裸で独りぼっち

マジの日記

『竜とそばかすの姫』見た

竜とそばかすの姫を見て怒るなどした。

 

アカンかった。
納得いかない部分が多くて腹が立った。
さんざん言われていることではあるけど、やっぱり脚本がダメだ。
素晴らしいシーンと描きたい着地はあるけど、キャラクターと世界観がない。
俺はそういうの好きじゃない。
アニメーションにそこまで快を感じず、あくまで話を魅力的に描くための道具だと思ってるからなあ…。

話は下手だけど絵が上手い人。
アバター全員で大合唱とか、3Dとディズニーと日本アニメの融合とか、フェチ臭が強い竜の城のAI小人たちとか、そういうシーンが浮かんでいて、具現化できるのはすごいのよ。でも、それが描きたいが先行してキャラクターがそのための道具なんよ。

そもそもUというサービスの作り込みが浅い。セカンドライフ的なバーチャル空間を手軽に再現できました。好きなアバターを設定できます。というだけで、特に魅力的なイベントやバーチャル空間ならではの面白いことが全然なさそう。俺は『レディ・プレイヤー1』が大好きなんだが、あのバーチャル空間の良さとしてイースターエッグ探しやダンスパーティ、映画の世界をそのまま体感できる映画館など、確かにこれは面白そうだぞというガジェットにあふれているからだ。たとえそれが少し埃っぽい質感だったとして、その面白そうさには変わりがない。
それに対し、Uはマジでおもんなさそう。アバターを着て空間に入れるというだけで、荒らしプレイヤーは放置されているし、なんか自警団みたいなやつがスポンサーの傘を着て偉そうにしているし、空間は基本無機質だし。何であんなのを50億人も利用するんだ。行政サービスとか現実の暮らしと特に結びついている感じもないしな。人口が実は1京くらいいる世界なのか?
で、その世界でベルが歌っているところから始まるんだけど、そこから時系列がわかりにくい。実は話はさかのぼる…となって、ヒロちゃんしか友達のいない日常が描かれる。どうやら昔のトラウマがあって歌えないらしい。げろ吐いた。でも、ヒロちゃんがUを見つけてきた。
という流れだが、その前のカラオケのシーンでそこそこUが浸透している感じだったよな?ヒロちゃんは明らかにデジタル強者として描かれていたからクラスに乗り遅れているとしたらおかしい。いや、百歩譲ってそうだとしてもそこですずをプロデュースして歌姫にする計画ってどういうロジックで立ったんだ? すずが歌うまい、実は歌いたいなどの気持ちを聞いていたわけ? そのくせ、終盤では鈴が殻を脱ぎ捨てようとしたら毒親みたいに封じ込めようとするし。なぜか収益は寄付するし。なんなんだあいつは!それが成功してベルが世界一注目を集める存在になるまでどれだけ時間がかかったかわからないので終盤の「すずと私で作り上げた~」の部分も大してお前ら努力してないだろ!と。もっかいアカウント作ればいいだろ!となる。
だいたい50億人が利用するサービスをなめていないか?予告の時点でも「50億人のなかからたった一人をどう見つけるか?」という面白そうなあおりがされていたのに、なんか検索したら見つかったというクソ解決策だった。これはないぜ。やっぱりサマーウォーズ数学オリンピック代表とか一応のエクスキューズがあっただけ、奥寺佐渡子が入っていた意味がめちゃくちゃあるなと思う。ワンマンで話を作るとこうなる。インタビューなどを見ると意図してそうしているようだけど、やっぱりコライトの時代にそんなの完成度下がるって…。

そこからやっと本作の主題のひとつである竜が出てくるわけだが、こいつがまたキャラクターが浅くしか描かれない。最終的に虐待されていた子どもだとわかるわけだけど、あんな強権的な親がUの世界に入ることをそもそも許すかね? なんでスマホ与えてんねん。もっと悪くあれ!
あそこで父親の目から逃れるためこそこそ押し入れに隠れてやってる…とかならまだ納得も行くのだ。そういう部分を指摘されないからワンマンはいかんのだ。虐待に耐えて弟を守るような強さがアバターに表れていたというのもよくわからないし、よく考えたらなんか炎上しそうなこと言うてる気もする。その潜在能力引き出されるみたいな設定が主人公らにしか適用されていないのがそもそも恣意的でうんざりする。面白そうな設定なんだからもっとそこからUの世界を魅力的に描いてくれよ!
虐待に耐えてゲームで竜になって城に引きこもって暴れまわるというのも心理の流れがわかりにくい。『美女と野獣』モチーフにしたくて、意外性を狙って正体を設定しただけなんじゃねーかと思う(複数正体の候補が現れてそれぞれ真相が後半わかる点はちょっとも面白かった)。
ていうか、どっちも日本の東京に住んでるっていうのもご都合主義だな!せっかく世界規模のゲームなんだし、アニメの世界は無限大なんだから地球をまたにかけるような方向へ話を転がしても良かったんじゃないか。

ルカちゃんとカミシンの話自体はエピソードとしてそれ自体はよかったけど、よく考えたら映画の本筋に対して全然関係ない別になくてもいいシーンだ。あと、カタンになぞらえて女子のいざこざを描くのは謎にアバンギャルドなパワーがあった。でも、あそこも別にいるかというと……だが。

コミュニケーション不足の父子家庭と、抑圧される関係の父子家庭と、歌を通じたつながりの対比、細田家族観のアップデートみたいな方向で評論家は評価もするかも知らんが、御託を抜きにすれば話がお粗末すぎると思う。俺はダメだったなあ。
竜とそばかすの姫
上映中
 
 

 

 2000文字近く書いてるじゃん。

これだけ言いたいことがあるというのは、悪い映画ではなかったのだろう。

なんというか、粗だらけなんだけど適当にやった結果ではなく本人の欠落によるものなんだろうなあという信頼がある。

それはただ、まあ絶望でもある。