ノマドになれない僕たちは
昼はホテルの高級目な中華を食べた。
それと代償に下痢をした。
それくらいの一日。
昼には『ノマドランド』を見た。
フランシス・マクドーマンドはスリー・ビルボードといい、たくましく生活力があり荒野にたたずむような女を演じるのが上手いし、実際にそういう人間なんだろうなと思う。根拠はないし、女優のマジックに騙されているだけかもしれないけど。
放浪する人生にあこがれはあるし、根無し草でありたい、“属したくない”という中学生の衝動にいまだ突き動かされて30年まであと2年……なのだけれど、そして孤独に耐えるのは得意なのだけれど、それでも俺は自由のためのもう一つの条件“自助”ができないから、ノマドにはなれないなーと思った。
それは通常通りの甘ったれた、誰かによって立たねば泥臭く食い扶持を稼ぐようなことをしたくないという欲望のためであるし、また、そうする非合理に感情だけで飛び込めない、ということでもある。
俺は都市の合理性に助けられ、サブプライムローンの欺瞞によって立ち、生きていく。
それでいいと思ってしまう。
何か信念のようなものがないのだ。
その方が幸せに暮らせるという判断でここまでやってきた。
その勘は今のところ外れちゃいないけれど、いつか足元をすくわれる気もする。
でも、それでもいいのだ。