裸で独りぼっち

マジの日記

映画『レミニセンス』ネタバレ感想 (一匹のハエ)

映画『レミニセンス』をみた。

レミニセンス

ノーラン弟が製作に入っていることを押しに押しているが、監督はリサ・ジョイ単体で、制作は四人でその中にもリサ・ジョイはいってんのかい!と「ノーラン」の旗印にそこまでの宣伝効果が見込まれているんだなあということを感じた映画。
かくいう俺もそういうものを期待して劇場に足を運んだので同じ穴の狢。

実際見てみると、世界観自体は手堅くSFらしく、温暖化により水没した世界で主人公らは「記憶屋」をやっている──といかにもな設定にワクワクが現実が同時にノスタルジーも感じる。
そして、このノスタルジーが映画全体において感情的な伏線になった。そこまで狙ったものなのだろうか。仕掛け自体は要するに記憶をたどるという名目で3D映像投影して、そこからは通常の回想と同じ手法なのでそりゃまあ、インセプション!みたいな、テネット!みたいなセンスオブワンダーはない。でも、手堅く映画という機能を使って予算押さえながらSFやろうと思ったらこうなるし、その分水没した街とかはそこそこ頑張ってたよな。
記憶屋の記憶を丸出しで見られるという設定はプライバシー的にいかがなものかと思うが、そこが本作の目をつぶりポイントであり、どうしても外せない仕掛けだということが後半わかる。
とにかく、一目で、「あ、このシーンが取りたかったんだな」とわかるシーンが後半来るので、記憶映画館状態になるのをわかっていながら客が来店しまくることを気にしないでほしい。
当然ながら、他者の記憶を映像装置として覗き込む、というそれ自体が映画を鑑賞している我々の似姿であり、ハッピーエンドで終わる物語は、実のところハッピーエンドでバッサリと物語を閉じているだけであり、すべてそのあとの悲喜こもごもと死という終着点に向かって進んでいく。
そういう物語論とはっきりとわかりやすく、しかし粘り強く格闘してくれるのはよかった。最後の決めのシーンと、その「テーマ性の強さ」さえあればとりあえず嫌いになれない作品である。
なんかエンドロールの曲も良かった。みんな、リサ・ジョイを評価しよう!

みんな暗いとか、こんな映画とは思わなかったとか、おおむね不評のムードが漂う。

こうなると、がぜん擁護したくなるのがオレである。

嫁はんにこの映画のストーリーや概要、俺が面白いと思ったポイントを語ったが、「復讐とかあまりにアメリカ過ぎる」「私はただただ暗く主人公が恋愛で悩むなら好きかもしれない」とばっさり出会った。

みんな痛快なSFかと思ったらそういったダウナーな空気が蔓延していたから非難ゴウゴウだったのだ。

思えば、俺はそのダウナーでもない、痛快SFでもない中途半端な感じが好きなのかもしれない。

なんでも間を取った、イチゴ大福のような、カレーハンバーグのような、おかず系パンケーキのようなものが好きなのだ。

それはひとえに俺に確固たる好きなものがないからに他ならない。

之にはこういった側面がある、これにはこういった側面がある、この部分は評価できるができない、と腑分けする作業が好きなのであってその実対象に対する愛や思い入れはゼロに等しいのだ。

好きという柱が文化を支えているとすれば、俺はその周りをくるくると飛び回る一匹のハエである。

 

色々な柱の周りに集っているが、その実どこにも深く入り込んではいないのだ。

その感触も、住み心地も、高さも深さも本当にはしらない。

でも、そうとしかいきれないのがハエである。

ハエはライター向きかもしれぬ。