『ムタフカズ』67点 バンドデシネ×Studio4℃アニメ
2018年10月28日(日)12:00-13:40 @仙台の映画館チネ・ラヴィータ
CreepyNutsのANNゼロを聴いていたら、声優として出演してますよというお知らせがあったアニメ、ムタフカズ。
一瞬の出演時間といっていたけどマジで一瞬だった。
知り方は好きなラジオだったわけだが、俺は別にミーハー女的な感性で作品を見に行ったわけではなく、元々こういうのが好きだった。
アニメを全然見ないのに、こういうのに惹かれてしまうのはサブカル的な(「バンドデシネ」っておしゃれや~ん的な)自意識なのか。
だとしたらダサいな、と思いつつ、恥じらいつつ、それでも見に行ったわけである。
実際のとこ、感想はどうだったかというと、67点という点数が示す通り、あまり高くなかった。
俺は、物語を信じているからだ。
行ったり来たり
ストーリー
犯罪者と貧乏人の吹き溜まり、ダークミートシティ。その街でその日暮らしを送るのが、物語の主人公アンジェリーノ(通称:リノ)<声:草彅剛>、その相棒のヴィンス<声:柄本時生>である。
…リノは黒の素体に大きな目、ヴィンスは頭に火のともった骸骨。
ペットのゴキブリ(大量!)とともに暮らすある日、ピザ配達の途中に目にした美女に目を奪われてリノは事故にあい、それ以来謎の頭痛と幻覚に悩まされ、人間の影が角の生えたおかしな形に見えるようになる。
そんな彼らは、馬鹿で臆病なコウモリのウィリーと遊びにでかけた中途から、黒服の集団に追われることに。家にまで襲撃を受けたリノとヴィンスは、政府の指名手配や黒服の襲撃をかわしつつ、逃げることになる。
”気づいてしまった”主人公が 逃げる話である。
ただ、そういう話に重要な「冒険」感が致命的に欠けているのだ。
自宅から追われたリノとヴィンスはスラムの隠れ家に潜むが、その家はすぐに見つかり、また逃避行が始まる。
――一通り、カーチェイスを行い、追手は壊滅したのに、腹が減ったためにまた地元へ戻る。
――で、なにゃかんやあって逃げ切って、バスでメキシコ国境を超えようとしていたのに、ヴィリーの電話を受け、また戻ることになる。
…全然マップが広がらない…。
逃げては戻り、逃げては戻り。リバタリアン各位はさっさと逃げんかいと腹立ちのつるべ打ちだったのではないか。
ウィリーの電話を受けて戻るときに「俺はココで戻らなくちゃ、一生自分を許せねえ」的なことをリノが言うのだが、それはウィリーに言わせるセリフだろと思った。
臆病で逃げてばかりのやつがそんなセリフを吐いて戦うからこそカタルシスが生まれるのであってめちゃ強い主人公がそのセリフを吐いても普通にちょっと違和感が生じるだけだ。
レスラーなんやってん
この物語の基本設定をネタバレしちゃう。
主人公リノは宇宙人と人間の交配種だった。そして、街で見かけた謎の美女も。彼らは人間以上の力を持つが、寒さに弱く、冬は活動できない。その問題を解決するため、地球は温暖化の危機にさらされることになった。そう、地球温暖化は合衆国政府の陰謀だったのだ(ドジャ~~ン)
リノが自分の中のもう一人の自分(宇宙人性)に悩むが、友情により、我を取り戻すくだりはまるでナルトをみているようであった。日本の漫画の影響を感じるストーリーの仕立て方である。そこにゼイリブが混ざってる感じ。
そして、リノを追う黒服集団は宇宙人の手先だったのである。宇宙人の王的な奴は、人間側の科学者をとらえ、地球を温暖化を進めていた。しかし、科学者の一人がリノたちが起こした騒ぎに乗じて反逆、使命を受けたレスラーの助けを得て、地下牢を脱出する
レスラーの登場、唐突だったろう。
…実際の物語でも、これに近しい唐突さなのだ。
行ったり来たりする暇があったら、彼らの使命とは何なのか、博士はどういう経緯でとらえられていたのかをもっとしっかり説明してほしい。
そして、物語終盤のネタバレ。
レスラーと博士が発明したロケットが撃ちあがり、地上に雪が舞う。すると、多くの宇宙人は機能を停止し、倒れてしまう。敵側の人間トップはリノたちを殺そうとするが、マフィアの助けを得て、最後には倒すことに成功する。
ほぼ、レスラーと博士が物語を動かしている。
リノとヴィンスは狂言回しに過ぎなかったのだ。
これには脱力してしまった。結局俺たちが勘定していた2人はただ逃げただけだったのか。
穴を掘って埋めるような話である。
原作もそうなのかもしれないが、これじゃああんまりだよ。
無たふ風
拭いているのに吹いていないと同じ、無風の風を無たふ風(ムタフカズ)と呼ぶ(嘘)。
正にそういうドライブ間の映画であった。
走ってるのに気持ちいい風が当たらない違和感である。
ただ、以下のポイントはしっかりよかった。
・かわいいキャラ・街のデザインセンス
・町全体のゴミゴミした空気感
草彅剛の声も正直違和感があったな~。
けだるい感じを出してたんだろうが、単に下手な感じに聞こえた。
最後にこの映画を一言で表すと、
『鉄コン筋クリート』のドラマ性が薄いバージョンである。
でも、デザインはかわいいよ。