『美女と野獣(実写)』感想―原作の完全再現、よくも悪くも。
エマワトソン主演の『美女と野獣』をご覧になってきた。
俺は原作のアニメを見ていない。その立場で何を物申すかと言われればぐうの音も出ない。
だが、見なくても「これアニメそのままだな」とわかる出来だった。
それには良い意味も悪い意味もある。
良い意味:3D技術2.0
『モアナと伝説の海』を見たときにも感じたことだが、3Dってなんかここ最近進化してないか?
いや、ここ最近というよりは映画が撮られた時点で、ということなんだろうけど。
VRという技術革新が一般化したことで既存の技術全体も底上げされた気がする。
とにかく映像が綺麗だった。
ルミエール、コグスワース、ポット夫人、野獣。誰もが嘘くささなく、”そこにある”感を持ってベルやモブたちと画面の中で同居していた。
特に「Be Our Guest」のシーンは最高に美しく、まるでディズニーのパレードを一本見た後、純粋な美しさとしてはそれ以上の目の肥やしを与えてくれる。
悪い意味:メッセージ性が古い&子どもっぽい
さんざん突っ込まれていることだが、「見た目は関係ない。愛は心に宿る」というメッセージを建前としていながら、「美女」とタイトルに入ってしまっている時点で本末転倒だ。
話をまとめると、村一番の美女が頭の悪い村一番のモテ男を袖にして、城を持っている上に権威のある野獣(しかも正体はイケメン)と結婚するという身も蓋もない話になってしまう。
ベルが野獣にさらわれてから作中で流れる時間もせいぜい3日に見えるため、ベルが野獣に惹かれた理由が「エグゼクティブで趣味もあるから」にしか見えない。それが真実の愛なのか……。
そもそも、真実の愛を誓いあう相手を見つける、という魔女の条件自体が「パートナーを作らないと人は信頼に足る人格を持った人間と認められない」という価値観に基づいており、あまりに古臭く感じる。
そのあたり、どうにかうまく改変できなかったのか。
もちろん、今回の実写化は、名作とされる作品をそのまま実写に再現するという及第点は満たしているが、「ズートピア」というポリティカルコレクトネス的にも間違っておらず、さりとて窮屈すぎるわけでもないという絶妙なバランスの物語を生み出した後のディズニーがやることとしては、志が低く感じてしまう。
あなたたちは新しいメッセージを発信しつつ、面白い作劇を行うことができる天才集団として認められているのだから、そのハードルは越えようとしてもらわなければ。
子どもっぽい=おとぎ話っぽい話の作りも話にのめりこむことを阻害した。
「いや、これおとぎ話ですから(笑)」と言われればそれまでだが、あえてアニメを実写として再現したのだ。アニメでは気にならなかった部分が、より現実感を増した分、気になってしまうことは考慮してほしい。また、そこまでこの作品が子ども向けとして世間からとらえられているとも思えない。どちらかというとデートムービーとして扱われているのではないか。その証拠に、劇場はカップルばっかりだったぞ!
以下、突っ込みどころ(疑問点)。
・なんで馬を見つけたベルはすぐ城にたどりつけたの?城にたどり着ける条件はなに?
・ベルを城に閉じ込めるくだりはなんだったの?平気でホイホイ出歩けるし、父の代わりに牢屋に入ったことで示したベルの自己犠牲の精神が途端に意味なく感じる。。
・バラの花びらの散るペースから考えると、王子が野獣に変えられたのは1週間くらい前な気がするんだが。。だとしたらなんでそんな変化してからの生活に慣れ切ってんの?ダメだった今までの女って誰?そいつはどうなったの?
・オオカミはなんで急にいなくなったの?なんでベルが城に来るときはいなかったの?
・世界を飛び回れる本みたいな便利アイテムがあったらもっとできることはあっただろ。そもそもそれでベルを街に飛んでいかせれば良かったのでは?
・悪人が都合よく事故で死ぬご都合展開(主人公たちは手を汚さない)。
・ル・フウはガストンの圧力があったとはいえ、モーリスを精神病院送りにする嘘をついたのに何であんな簡単に許されていいやつメンバーに入ってるの?
まあ、おとぎ話に無粋なことを言っているよ。。。
でも、そこを「まあ子ども向けだからな」で片付けられるラインを到底突き放した位置にディズニーはいると思うんだよ。
結局何が正解だったのか
映画の冒頭で「この話は昔のアニメの実写化であり、現代の価値観にそぐわない部分があります。また、童話なので整合性の合わない部分もあります。」と書いてくれていたら良かった。そしたらほんとにぐうの音もでない。
とはいえ、これは、すごく、クレーマーっぽいです。。。
手塚治虫全集の後付けじゃないんだから。
まあ『美女と野獣』という時点で、上記の注意文は読んだものとみなします。ということだったんでしょーね。。。
美女と野獣 オリジナル・サウンドトラック デラックス・エディション(日本語版)
- アーティスト: V.A.
- 出版社/メーカー: WALT DISNEY RECORDS
- 発売日: 2017/04/19
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