僕たちの肉にまつわるささやかな成功と失敗
昨日は嫁はんが弱っていた。
こう書くと、まるで「嫁はん観察日記」のようである。
一昔前なら「ブログ発!人気エッセイが書籍化!ドラマ化!」である。
人気ではないことを除けばだが。
なにせ仕事が忙しいらしい。
夜は、すき焼きを食べることを予定していた。
結婚式の二次会の景品として肉のセットを用意していたのだが、コロナのあおりを受けて結婚式は中止に。そのまま自分たちで注文することとなった。
黒光りする高級そうな木箱に入れたまま冷凍されていたその肉たち、解凍してみると肉それぞれにイチボ・クリ・などの名前が(この2つの名前だけいやらしいので覚えた)。
どう見ても、焼き肉の肉の収まり方である。
牛脂も入っていない。
どうやら俺は焼き肉用の肉を注文したことを忘れてすき焼きの準備を整えてしまっていたようである。
控えるは、ネギ、玉ねぎ、じゃがいも、しらたき、白菜、豆腐、エリンギ、しめじ……。
肉は食いたいが、こういう腑分けされた肉をすき焼きで「ごった」に煮てしまうのはよろしくない。
というわけで、すき焼き用の鍋で焼き肉をして、肉をすべて平らげた後に野菜と割り下をぶっこんで安い豚肉ですき焼きをすることにした。
結論から言って、成功と失敗があった。
というか、肉がうまいのでまず成功は固いのだ。
すき焼きにしなくてよかった……!
すき焼きもしゃぶしゃぶも肉の調理方法として不完全なんだよと「美味しんぼ」で知った知識を披露すると、嫁はんが敬愛する元プレイボーイ編集長島地勝彦先生も同様のトピックを取り扱っていたと話す。
うまいうまい、と肉を食って
──嫁はんは苦しくなった。
心や体が弱っているときに「うますぎる肉」は毒なのだ。
肉のパワーに圧倒され、また料理のお供として流していた今敏の『パプリカ』にもやられ、嫁はんは「もう食えない……」と巣(自室)へ引っ込んだ。
俺もついていって、そして、眠った。