『泣き虫しょったんの奇跡 完全版』90点
ノンフィクション(本)の方の感想。
ノンフィクションや小説に点なんかつけれないだろと思うがそれならなんで映画ならつけれるんだという話になるのでやっぱりつけてやった。
別に100点くらい熱中して読んだのだがじゃあ90・80点台の映画はもっとだめなのかよと言われるとそういうわけでもないのでいったん90点に。
これは誰に対しての言い訳なんだ。点数の神か。
泣き虫しょったんの奇跡 完全版<サラリーマンから将棋のプロへ> (講談社文庫)
- 作者: 瀬川晶司
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/02/13
- メディア: 文庫
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話の概要
一度奨励会を退会しておきながら将棋協会に嘆願書を提出し、35歳にしてプロとなった瀬川晶司現五段の自伝。オープニング・あとがきを含めて7つの章に分かれており、1章では小学校時代の恩師とのエピソードが、2章ではライバルとのエピソードが、3章では奨励会での戦いの日々が、4章ではプロを追われてからの苦悩と再生の軌跡が、5章ではプロになってからの後日談がつづられている。
楽に生きたい
この本を読んでの一番の感想がこれである。「26歳の誕生日までにプロになれなかったら追放」。この奨励会の鉄のおきては多くの将棋棋士に涙を流させ、また多くの名勝負やドラマを生んできた。
ここまで研ぎ澄まされた勝負の場というのはほかにはなかなかなく、この3章でも努力を繰り返し、あと一歩のところまで手を伸ばしながらちょっとした慢心やミス、だれでも日常的に持つゆとりレベルの心の甘えでプロへの道を踏み外していく”しょったん”や友人の姿が描かれている。
ある席で、何人かのプロ棋士が談笑していた。奨励会員もいた。誰かが面白い冗談をいった。その場のみんなが笑った。奨励会員も笑った。すると、あるプロ棋士が奨励会員にいった。「君は笑うな」と。奨励会員は人間じゃない、だから笑う資格がない、というのだ。
本文3章p.145
その姿は確かに美しいが、外から眺めているだけで水に沈められた犬のような気持ちになる。
俺は、こういうのは傍観するだけで充分である。
手塚治虫の漫画か
スターシステムか。
というほど、後半の人物再登場系伏線回収がすごい(スターシステムはそういうシステムではないけど)。
例えば1章で出てきた恩師苅間澤(かりまざわ)先生は、プロ入りをかけた対局で敗れた瀬川五段に絵ハガキを送る。
そしてまた別の機会には、苅間澤先生も、35歳で先生になった遅咲きの人だとわかる。
ライバルである渡辺健弥君は、瀬川五段が再びプロを目指すためのきっかけを作る。
小学生時代の師匠今野さんはラジオに電話をよこす。
――人生の伏線回収がすごい。
何よりズルいのが、やはり直接のかかわりはないものの、瀬川五段と同世代の天才、羽生善治名人である。
全員が固唾を呑んで見つめるなか、長岡さんはその棋士の言葉を伝えた。
「私は、瀬川さんのプロ入り希望は大変重要な問題であり、きちんと連盟で議論すべきだと思います。そのためにも、瀬川さんは一刻も早く正式な行動を起こすべきだと思います――その棋士は、そういいました」
(中略)
「瀬川君、ちょっと」
その会合から数日後、顔を合わせた遠藤さんが、人目をはばかるように僕に声をかけた。
「じつはあの夜、こっそり長岡さんに打ち明けられたんだけど」
「はい?」
遠藤さんは真剣な表情になって、こういった。
「あの電話の主は、羽生さんだって」
本文4章p.283~284
タイトル
に「泣き虫しょったん」とあるが、そこまで泣き虫な描写がなかった。
気が弱かったとか、要領が悪い、とかはあるけど。
まあそこは編集者の仕事ということで。