きみと波に乗れたら バカップルストレートアニメイション 感想
Filmarks感想
普通によい映画だった。
それがすごく功を奏してした。
湯浅監督の天才性というか、エキセントリックな表現が自分はイマイチピンとこなくて、『夜明け告げるルーのうた』もそんなに面白いと感じなかった。
それがこの『きみ波』では普通に泣けた。ストレートな恋人たちのストーリーというのは、実写だとどうも今これ取る必要あるんかいという否定から作品を観てしまうところがあるが、アニメ、しかも御大の作品となると逆に新鮮味がある。
時間のバランス的にもちょうど起承転結で同じくらいに配分されていてわかりやすかった。
強いていうならたまにようこが腹立つくらいか。
ようこというのは主人公の恋人で死んでしまう港の妹のこと。
人に対してつっけんどんに接してしまう性格のため一時は不登校になるも、港や港の後輩の山葵(わさび)のサポートで立ち直ってきたところでひな子と出会う。その後、港の死にもめげず、その遺志を継いでカフェ店員を目指す。
これだけだといい娘でしかないのだが、随所でのつっけんどんでそのことを恥じ入りもしない態度が腹が立った。極めつけは、物語のクライマックス、廃墟で花火をしようとする集団を尾行してその犯行現場を押さえようとする場面である。
ホラー映画で一人になろうとするやつとか、夜で歩こうとするやつをみたときのような「ああ!ばか!怒られろ」という感情が胸中に渦巻いた。
結果としてひどい目に合うのはわかっているのだから、そこまで馬鹿であってくれるな。ましてやお前には愛嬌がないのだから知的であれ。
渡航まで感情移入したのだからよいアニメ映画だったといって差し支えないだろう。
バカップルをてらいなく描くというのがカラッとして、いいじゃないか。
こう思えるというのはなるべくアニメ映画からは非モテ性やオタク性を排除してくれた方が見やすいという俺の屈折した感情もあるのかもしれない。
なんというか、逆を行ってほしいのだ。ふわっとこちら側に存在する偏見の。