裸で独りぼっち

マジの日記

バズマザーズ『普通中毒』-11「ナイトクライヌドルベンダー」

「せっかちな~」と両A面(この呼び方はレコード大賞とか~レコーズくらい古いから変えたいな)の曲。

 

シングル盤よりもちょっとテンポが落ちて、

鼓笛隊っぽいスネアが味を出すようになった。

 

ギターが3つかさなってそれぞれずっと鳴っているのが

編曲の工夫を感じさせる。

 

聴き比べるとやっぱりシングル盤のほうがだいぶ丁寧に作られている。

 

再録音源については勢いがなくなったとか色々な意見もみられるけど、

これは確実に聴きやすくなった非常にいい例だと思う。

 

歌詞は「物語」というよりは、ちょっとした「情景描写」でできている。

 

男は当てなく夜更けにさまよい、ヌードルベンダーに出会う。

田舎の自販機ロータリーにあるあれだ。

300円でうまくもないヌードルがでてくる。

男は

祈るような姿勢になって幻視の幻を待ってる

「ナイトクライヌードルベンダー」

アンニュイな感想のち、飲み屋の情景を映す。

とうのたった衆道は連れの男に置き去りにされる。

秘密を話し、泣く。

頑張れを二回、負けるなを一回

心の中でつぶやいたのはいったい誰の為だった?

「ナイトクライヌードルベンダー」

ー ー頑張れはなぜ2回なのか?

・自分のためだったから?

・負けることよりも重要だから?

・負けることよりも簡単だから?

 

最後に、

「無いと暗いヌードルベンダー」という洒落を1つ。

案外的を射ているものである。

確かに中身はうまくもないが、無いと暗くて心細い。

人間のことである。

バズマザーズ『普通中毒』-⑩「豚の貯金箱」

一番ドキュメンタリーな曲。
ソリッドでエモーショナルで、2ちゃんで評判が良い。

バズマザーズ黎明期のドラムであり、その後は良きマネージャー兼賑やかしであり、『内田と打ち上げ抜け出さnight』という名曲の題材になった内田。
その内田が、バズマザーズの貯めた1,000万を持ち逃げしたというニュースが流れたのは去年のことだ

どうやら真実らしく、数日後には内田の謝罪文が公式HPにアップされた。

山田はブログで「彼に盗られたのは音楽家は立派な仕事だという誇りだ」と綴った。

その体験が、昇華されもせず音楽として形に成っている。

同じ雨に濡れたろ、
同じ苦渋を飲んだろ、
同じ歓声を聴いたろ
同じ痛みがないのはどうして?
「豚の貯金箱」

裏切りがそこにあるからだ。
バズマザーズにしては珍しくストレートな8ビートだし、リフもコードを鳴らすだけ。

だからこそ、最もドキュメンタリーな曲であり
最も時代を映している。

豚の貯金箱は、割れた。

バズマザーズ『普通中毒』-⑨「熱帯夜」

「ワイセツミー」「スキャンティースティーラー」「スカートリフティング」といったワイセツラインに近しい曲だ。

これらはおそらくバズマザーズの知名度に最も貢献したエース曲である。

 

「熱帯夜」もそのラインに違わない作品。

・クセのあるリフ

パンチラインとしてのベースライン

・早口なAメロ

・キャッチーなメロディ

・テーマ:どうしようもなく猥褻な自分について

・ギターの攻撃性

・ドラムのフレーズの細かさ

・大量の言葉遊びを重ねたような歌詞

 

こういう今までならMV作ってたような曲をアルバムの後半に持って来れるのが

地肩の強化されっぷりを示してるなあ。

 

熱帯夜の主人公は今まで以上の屑感がすごい。

脳内で、婦女暴行を行っている。

スカート捲りや下着泥棒どころではない。

汚してみたいあの娘の自尊心

夜道には御用心

本当の恐怖の前に悲鳴は出ないって話

「熱帯夜」

 

でも、実際には何もできない男である。

あらぬ妄想はさ、楽しいから止められはしない?

「熱帯夜」

 どうやら、こういった妄想や欲望がはかどるのは、夏らしい。

特に、肌がべたつく熱帯夜。

ハヌマーン時代、「君よ夏をしないで」と歌った山田が

ここまであけすけになれるのは、やはり心の童貞捨ててんなあ

という感じである。

バズマザーズ『普通中毒』-⑧「スクールカースト」

先行シングルがある。

ストレートなメッセージソング。

サビと、歌詞とタイトルはそちら側。

イントロは攻撃的で、初聴は不意を突かれた。

 

今回はシングルバージョンに比べてイントロが長い。

ミドルバラードである吃音症からの自然な導入を考えてだろうか。

 

スクールカーストをテーマとした局なんかめちゃくちゃありそうだけど、

スクールカーストと歌詞に出てくる曲は思えばこれ以外知らないな。

スクールカーストは、やはり比較的新しい概念なんだな。

 

歌詞はかなりストレートであまり考察する余地がない。

前々作アルバムの「HEY BOY GOOD LUCK」みたいな感じだね。

 

あのアルバムはバズマザーズとしてセルフタイトルであり、

ある種童貞を捨てた作品だったのかなと思う。

 

最後の最後、シークレットでは普段世話になっている人やファンの名前・あだ名が列挙される。

ダサい。身内ネタ。囲い込み。ダサイクル。

いくらでも批判する言葉は思い浮かぶし、実際されていたが、

そういうことが確実に人を救うし、それでいいんだよ。

そういうモードに入るのが大人になるということだ。

 

だから誰にも奨めなくて良いよ

お前が百万回聴いてくれたらそれで良いよ

スクールカースト

 

バズマザーズ『普通中毒』-⑦「吃音症」

一番ハヌマーンぽい。

昔からの山田亮一のコード進行とか感覚が出てる曲に感じる。

 

ro69.jp

こちらで、パクチーの話が出ている。

俺、吉田拓郎ボブ・ディランが大好きで、歌謡曲も大好きやし、ルーツはそこにあるけどやっぱパクチーはかけとかんとあかんやんかっていうとこがあって。バズマザーズがやる歌モノやから。でもそれをやめてん。もうパクチー入れんでええやんって

「「俺の曲は、俺なんかよりも尊いものやねん──バズマザーズ、4年ぶりのアルバム『普通中毒』と成長を語る」 

 それでいうと、この曲はパクチー入ってへんな。

とてもとても分かりやすい山田の私小説な歌詞。

別にソロで弾き語ってもいいだろう。

そういう意味では、何か物足りない曲かもしれない。

少なくともこのアルバム全曲の中では一番影が薄い。

でも、

はい、んー、

あー、また言葉に詰まる。

伝えたい言葉など詰まるほどないのに

 最後に歌い上げられるこの最もメロディアスなフレーズは、

ギターと歌のみで歌あげられるからこそ、バンドでやっていた

ということが際立ち、そこにおいてのみバンドでやる意味がはっきりと逆説的に表れているように思う。

バズマザーズ『普通中毒』-⑥「傑作のジョーク」

アルバムリードトラック二曲目。

テーマは人生について?

 

ぐるぐる回転木馬が回っている

「傑作のジョーク」

人生とは回るものだと感性の尖った一部の者は関知するらしい。

中島みゆきの「時代」しかり、

銀杏BOYSの「人間」しかり。

 

だけど、この曲はその輪に入れない人間の歌だ。

アイリッシュフルート?的なキーボードの音色が郷愁を誘う。

最後に傑作のジョークを一つ。

人生に行き詰まったある男が

精神科に救済を求めて言う。

「何をしても笑えやしないのです」

「傑作のジョーク」

有名なジョークだ。

ベタで陳腐で小咄だ。

だけど、傑作である。

 

永遠の救いはない。

我々は痒いところにムヒを塗ったような一瞬の刹那救い救われた気分になる。

その連なりを遠くから眺める僕。

淋しいが輝きを眺めるのもまた耀きである。

 

 

 

バズマザーズ『普通中毒』-⑤「ソナチネ」

この曲は、このアルバムでも屈指の作品だと思っている。

展開がわかりやすく、複雑で予想しがたいのが良いよね。

全編マイナーで怪しくドープな曲調なのだが、最後のサビだけ開けたメジャーに変わる。

 

描かれるのは人間の無理解と男女の諍い。

1晩(番)は男目線で、もう1晩(番)は女の目線で

最後はその二人の情事と痴話喧嘩を隣室で盗み聞きする男の目線で語られる。

 

歌詞の流れ

男は女を枕に誘い、2人は一戦交えたが、何かをきっかけに争いが起こる。

品の無い顔、金切り喘ぎ声、

熟れた愛撫に望まぬチールアウト

ソナチネ」 

両者ともに相手を見下し、同衾する時間に、とてつもない気まずさを感じている。

心から相手を軽蔑している。

それを隣室で盗み聞く男がいた。男はその晩に悪夢を見る。

ソナチネが男を殺しに来て、毒か薬か選ばせる。

男はこう言い遺す。

それではみなさんさようなら、明日も貴方が幸か不幸か、

御自身で選べるくらいの平和が垂れ流されていますように

ソナチネ」 

 (以上)

 

マイナーで怪しくメロウだが耳障りの良いメロディラインや、「貴方」などの言葉遣いから、どこか椎名林檎っぽさを感じた。

この性のどうしようもねえなあ、という感じも「勝訴ストリップ」っぽい。

 

ソナチネは、北野ビートたけしのカルト映画のことだろう。

その中の、得体のしれない阿南組の殺し屋を指すに違いない。

 

くだらない、どうしようもない、男女の諍いやそれを聴く厭感。

だが、それらはソナチネが来てしまえば、明るく(メジャーに)変わるような「ご自身で選べるくらいの平和」でしかない。

 

それだけじゃ、まだ不安か?

ソナチネ」 

ーー不安である。

戦争も地獄も、人の心(あるいは脳)の中にあるからだ。 

 

最後に吐き捨てるように歌われる「まだ不安か?」が、マザーファッカーに聴こえるのはきっと気のせいではないだろう。

人は皆、母を犯し、生をうける。