トラと明かり
──例えば、明かりをつけてみる。
それだけで、この部屋の様子は変わる。
微細な変化、心地よい変化を日常に取り入れたら、わざわざ昼間にお出かけなんてしなくても俺は元気に仕事や趣味に邁進できるのかもしれない。
飲み会もレジャーも嫌いで、ずっと家でダラダラしていたいのだから、俺は植物のようなものである。
しかし、それと相反する気持ちもずっとあった。
「外に行きたい」「家に居たくない」「動き回りたい」と暴れまわる俺の中の黒い悪魔!!
でも、飲み会は嫌いなので本屋や街道をただうろうろと歩いていたのだ。
あのベンガルトラ わかったような顔でウロウロウロウロ檻の中
俺は今日も檻の中をうろうろ。
快適でならない。
「動物園は解体だ。」
ある日、おじさんがそういうので俺は、動物園中の仲間にそのことを知らせようとひときわ大きな声で「ウオォ」と吠えた。しかし、のんきなヤツラ(キリン、アザラシ、ニヌー、各位)はその意味に気づきもしない。
ただ飼殺されて、「出来合いの自然」のままに、餌を食べているだけ。
(いやだ!俺は自由になんかなりたくないよ!!!)
──例えば、明かりをつけてみる。
俺はこれを実践していない。今は昼間だが、暗雲が空を覆っている。
暗い部屋で、2台のパソコンの光が、トラの顔面をぼんやりと浮き上がらせているのだ。