エビ差別SFアクション『第9地区』 80点 ネタバレ感想
なんかめっちゃ面白いという評判を聞いたり見たりして期待をもって視聴した。
しかし、AmazonPrimeの小画面だからか俺の趣味に合わないのか思ったほどハマりはせず。
つまらなくはないんだけど、これを評価している人たちのいうほど「深み」のある話なのかというと首をかしげてしまう。
しまうま。
あらすじ
突如宇宙船が飛来した地球。そこから降りてきたのは、エビのような醜悪な容姿とキャットフードが好物という悪食のエイリアンだった。人間を吹き飛ばせるほどの強力な武器を持ちながら暴れることもせずダラダラと暮らす宇宙難民たち。人類は彼らが暮らす「第9地区」から用意した「第10地区」への転居を命じる。その通告担当者であるヴィカスは第9地区を巡回する中で不用意に黒い液体によって、体がだんだんエビ(エイリアン)に変化していってしまうことに……。ひそかに宇宙船を開発していたエビのクリストファーとともに黒い液体、そして自分の肉体を取り戻そうとする。
ヴィカスが頭が悪くてイライラする人間だということを「だから良い」ととらえるか「いらつくなあ」ととらえるかでこの映画の評価は大きく変わるのではないか。
どうやら俺は結構心が狭いらしい。
後半、なけなしの勇気を発揮したヴィカスを見ても「そりゃそうするしかないからね」と冷ややかな目で見ることしかできなかった。
一度ヴィカスはクリストファーを裏切って空に飛んでいるのだ。あえなく墜落することになったが、あれが成功していたら見捨てていたに違いない。そこからの逆転が望めない時点でそこまでの熱い展開だとは思えなくなってしまった。多分俺でもそうするなと。
主人公には俺を超えた俺にはできない勇気を発揮してほしい。
映画にファンタジーを求めている。
俺はまだ子供なのか。それとも単にそういう集団に属するのか。
『ボーダーライン』もそこまでピンと来なかったし、あまり「ありのままの人間」を克明に描かれても心が動かない性であるようだ。
夢ナンセンスファンタジー童話リターンズ『メリー・ポピンズリターンズ』箇条書き
・今のディズニーの2Dアニメーションが見れるだけであたしゃ満足だよ…
・悪意あるキャラクターを登場させたのはどうかと思った。メリーポピンズはそういう概念を超越した存在であってほしい。
・風呂~器までの流れは最高だった。
・マイケルが夢を失ってるのもなあ。メリーポピンズ意味ねえじゃんという感じもする。
・取り戻したけど。
・悪役も最後は宙に浮かぶでよかったのではないか?
・メリーポピンズが時を戻すのかと思いきや物理的に頑張ったのもややフィジカル面を重視する教育的意味を感じる。
・「ロンドン塔がついに正しく時を打ったぞー!」は良かった。
・俺の中の悪漢「メリーポピンズみたいな高飛車な女をバックから突きまくってやりたいぜ」
・トプシーのシーンとか、前回と同じシーンの変奏は粋だよなあ
・入れ替え言葉のシーン。後半翻訳諦めたなw
・チムチムチェリーが久々に聞きたい
20190202『第9地区』箇条書き
本屋大賞スパイ活劇→純粋悲劇『ナチス第三の男』 87点
本屋大賞1位を取った『HHhH プラハ、1942年』という小説の映画化。
↑ジャケがかっこいい
HHhH は Himmler's Hirn heist Heydrich を略したもの。
Himmlers Hirn heist Heydrich は
「ヒムラーの頭脳の名前はハイドリッヒ」の意。
Webミステリーズ! : 再び『HHhH』(ローラン・ビネ著)について……。[2012年6月]
第二の男はベッタリと塗り付けられた髪型が印象的なヒムラー。
それに続く男、ヒムラーの頭脳ハイドリッヒを描くのがこの映画。
――の前半。
2人のチェコ人青年ヤンとヨゼフがハイドリヒの暗殺に挑むまでを描くのがこの映画。
――の中盤~後半。
この映画のクライマックスは、これでもかというほど残虐非道なユダヤ人の虐殺とヤン・ヨゼフに対するナチスの報復だ。
戦争と使命
この映画は、戦争という特殊状況下で使命が人間を狂気に駆り立てる様を描いていたと思う。
それは、「悪側」ナチスのターンでも、「善側」暗殺チームのターンでも同様に。
そもそも海軍の将校だったハイドリヒ。女に手を出したことで海軍を除隊され、失意の中で妻の手引きを受け、ナチスに入党する。そこで適性を発揮し、使命を持ってしまったのが、ユダヤにとって、そして願わくはハイドリヒ自身にとっての悲劇であった。
「並べろ、撃て」
「現在ドイツのユダヤ人は○○万人、□□では浄化完了…」
そう答えるときのハイドリヒの目には一転の曇りもない。妻や子供と接しているとき以上に、自信をもって生き生きとして見える。
ハイドリヒは使命を持ってしまったのだと思う。ユダヤ人を地上から排除し、アーリア人の理想の世界を作るという使命を。
ドイツに密入国し、協力者の手引きを経てハイドリヒの暗殺計画を練るヤンとヨゼフ。
「命令を無視しろ。皆殺しにされる」
そう話す協力者に「俺たちはハイドリヒを許すことはできない」と2人は語る。
そして、ほかのチームメイトも最終的には巻き込むことになる。
そうだそうだやっちまえ。
俺はこのシーンで胸が熱くなった。燃える展開である。
しかし、後半に近づくにつれて「えらいことになってしまった……」。
絶望である。
2人の暗殺は危ういところで成功したものの、犯人捜しのためにユダヤ人の町一つが消され、女子供は収容所に送られた。男たちは鉄砲の的。ついに密告者が現れ、協力者は捕まるか自殺。そして、逗留先の幼い少年が目の前で電気拷問にさらされ、目玉をくりぬかれようとしている様子を見せられながら脅しつけられる。
使命が、ここまでの悲劇を生んだのだ。ヤンとヨゼフもさすがに後悔したのではないか。俺は後悔した。作戦を無視すればよかった。いやむしろ、ドイツになんか来なければよかったのだ。
そうすれば、水攻めにあう教会の地下で、親友と頭を同時に撃って死ぬようなことにはならなかったのに。
しかし、使命は2人を動かしてしまった。
*******
よく考えたら、使命とは「命を使う」と書くのだ。
なんと野蛮な言葉なんだろうか。
勇ましすぎる……。
『マダムのおかしな晩餐会』ネタバレ感想 格差社会おしゃれロマンスコメディ 95点
あらすじ
主人公マリアはスペイン系移民のメイド。大金持ちのアメリカ人アンとボブのもと、フランスで給金をもらい、フィギュアスケーターとして活躍する娘に援助を行っていた。ある日、アンの家で12名のお客を招いた晩餐会を開くことに。家計が苦しくなってきたボブは、絵を画商のデビットに売ろうと考えていたのだ。しかし、そこに、ボブが前妻との間につくった小説家のスティーブンがやってきたことで問題が。
アン「13は不吉な数字じゃない!」
かくして、マリアがアンの友人である貴婦人としてパーティーに出席。陽気なジョークで場を沸かせたが、一つ問題が……。
デビットに恋されてしまったのだ。
そうして、メイドと画商のすれ違いの恋が始まる。
まあおしゃれなんすよ
俺には、たまにおしゃれな映画を見たい季節が訪れる。
むくつけき寝ぐせのダサ男であることを自覚はしているが、だからといっておしゃれな話が嫌いというわけではない。
むしろ心が現実と架空の間で境遇を対比させたがっているのか、結構な頻度でその季節は訪れる。
で、この映画をその季節にみるのは
―大正解だった。
軽妙な会話劇で、よく意味は分からないけどなんだか気の利いた感じのジョークで忍び笑いたい。そういう欲を満たしてくれてありがとう。
チャンチャン。
それにしてもメイドと主人で階級や立場が違うなんて話をこの21世紀平等時代のフランスで展開するなんていくら何でもふるいんじゃないの、という気もする。
それでも面白いからいいんだけど、数十年前の設定でもおかしくないくらいそこが自明のものとして描かれていたのは不思議だった。
かといってスマホやフィギュアスケート、テレビ電話が登場するので設定は現代だし…。
海外はいまだに階級社会で日本はその点平等指数が高いというが実際そこら辺どうなのだろうか。
最後の晩餐
この話でボブがデビットに売ろうとしていたのが『最後の晩餐』。「それ、ルーブルにあるんちゃうんかい」と思ったのだが、いくつかあるのだろうか。
鑑定した結果本物だどうだという話をしていたので複製ではないと思うのだが。
まさか画商のデビットが本物がルーブルにあることを知らないタコやろうじゃあるまいし…。
ひょっとしたらデビットも画商を騙っている庶民で最後はマリアと庶民同士うまくやるかと思ったのだがそうではなかった。
アンの孤独
マリアがおもての主人公だとすれば裏の主人公はトニ・コレット演じるマダムである。先日へレディタリーのおかんとしてスクリーンで出会ったばかりであるが、天井に張り付いてアウアウしていたあいつとは思えない美しさだった。
46であれはなー。
浮気男とモノクロの美術品のところで待ち合わせをするシーンはまるで絵画のようで、おしゃれ心が満たされる。
俺の中のIL(インナー・レディ)が濡れていた。
マリアの結末に対してアンの結末はよくわからない。
セックスレスで自分に興味を示さない夫に明らかに不満を持ち、それでもメイドの格好で誘惑してみるなどいじましい努力を行っていたアン。
休暇先で裸になり、旦那の泳ぐプールにすっぽんぽんで飛び込んで向かったのに……。
あのシーンはアンの切ない心境を描いていた。
しかし、結論から言うとアンの思いは成就せず、その後夫はフランス語教師とキスをするし、マリアはメイドをやめてしまう。
この物語が俺が望む通りのハッピーエンドだったとして、アンはマリアが幸せになった文の「現実」を背負ったようにみえる。
アンとデビットが商談をしているところにマリアがやってきて、見向きもされずに昇進するシーン。
しかし、それは(おそらく)ハッピーエンドのための助走であるとともに、マリアに感化されて芽生えつつあったアンのファンタジー(ロマンス)がプールでの一件を境に縮小し、ついには現実に完全に埋没してしまったことの象徴のようだった。
へレディタリーでも家族という名の地獄にとらわれてしまったトニ・コレット。マダムとしても、また違った意味での家族の暗黒面を背負ってしまったのかもしれない。
それは、おしゃれな煉獄だ。
Miss You Already (Original Motion Picture Soundtrack)
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