『ギフテッド』山田宗樹 小ぶりな二十世紀少年 72点
『百年法』という傑作小説がある。
その山田宗樹が『百年法』の次に著した作品がこの『ギフテッド』である。
結論から言うと、小ぶりな二十世紀少年みたいな話だった。
食べ応えがやや足りない代わりに食べやすい。
ストーリー
小学生、達川颯斗全国一斉でなされた法定検査を境にクラスで敬遠されることとなった。彼が、”ギフテッド”だと判明したからだ。ギフテッドは、体内に「機能性腫瘍」と名付けられた新種の臓器を持つ。その意味は分からないが、何か人類を進化へ導くものなのではないかと、国内外で注目が集められていた。
クラスで1人颯斗を気に掛ける佐藤あずさを残し、ギフテッドだけの学校に移った颯斗。そこでは、村山直美、坂井タケル、上岡和人、辰巳龍、向日伸などのギフテッド仲間ができることになった。そして、村山直美――村やんはあることをきっかけに超能力に開花。大人となってから、ギフテッドの教団を作り、ひっそりと活動をしていた。教師となった颯斗、医師となった坂井タケルらは久々に村やんを訪問。その数週間後、教団に反感を持ち、襲撃した若者が超能力で殺害された姿で発見される。それをきっかけに世間のギフテッドに対する恐れと反感に火が付き、どんどん燃え広がってゆくのだった――。
雑感
俺は『二十世紀少年』をちゃんと読んでいない。
それなのに悪口を言うのは気が引けるが、風呂敷をぶん投げた作品だということは知っている。同じ浦沢直樹の作品なら『Monster』は全巻読破した。あれ以上のぶん投げということは、俺も最終巻を読んだとたん本をぶん投げることになるだろう。
だから、読まない。
この『ギフテッド』には、その『二十世紀少年』のにおいを感じた。
まず、大まかなストーリーラインが。
①少年期の仲間が集まって世界の危機を解決する
②敵はその仲間のうちの1人。得体のしれない集団で世界を塗り替えようとする
③主人公はある種特別な位置にあり、ほかの主要人物とは一定の距離を置きながらも一目置かれている(敵も含めて)
とはいえ、違った部分もたくさんある。
この物語における「ともだち」の正体は隠されてはいないし、純粋な敵でもない。本当の敵は異物に対する差別そのものだ。
しかし、何よりも風呂敷を広げつつ興味を持続させていく読者の面白がらせ方が似ているかなとおもった。個々のエピソードがあまり有機的につながらない代わりに魅力的だ。
例えば村やんら教団による22人の殺害事件とか、主人公颯斗のパートと彼を思う佐藤あずさの2つの視点が交差する1章の構成とか、颯斗の教え子夏希が収容された病院で大量の人間がギフテッドにより殺害される事件が起きるとか。
それぞれの殺人は犯人が違う。なぜなら、すべて悪意ではなく感情の発露によって偶然起きてしまったような危機的状況だからだ。
だから、明確な敵と認定できる人物は生まれず、ここのクリフハンガーはばらばらとなる。
これは極めて週刊漫画的な快楽であって、伏線とか心情描写が重要な小説には不向きだ。だから、ちょっと食い足りない。
とはいえ、そこは山田宗樹なので、中心部分(差別)はぶれないため、話がどっちらけにはならない。
だから、小ぶりな二十世紀少年だと俺は思ったのである。
Xメンとの違い
池上冬樹による解説でも触れられているが、超能力者を被差別者として描く作品はたくさんある。その中でも世界的に有名なのはXメンだろう。
ただ、Xメンはあくまでカートゥーンとして超能力によるバトルの魅力に重点が置かれているが、ギフテッドの超能力はあくまで超越した被差別者という記号の為の道具でしかない。
だから、人によって特性とか違いはなく皆一様にスプーン曲げやテレポート、人体破壊やテレキネシスなどの能力が使えるだけだ。その範囲も定められておらず、正直かなりやりたい放題できるように見える。
それでもこの話が馬鹿の考えたガバガバ超能力話に見えないのは、超能力が勝敗を決定する力として用いられていないからだ。
あくまで人を動かす力「政治」こそが至上のパワーとして設定されているのである。もちろんそのためにギフテッド側が人格者ばかりでややご都合のにおいがしなくもないが。
『百年法』でも百年法をめぐる政治抗争こそが物語の推進力となっていたので、ここが山田宗樹の興味の中心の1つであり、得意分野なのである。
『トレインスポッティング』 これが青春なのか? 70点
※ネタバレがあります
これが青春なのか?
ドラッグやって、犯罪やって、親に甘やかされて。
そう思ったので30点引いた。
だけれど、70点残った。その原因は2つ。たったの2つなのだ。
ストーリー
ヘロイン中毒のレントンは不況に喘ぐスコットランドのエディンバラでヤク中仲間と怠惰な生活を送っていた。人のいいスパッド、モテモテでジャンキーのシック・ボーイ、アル中で喧嘩中毒のベグビーらと悲惨な現実を前にしてもドラッグやナンパ、軽犯罪やクラビングを繰り返す毎日。そうこうするうちスパッドが受刑者となりレントンは何度目かのドラッグ断ちを決意。必死の麻薬治療を受けた彼は、ひと旗揚げようとロンドンで仕事を見つけ真っ当な生活を目指す。しかし、未だ更生しないベグビーらがそんな彼を追いかけてきた。
wikipediaより引用
良い点①絵作りと音楽
方々でいわれていることだが、前衛性と大衆性が重なり合った画面作りがすごい。
例えば以下のような。
・有名な「世界一汚いトイレ」に入り込むシーン
・ヘロインの幻覚作用でカーペットに沈み込むシーン
・4人がミルクバーでトイレを仮に来た男を付け狙い金を奪うシーン
・禁断症状で部屋に赤ン坊の幻覚や友人の幻覚が現れるシーン
・終盤のカメラをあえて90度傾けたシーン
音楽はイギーポップの『Lust for life』に始まりBlur、New Orderなど。
ブリットポップは好きだけど別に詳しくないから何も言えない。
ただ、ちょっと想起した曲があるので後述する。
良い点②ウシナワレヌフレッシュさ
この曲を聴いてほしい。
BlurのTracy Jacks(『parklife』収録)だ。
トレィシー・ジャックスという40代の真面目な男が日々の閉塞感に狂っていき、ついには自宅をブルドーザーでつぶすまでになってしまう歌。
日に日に彼は自覚していった
彼はもう行き過ぎだって自覚してた
僕はこのまま普通でいたい
でも、そんなのただの買い被り
ちょっと主人公レントンの心境とかぶらないだろうか。
なんかこの曲、中毒性があって俺は好きだ。
そして、この中毒性は時代が変わっても古びないタイプだと思う。
かっこいいとか美しいはすぐに古くなる。
だけど、中毒性は古びない。だから、昔の漫画でもとにかく妙なシーンはいまだにインターネットでコラ画像等で流布しているではないか。
この映画はヘロイン中毒の主人公たちのトリップ感や鈍くなった感覚をそのまま描くことに腐心して作られている。
スプーンに乗せられたヘロインを水で溶かして注射針に入れるシーンが何度も出てくる。それを打ったスパッドはゆっくりと地面に頭を打ち付ける。クッションにギリギリ届かない場所に。それでも特に痛がるそぶりはなく、完全に薬で気持ちよくなっているのがわかる。
それは、古びないのだ。
所感
最初、俺はこれが1時間くらいで終わる映画かと思った(実際は1時間33分)
そのくらい話にとりとめがないし、主人公に目的がない。
正に『Lust for life』(人生の無駄)の話だからだ。
ハリウッド式脚本術では主人公に友情なり、愛情なり、金なり、欠けた部分を作り、基本的にはその穴埋めを物語の目的(=推進力)とするそうだが、主人公レントンらは一見して欠けたとこだらけだ。
学歴もないし、仕事もないし、ドラッグ中毒だし、初めの方はレントンには女もいない。
でも、それは物語の推進力にはならない。
レントンはずっと悪友に振り回されて意思がないだけだし、それはそれほど咎められもせず、赤ん坊が死にさえもするのに警察に気づかれることはないからだ。
ここら辺の主人公たちへのセカイの甘さがどうにも気にくわないという人がYahoo!映画で辛辣な感想を書くのだと思う。
レントンはなんどドラッグを辞めようとしても辞められない。辞めようとするといってもちょっと決意してはそのご褒美にとヘロインを注射するくらいの本気度だ。
僕はこのまま普通でいたい
でも、そんなのただの買い被り
彼はマトモでいたいと願う時もあるが、そんなのは周りの人間や不況が許さないと最初からあきらめてしまっているようである。
そんな甘ったれたスノッブな気持ちはある種の人間の金銭を揺さぶる。
そうなのよ、俺もあきらめちゃってるし、くずなのよ。
キャッチコピーは「未来を選べ」だが、この映画の魅力は「未来を選びかねて人生を無駄にする感覚」のトレースっぷりにある。
だからキャッチや外枠が蛍光に光るオレンジでも、レントン・スパッド、シックボーイ・ベグビー・ダイアンは灰色なのだ。
R-1ぐらんぷり 2018 感想 ―個別のネタについて(Bブロック)
Bブロック1組目: 河邑ミク
ネタ:「レンタル彼女」
キャッチコピー:大阪ナリキリ娘
…漫画雑誌で言うと、ジャンプが吉本で人力舎がチャンピオン。
だとすると、松竹はサンデーだ。
かつてはジャンプと肩を並べたが、今は地味。。
そんなサンデー感満載のコントだった。でもサンデーの面白いやつ。『だがしかし』的な。
『THE W』では準決勝11位とギリギリ決勝に上がれずリポーターをしていた彼女。
全体の雑感はというと、なんかテレ東深夜のコント番組っぽいネタだなと思った。
それには、陽の意味と陰の意味がある。
陽の意味は、演技力ピカイチなので、映像的なコントだという意味。声音・首の角度、動き(彼女のときは横の動き・店員のときは縦の動き)など、すべてに神経が行き届いている。
陰の意味は、小さく収まってしまっているという意味。超ぶりっ子な彼女とビジネスライクなレンタル彼女の落差で笑わせているという以上のものはなかった。最初の種明かしがピークになってしまっている。
加えて、嫌な女というものに対する捉え方が雑な点がおしい。
ビジネスライクな変わり身と、金に汚いみたいなキャラがぶつかり合って、不協和音を発している。そこは目先の笑いを拾おうとせずに台本を練った方が良かったのではないか。
とはいえ、かわいいし売れそう。
結果:4位(0票)
Bブロック2組目: チョコレートプラネット長田
ネタ:「最新のジェットコースター」
キャッチコピー:完全自作自演ランド
…見返して一番楽しめた。
「く~最新のジェットコースター楽しみだな。もう15時間待ってるもんな」
つかみが早い。
「ショルダーバーが外れる」「ディメイティッド」「アントラブルヘルメット」など謎ワードのつるべ打ちで笑いを細かく稼ぐスタイル。
ただ、天丼するならもっとショルダーバーが外れるさまは滑稽にしても良かった。
ペガサスの羽が開かれるとか、そういう感じ。
ワードもありそうでない絶妙なラインを狙ったのだと思うが、、後半はもう少し飛躍しても良かったかも。
千鳥が漫才で入れてくるような奇妙なワードのセンスが欲しかった。
KOC第一回大会で披露した「ギリシャ風の世界」のコントといい、ありそうでなさそうな言葉の世界観でもっていくコントをチョコプラは1の武器としているが、どこか綺麗に世界を閉じてしまい、爆発力に欠けるきらいがあると思う。
そうやって世界をぶっ壊すことを迷走と呼ぶのだとしても、後一破壊が欲しい。
結果:2位(ヒロミ2票、陣内1票、久本雅美1票、関根勤2票、桂文枝2票、お茶の間2票)
Bブロック3組目: ゆりやんレトリィバァ
ネタ:「昭和の日本の映画に出てきそうな女優」
キャッチコピー:絶好調ぽっちゃりクイーン
…ゆりやんは格好悪い滑り方を避けている。それは、芸人としての危機察知能力が高すぎるからだと思う。
百合やんのネタは当りはずれが激しいといわれる。例えばこの「昭和の日本の映画に出てきそうな女優」(ショートver)や「海外の女優」はかなり評判が高い。だが、今回の決勝で披露したネタや「野菜中心の生活」はようわからんといわれる。個人的には、「ハリーポッター」もようわからん。
前半の特徴は絶妙な目の付け所による形態模写であり、後半の特徴は他では見られないシュールな世界観だ。要するに、目の付け所が鋭い(ほかと違う)という点は同じなのだが、そこから大衆に寄せるのか、より自分の世界にこもるのかで大きく話は変わる。
この1本目は、女優1本で戦い、木登り・だんだん崩れていく言葉・先生はトイレに行くだけという3点のみに別の笑いどころがある。女優の魅力をなるたけ殺さないための戦い方だ。だから、まあ、女優の面白さだけで審査員は審査し、その独創性と演技力の一転においてのみ長田と並んでいたたということだろう。
結果:1位(ヒロミ1票、陣内2票、久本雅美2票、関根勤1票、桂文枝1票、お茶の間3票)
ネタ:「せいやのなんなんじゃそら」
キャッチコピー:なし(復活ステージ2位のため)
…途中で物まねしてた桑田佳祐の歌はこちらですね。
タバコ・ロードにセクシーなばあちゃん
よくわからないことをやる、という芸ながら、ところどころにこれはそれ込みでたのしんでもらうものですよ~というエクスキューズがある親切設計。元教師を目指していた堅実な性質が現れている。
「みなさ~ん、僕の3分間は考えないでください。感じてください」
「意味わからん嘘つきました」
「ドーラン塗ってる意味わからないですよね、僕もなんです」
この芸で一番秀逸なのは店の店員呼び出すとこにあるチーンを楽器として使ったところかもしれない。簡単にネタのつながりを切ることができる(途中でなってしまってグダグダになる芸も混みとしても)。
結果:3位(お茶の間1票)
『モンスター上司』 モンスターVSモンスター 70点
※ネタバレがあります
Amazon primeにて視聴。
当然ながら、上司にムカつくことがあったからだ。
「ちくしょう! こっちの気も知らずにのんきなこと言いやがって!」
俺の指は見る予定だった『パンズ・ラビリンス』を拒否し、ジェイソン・ベイトマンが頭を抱えるジャケットをプッシュした。
70点
ストーリー
昇進を目の前に控えたニック、恋人と婚約したばかりのデール、経理として会社の屋台骨を支えるカート。3人は、それぞれHorrible Boss――ひどい上司――に頭を悩ませていた。
ニックの上司、ハーケンはパワハラ上司。出世を餌に、残業を押し付け、2分の遅刻をネチネチ咎めたてる。
デールの上司、ジュリアはセクハラ歯科医。権力をたてにデールを誘惑し、あまつさえレイプまで……。
カートの上司、ペリットはバカハラ息子。会社でクスリをやり、女を連れて遊びまわる。
3人は不満を抱えつつも耐えていたが、それぞれ致命的な出来事により限界を迎え、上司の殺害を計画する……。
所感―銀幕のモンスターども
こういう映画にそれほど期待をかける人はいないと思う。
まあ、70点くらいだろうな。
逆に面白すぎても困る。スカッとサクッと笑わせてくれよ。
その要望に、この映画はほぼ完ぺきに答えていた。
ほぼだが。
また、上司役の豪華俳優陣の怪演には口コミサイトでも多くの勝算が寄せられていた。
とくにパワハラ上司役のケヴィン・スペイシーは、ねえ。
メイキングでは人の好さそうな感じでおどけてたけど、マジモンやないか……。
ペリット役のコリン・ファレルも麻薬経験者だったし、ビデオ流出事件とかあったし。
上司で現実にモンスター感ないのは、ジェニファー・アニストンだけ?
良かったところ①くだらないところ
良かったところはココに集約される。なんとなーく良いテンポで見れる。
逆も前編適度にまぶされていて、爆笑はなくとも飽きるところがない。
特に好きだったのは殺し屋を雇ったと思ったら、特殊性癖ゲイのエスコート・サービスだったところ。
「トイレあるか? せっかく溜めてきたのに……」
のくだりはくすりとした。
良かったところ②セクハラ女上司という設定
こういう映画にはエロが不可分のものである。
例えば土曜の深夜にはエロ番組が不可欠なように。
『夜美女』とか『ギルガメッシュNight』とかね。今だと『佳代子の部屋』か。
ジェニファー・アニストン演じるセックス中毒のセクハラ上司というのは気の利いたエロを随所にまぶせる設定でよかった。
女性によるセクハラというのは、存外現代的なテーマではないか。
セクハラは男だけのものではないのだ。
ほかの仲間がうらやましがっているのにデールは殺害を考えるほど嫌がっているというのも現実にセクハラを受けている男性もこうなのかなあ……としみじみ思ってしまった。
どやねんなところ①主人公チームもたいがいモンスター
主人公チームの3人。一応ニックはそこそこマトモだが、残りの2人はそうとはいいがたい。
デールは割かし善良なものの、侵入先でクスリを事故的にやってからはハイになって運転を妨害したり車をけりまくったりするし。カールは完全に上司になったらセクハラをするタマだ。エロキャラとはいえ、そこらじゅうで女に手を出し、女に会うためにサインをわざと忘れるような人間が主人公=正義側でいいのか?
平気で住居侵入はするし、物は盗むし。
主人公チームに正義がないので復讐が成っても爽快感がない。
『モンスター上司』タイトル通りのコメディ。なんだけど、主人公組(部下)も同型のモンスターだからなんかどっちもどっちやんけ感はすごい。そのせいで爽快感が薄い。小品・佳作としては楽しめた。https://t.co/EfFrNotD14
— 遠縁の親戚 (@miya080800) 2018年3月12日
そういう風刺? とも思ったがやはりそういうわけではなく、ギャグを詰め込み、突飛な物語を推進するには主人公チームも相応の馬鹿でなければなかったのだろう。
でもそれって脚本が安易な方向に逃げたってことだよなあ。
まとめ――まあ、あり
月曜の夜に動画ストリーミングでみるのにぴったりの作品でした。
まあ、憂さは晴れたし。
ちなみに吹き替えで見たんですが、この作品はむしろ吹替がいいと思います。
特にデールを演じた高木渉(コナンの元太の人)はあってたなー。
R-1ぐらんぷり 2018 感想 ―個別のネタについて(Aブロック)
Aブロック1組目: ルシファー吉岡
ネタ:「ムスコの性癖」
キャッチコピー:円熟のコント男優
…3年連続決勝進出。コメントはナイツ。なぜか「ナベプロなのに下ネタが許される異色の芸人」というイメージだったが、マセキだったのか。
…泥くせえ。
今回、あまり点数が伸びず、トップ出番のあおりをもろに受けることとなっていた。
しかし、1評は惜しいというくらいやはり技術は秀逸
「あの~、そのままTV見ながらでいいんだけど、お父さんちょっと気になることがあって……」
この導入、
①話し手がお父さんで相手が息子だということ
②なにやら息子がやらかしたということ
③何気ない日常の1コマを描いたコントだということ
以上の3つ(状況設定・登場人物・関係性)が開始5秒でわかる完璧な導入なのだ。
結果:4位(ヒロミ1)
Aブロック2組目: カニササレアヤコ
ネタ:「雅な気持ちにさせるものまね・ショートコント」
キャッチコピー:雅なるダークホース
…普段はロボットの研究をしている会社員という濱田祐太朗がいなければ確実にただ1人の台風の目だったであろうフリー芸人さん。事務所はまだ決まっていないらしい。かわいくもなく、ぶさいくでもなく、昨今の女芸人でいうと『おもしろ荘』や『新しい波24』に出ていた吉住っぽい。と、こんな風に見た目の評論から入ってしまうのが女芸人をフラットに見れない俺の偏見を表している。
ネタは平安時代風の格好で笙を鳴らしつつ、あるある・ショートコントを詰め込むというもの。
Pepper「決勝なんてすごいじゃないですか、絶対優勝してくださいね」
カニササレ「頑張ります!」
あおりVのこのくだりがくだらなくて嫌いだった。
そういえば『AI-TV』の「メンバー入れ替えオーディション」でもPepperがしゃべる店舗遅くて滑っていた。
Pepperがウケるのは今田耕司の話に出てきたときだけである。
冒頭で見限ってしまったからか、俺はネタも正直あんまりだった。
演技力とか表現力がないのを突飛な世界観でごまかしてないか?と。
世界観を作りこみ過ぎた結果、狭すぎる世界ができていた。
ようは「なんやそれ、わからんわw」ですよね。あえてオタク的ディスコミュニケーションを演じる笑いというか。そういう点ではBブロックでチョコレートプラネット長田が行ったジェットコースターのネタに近いのかもしれない。
ただ、そこでツッコミ(とまどい)ではなくボケ(ディスコミュニケーション)を演じているので、こっちのツッコミに面白さをゆだねてしまっているというか。
なんだかなあ。
でもお笑いファンの間ではその異物感をもって評価する向きもあって、俺はそれは客席向いてないよな、と思うので反対です。
変ホ調長よりダメでした。
結果:3位(ヒロミ1 桂文枝1 お茶の間1)
Aブロック3組目: おいでやす小田
ネタ:「ホテルマン」
キャッチコピー:はじけろ! 怒りのボルテージ
…昨年までの自分に負けた。セットが無駄に豪華なのもらしくないというか、テーブルがあれば表現できるだけの力がおいでやすにはあるのだからその方が良かったのではないか?
「わかるやろーー! いちいちかけてくんな、忙しい! 赤青、日本中探して一個でも逆のとこあんのか!」
これが第一声だったことで、「豊田真由子a.k.a.違うだろー!議員の音声ってめっちゃ面白いよなあ…」ていうところから発想が出たのかなと想像が刺激された。
最初から「アホな客VSホテルマン」という構図がわかり切ってるからしり上がりにならないんだよなあ。
なんなら机をバンバンたたく流れから急にリズムネタになるくらいの意外性が欲しかった。
とはいえ、表現力が高いのは言うまでもなく、さすがプロではある。
そういえば一応霜降り明星だけでなく、「おいでやすレトリィバア」もコンビで決勝進出といえるよな。
Aブロック4組目: おぐ
ネタ:「ハゲの名は~女子高生サイド~」
キャッチコピー:輝く!うすい彗星
SMAの刺客、ロビンフットおぐ。曲を流すことで構造(おじさんと女子高生が入れ替わった)が全部説明できちゃうんだから、『君の名は』はやっぱ近年まれにみる大ヒットコンテンツで、ラッドは爆売れアーティストだなあ。
ハゲ自虐をコント内ディスで成立させ、客の同情的共感を得るという手法。
ただ、自虐がちょっと雑過ぎたんじゃないの~という不満はある。
「ハゲなのに、一階に住んでない!」
「(ハゲの横通るとき)一応、財布も押さえてた」
ハゲに貧乏イメージとか盗人イメージあるかね? いまや孫正義とかトレンディエンジェル斉藤さんがハゲ界の有名人である以上、それは成立しないんじゃないの? 雑では?
「マジ卍」とかもいかにもおじさんが考えたJKっぽくて 使ってほしくなかった。いや、ほんとにJKは使うかもしれないけど、そこ使っとこうというのは安易だなあと。なんかお人よしそうなJKだし、おじさん差別とか卍発言がキャラと合わないのよね~。
後から出てきた見た目もそういう軍に属する感じゃなかったし。。
とはいえ、圧倒的にポップだったから勝ち上がりは納得です。
結果:1位(ヒロミ2 久本雅美1 陣内智則3 お茶の間3 関根勤2)
→勝ち上がり
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というわけで、Aブロックは個人的には全然笑いませんでした。
面白いところもたくさんあったけど日本で12本の指に入るかというと、漫才や複数人のコントに対抗できるかというと、それはない、と断言できます。
つぎのBブロックからは、やや盛り上がりを見せます。
Aブロック個人的順位
マイナビラフターナイト感想1~2月分
『マイナビラフターナイト 20180126』サツキと岡野陽一が面白かった。岡野陽一は「大阪のおばちゃんが明るい理由に裏がある」というネタ。巨匠時代にKOCで披露した『鮨屋』といい、こういう設定が好きだな。この都会的なセンスとキャラがミスマッチで信じられん。https://t.co/vHdnhv9JIa
— 遠縁の親戚 (@miya080800) 2018年1月27日
『マイナビラフターナイト』「いんや~、街コンの規模!!」東京ホテイソンが良かった。合コンというシンプルな設定が派手なボケツッコミとマッチしていた。となると『おもしろ荘』での滝沢カレンの指摘(システムが複雑だから設定はわかりやすく)は存外的確だったんだなあhttps://t.co/umXboB1iGY
— 遠縁の親戚 (@miya080800) 2018年2月12日
『マイナビラフターナイト 20180216』今回はキズナが圧倒的に良かった。未来に行く設定で思いつきそうで思いつかなそうな切り口! 圧倒的に無名ななかオンエアされるだけある、と思ったら元ザンゼンジの人なのか(イシクラノオノは不勉強につき知らなかった)。https://t.co/a3LnJjxYkC
— 遠縁の親戚 (@miya080800) 2018年2月18日
『マイナビラフターナイト 20180223』ミヤシタガクに一票。マドンナはブラマヨすぎる。わらふぢはすでに見た。錦鯉はいつものやつ。どんぐりパワーズはすでに見た。ということで、学校あるあるを詰め込んだ皮肉ネタのミヤシタガクが心の一位。でも初見ならわらふぢかも。https://t.co/cte2QiqtF0
— 遠縁の親戚 (@miya080800) 2018年2月25日
R-1ぐらんぷり 2018 感想 ひいきも王道ということ
2018年3月6日、R-1ぐらんぷり2018が開催され、ほぼ盲目の漫談家「濱田祐太朗」が優勝した。
その結果に対してのネット(主にYahoo! ニュース←)で見たかぎりの顕著な反応は以下の通り。
〇大会全体について
→レベルが低い、つまらん:7割
今年はレベルが高かった:3割
〇濱田祐太朗の優勝について
→面白かった(決勝のレベルが低かったという条件付きで):8割
つまらん(逆差別で下駄はかされてるor吉本パワー):2割
〇ゆりやんレトリィバアについて
→つまらん、面白いと思ったことない:7割
よかった:3割
〇紺野ぶるまが画面が見えない濱田祐太朗に点数を教えるなどフォローを行った件について
→紺野ぶるまの好感度が上がった:9.9割
ゆりやんがフォローしてなかったので相対的に好感度が落ちた:2割
〇チョコレートプラネット長田について
→ゆりやんより面白かった:5割
→意味わからんけど面白かった:5割
意味わからんくてつまらんかった:5割
〇桂文枝について
→好感度狙いで濱田祐太朗にべたべたして気持ち悪い:4割
不倫のイメージがあり、そもそも見たくない:1割
私の意見
〇大会全体について
世の中の大半が思っているのと同じく、俺もM-1>キングオブコント>>>>>>>>>>>>>>>超えられない壁>R-1>>>THE Wと思っている。
そして、今回のR-1は、ここ最近より決してレベルが高くはなかった。
つまり、宮迫が発言した通り例年以上に今年のレベルが高いというのは嘘である。
アキラ100%が優勝した昨年、ハリウッドザコシショウが優勝した一昨年の方が明らかにレベルは高かっただろう。
最終決戦の石出奈々子(ジブリパロディコント)の完成度や、小島よしおのキャッチ―差を裸やキチ●イが超えていく痛快さは薄れてしまった。
とはいえ、コラムニストの能町みねこがTwitterでつぶやいていたように「邪道かつ王道こそ最強というようなR-1」の型の片りんは今年も残った。だから、単体の面白さはギリギリ赤点くらいだが、シリーズの間としては及第点くらいの出来だったのではないかなと思う。
R-1ってなんかこう優勝してもどうにもこうにも…というイメージがあったけど、ここ3年の、ザコシショウ→アキラ100%→濱田祐太郎の流れって、やっとR-1らしきなんらかの特別性が生まれつつあるんじゃないかなと思いました。超王道かつ超邪道、みたいな
— 春待ち能町みね子 (@nmcmnc) 2018年3月6日
〇濱田祐太朗の優勝について
正直下駄をはかせられていた面はあると思う。
本人も申告していたように噛んでいたし、話の内容は想像の範疇に収まる程度の視覚障碍者に対する無神経な言葉あるあるであった。
現代の最新の漫談スタイルがR-1でもお笑いファンの注目を集めていた街裏ぴんくだとしたら、あくまでも日常の範囲を脱し切れていない濱田のネタは化石のようだ。
しかし、下駄も武器なのである。
濱田のスタイルとして盲目が唯一にして最強の武器であり、それはほかの者にはほぼ持ちえないという点で、破壊力抜群だったのだ。
オーソドックスな漫談欲が高まっているが、成熟し切ったお笑いの評価ステージに普通はそれは上がりえない。そこに、人自体が強烈な個性を持っている濱田が切り込んだ。
まさに王道かつ邪道。
だから、何が言いたいかというと、優勝は妥当だった。下駄も含めて才能だった。
〇ゆりやんレトリィバアについて
ゆりやんは友近に次ぐ天才。お笑いファンはこういわれたらよっぽどのアンチでも首を縦に振るのではないだろうか。
さて、ゆりやんは2本目を捨てていたのか?
2本目のネタ(やめてくださいというブリッジであるある・シュール・毒がまぜこぜになった一言ネタを言い、急に踊る)はめちゃめちゃ評判が悪い。
しかし、こうして書き起こすと手数のバリエーションが多いネタである。1個1個のパンチは弱いが、それぞれ内容が違う。
あるある
→冬になったら夜早くなったなあっていうのやめてください
シュール
→おしっこをもらさないでください
毒
→私のこと「かわいい」って上から言うやつ、私よりブスやのにいうのやめてください
昭和の女優という完成度の高いあるあるの破壊力の天丼でとにかく笑いをもぎ取り、世間の評価も2本目よりは上々な1本目とは好対照である。
これはつまり、お笑い偏差値が高すぎていろんな笑いの浅いパッチワークがなまじできるもんだから、そのお笑い脳の程よい刺激にはまってしまったんだろうなあと思う。
いろんなお笑いができる自分の技術におぼれたのだ。
その沼は、溺れるのが気持ちよくもあるし、ゆりやんは昨年女芸人No.1決定戦『THE W』で優勝しているからここでの優勝は無理に狙いに行く必要はないし。
慢心ともいえるが、それでもゆりやんのお笑い生活にはあまり支障をきたす負けではないと思う。
〇紺野ぶるまが画面が見えない濱田祐太朗に点数を教えるなどフォローを行った件について
確かに偉いっちゃあ偉いけど誰でもやることでは?
ぶるまがええ奴というより気遣いをする能力があったということだと思う。
ぶるまは昨年のR-1に出場する少し前からゴッドタンなどに出演していたし、abemaのスピードワゴンの『The Night』ではアシスタント業務もしていたし、単純にアシスタント能力が高いのだ。
そういう点を評価するのが粋で会って、あの程度の行動から好感度をめちゃめちゃ高めるような反応はどうかと思う。そんな奴はどうせ島田紳助の話芸は無視して、その後の評価でアンチになっているようなやつである。
〇チョコレートプラネット長田について
確かに面白かった。でもゆりやんの1本目も良かった。だから別に結果に異論はない。
ゆりやんの2本目に近いリミックスネタ。
ただ、ゆりやんが技術でやっているのに対し、こちらはせいやがポテンシャルのみでできるネタを詰め込んだという感じである。
特に落ち前の「フック青山の~」はわけわからんかったが、狭い小屋では信じられないほど受けてるのが目に浮かぶ。
それは大舞台では通用しないことをせいやもしっているはずだが、それでもそれ以外撮る手段はなかったのだ。
〇桂文枝について
確かにささやきはちょっと気持ち悪かったけど単に喧騒の中で声が伝わりずらいと思い、耳元で「トロフィ渡すで」とでも言ったのではないか。
だとしたらそれほど批判される謂れもないだろう。
別に彼の不倫に特段の興味はない。
ここのネタについてはまたみていきたい。