られる仲間などいては困るのだ。
レイチェルかわいない問題
いろんな感想で書かれているけれど、レイチェルがブスになった。
具体的にはケイティ・ホームズ→マギー・ギレンホールになった。
これは痛い。
なんせ作中でジョーカーが「綺麗な女だ。ハービーの女か?」というシーンがあるのだ。
ジョーカー、女のハードル低いな。
視聴者の大半はそう思ったよね。
どうやらケイティ・ホームズがギャラでモメたらしいので仕方ないが、ここは演技よりも顔重視でよかったぐらいだと思うぜ。
まとめ
事前情報さえなけりゃもっと興奮していたと思う。
でも、事前情報のおかげで冷静に見れて本来の実力が判断できたという実感もある。
二時間半は長い。
「香港のシーンがいらない」という意見が散見されるが、俺的には「一般市民の船VS囚人の船でカルネアデスの板」をやるくだりがいらなかったと思う。
究極の選択はその前にやったし。
ぽっとでの囚人のコワモテのやつがあんなにいい人間なのも納得いかん。
逆に一般市民は「犯罪者なんかいいだろ(爆弾の)ボタンを押せ」と言っていたが、なぜ責任者は「もう一つの船には犯罪者だけでなく船員や警官も乗ってるんですよ」といわん!
この問題で伝えたいことをクリアにしたいあまりリアリティを無視してないか?
思えば文句ばかりになってしまったが、面白かったのは事実なのだ。
なのに評判のせいで「けど」になってしまう。
俺は評判を憎んだ。
そうして1ペニーのコインを取り出し――。