『ブリグズビーベア』感想 90点
面白かった。
正直前半はちょっと退屈だった
俺はある程度あらすじを知ってネタばれた状態で見たんだけど、別に初見でも、というか初見の方が退屈だったかも。
誘拐犯の夫婦によって地下室にとらわれたまま大人になった青年。
子どものころから繰り返し見せられていた『ブリグズビーベア』に夢中のまま。
しかし、警察に両親が逮捕されたことから元の生活に戻ることになる。
ここで気になるのは「その青年は社会に適応できるのか?」だ。
しかし、その問題は華麗にスルーされる。
一つ、青年の家かなり裕福。
めちゃくちゃでかい扉の家に、しっかり用意された自分の部屋。
<これはジェームス捜索のための義援金でも使ったのかな>
そう思ったが特に言及はなし。
二つ、青年(ジェームス)、かなりまとも。
ずっと監禁されていた割にジェームスちゃんと意思疎通とれまくる。
きっと、両親の教育が良かったのだ。
監禁部屋でマスターベーションにふけるくだりがあり、元の家には妹がいたから「はは~ん、なんかやらかすな」とMoodyz脳で予想したが、結局そういったふしだらな件は何も起こらず(妹の友達から誘惑されるくだりはある)。
というわけで、社会常識とのズレが生む、ドタバタコメディ要素はあまりなかった。
ブリグズビーベアをとめるな
代わりに物語をけん引するのは、”マトモなもの”出ないからこそグイグイ主人公を前へ進ませる「創作への情熱」。
ブリグズビーベアの映画を作るため、主人公は妹の友人やハイスクールで役者をやっていた刑事らと奔走を始める。
この映画は映画秘宝で「カメラを止めるな」と合わせてみるべきと紹介されていたらしい。
それはきっと、この純粋な創作への歓び-Viva la Arte-的な部分が創作者の胸を打つからだろう。
そのテーマについて、別に何も作らない俺は「内輪でやってる感があって嫌いやなあ」と明確に否定的なスタンスをとっていたのだが、ブリグズビーベアはなぜかよかった。
なぜだろう?
俺が外国人コンプだから?
それもあるかもしれないが、ブリグズビーベアのそれは、「今まで好きだった作品の続きを再現する」というより「オタク的」な動機が全面的に出ていたからだと俺は思う。
その点、「カメラをとめるな」は「ワイの作品なんや!」感がすごかった(実際主人公日暮ははじめのシーンで「俺の作品めちゃくちゃにしやがって」的なことをいっている)。
ブリグズビーベアも「僕の作品だ!」なのだが、それは「僕のつくった」ではなく、「僕の愛する」なのだ。
それは、創作者にとどまらなず共感できる感情である。
結局俺の立場で共感できる視座がそれだった、というだけではあるが、それでもこっちの方が俺は好きだな。
もちろん、あっちはあっちで別の面白さがあるけれどもね。
メモ
・精神病棟の友人が好きだった。あいつ清潔でおもろい。
・刑事の演技がきっちり映画で別のものになっているのが気が利いていた