バズマザーズ『普通中毒』-⑤「ソナチネ」
この曲は、このアルバムでも屈指の作品だと思っている。
展開がわかりやすく、複雑で予想しがたいのが良いよね。
全編マイナーで怪しくドープな曲調なのだが、最後のサビだけ開けたメジャーに変わる。
描かれるのは人間の無理解と男女の諍い。
1晩(番)は男目線で、もう1晩(番)は女の目線で
最後はその二人の情事と痴話喧嘩を隣室で盗み聞きする男の目線で語られる。
歌詞の流れ
男は女を枕に誘い、2人は一戦交えたが、何かをきっかけに争いが起こる。
品の無い顔、金切り喘ぎ声、
熟れた愛撫に望まぬチールアウト
「ソナチネ」
両者ともに相手を見下し、同衾する時間に、とてつもない気まずさを感じている。
心から相手を軽蔑している。
それを隣室で盗み聞く男がいた。男はその晩に悪夢を見る。
ソナチネが男を殺しに来て、毒か薬か選ばせる。
男はこう言い遺す。
それではみなさんさようなら、明日も貴方が幸か不幸か、
御自身で選べるくらいの平和が垂れ流されていますように
「ソナチネ」
(以上)
マイナーで怪しくメロウだが耳障りの良いメロディラインや、「貴方」などの言葉遣いから、どこか椎名林檎っぽさを感じた。
この性のどうしようもねえなあ、という感じも「勝訴ストリップ」っぽい。
その中の、得体のしれない阿南組の殺し屋を指すに違いない。
くだらない、どうしようもない、男女の諍いやそれを聴く厭感。
だが、それらはソナチネが来てしまえば、明るく(メジャーに)変わるような「ご自身で選べるくらいの平和」でしかない。
それだけじゃ、まだ不安か?
「ソナチネ」
ーー不安である。
戦争も地獄も、人の心(あるいは脳)の中にあるからだ。
最後に吐き捨てるように歌われる「まだ不安か?」が、マザーファッカーに聴こえるのはきっと気のせいではないだろう。
人は皆、母を犯し、生をうける。