裸で独りぼっち

愉快な毎日の記録

M-1 2017 全組感想と全体所感”理”

人と人がしのぎを削るショーレースの盤上。そこには何等か全体に共通する”ムード”のようなものが醸成される……ような気がする……と断言したい。

 

今年のM-1グランプリ、つまりM-1グランプリ2017は”理”のM-1であった。

 

昨年のM-12016は”技”。銀シャリ・和牛・スーパーマラドーナ。この巧者3組がしのぎを削り、結果として最も”しゃべくり”の枠の中で進化を突き詰めてきた銀シャリが勝利をつかんだ。

 

その前のM-12015は”華”。敗者復活を勝ち残ったトレンディエンジェルが圧倒的なまでのポップ性とウケでM-12.0の頂に上り詰めたのは記憶に新しい。

 

理は「理想」の理であり、「理屈」の理である。

理想! 漫才とは「チンピラの立ち話」ではなく、「喋りのプロによる技巧の披露である」という理想。動きや発想といった”素人芸”ではなく、以下に客を引き込むかが重視されるべきだという思想。

 

理屈! ユニバース・カミナリ・スーパーマラドーナ・和牛。とかく今年流行したフォーマットである”伏線回収”。漫才コントであれ、しゃべくりであれ、一定の世界線というものがあり、そこからの逸脱が後に暴かれる。その、「理(ことわり)」の隠ぺいと再提示の快感の破壊力に大勢がうなった夜。

 

では、優勝したとろサーモンは「理想的」で「理屈」の通ったコンビだったのか?

そうではない。”すかし漫才”のころだったらそうかもしれないが、今のとろサーモンはそうではない。

だから、俺は和牛が優勝したと思った。

でも、そこで「ゆがんだ天才、ボケ久保田とそれを糾す巧ツッコミ者村田のとろサーモン」を選んだことこそ、漫才が理想という枠に収まって欲しくないという理想と、和牛を順当に選んだとき盛り上がりを見せたM-1、2.0の波は引くだろうという理屈という審査員の気持ちが逆説的に表れたのではないか。

屁「理」屈かもしれないが、

 

1組目 ゆにばーす

巨人89リーダー87礼二90小朝91大吉92松本87上沼90 合計626

川瀬名人「1組目やったんで、もう、逆にあきらめ付いたというか」

 今回のM-1で最も割りを食ったのがこのコンビである。王者のコメントを求められた際、トレンディエンジェルのたかし(ツッコミ・巨大ロボを操る敵みたいな方)が「正直、ゆにばーすの5番目、6番目に出てきたとき、どんな点数がどうだったのかなって」といったのが忘れがたい。全くその通りだ。受け通りでいえば、決勝に残らずともさや香の上くらいの順位にはなっていたのではないか。

ネタは、『地方のビジネスホテル』

ほかのネタに比べても明らかにレベルが高い。大切に抱えてきた勝負ネタだったろう。

それを一組目で披露することになった川瀬名人の胸中いかばかりだったか。

――不利を覆すくらいのウケがとれるネタや、間違いない

――おそらく落ちるから一番ええネタ見せとこう

前者、後者いずれの気持ちも混ざりあっていたに違いない。

 

漫才コントで見えない部分を種明かしして想像力を刺激させる手法というのは、演技力が試される代わりに観客に与える臨場感が桁違い。3回戦のネタ合コンでも頻繁に使われていた手法だが、今回は登場人物がはらと川瀬名人だけですっきりと整理されていた分、伏線が丁寧かつ分かりやすく、観客にもかっちりはまっていた。

 

(はらに押されて)「あ、すいません」

「天井引くない?」

「ここ一階やねん」 

 「翼の折れたエンジェル」を腹がシャワーを浴びて熱唱するというただただ絵的にインパクトの強い部分をサビに持ってこれたのも強い。あそこで抜かれた松本人志の笑い顔を君はみたか。

だが、

「一巡目でつけられる最高点が92点だと思うので」

ということで、合計点はやはり抑えめになってしまった感は否めない。

正直、優勝の絵は見えないが、決勝3組には入ると思っていた。1巡目でさえなければ。

 

2組目 カミナリ

 正直、決勝に行くとは思っていなかった。

一度ばれたフォーマットは、弱い。

その後できるのは、新たな手法を発明するか、その手法を伝統芸能にするかである。

しかし、カミナリが取った手法はブラッシュアップ。

それまでずれていた”どつき”の間を詰め、伏線を張り巡らせることで後半に畳みかけを実現できることになった。

後者はともかく、前者は”進化”なのか?

俺はそう思った。どつきがずれた間の後に来るからこそ新しい漫才なのであって、その間が詰まってしまったらただのドツキ漫才だ。

とはいえ、そのチェンジがなければ、決勝にコマを進められることはなかっただろう。

ずれた間が亡くなれば、当然それは普通のドツキ漫才であり、普通の漫才のフォーマットでも成立しやすいものとなる。

わかりやすく書くと、数コマずれてから突っ込んでますよ、というサインとしてカミナリのドツキは機能していたと思うのだ。それがずれを失ってしまったら、ドツキはやや過剰なものとなる。

上沼恵美子がドツキをなくせと言ったのには、そういった意味も含まれているのかもしれない。

(――いや、あの人は絶対好みでぱちん!ていうのが好かんだけだとは思うけど)

そもそもをいうと、最強の動物というテーマでサメとかワシとか俺自身とかを持ち出してくるのはボケであるまなぶのキャラから考えても、アホ不自然すぎる。本当のアホではなく、ふざけた回答をしているふざけたやつに見える。川柳や電話でのアルファベットの伝え方ではないが、もうちょっと理に傾いたテーマでネタを作るのがカミナリにはあっていると思うんだけどどうだろう?

 

3組目 とろサーモン

友達や新道辰巳やにちゃん(現5ちゃん)がバチバチに優勝候補だと期待していたとろサーモン。結果としては優勝。

とろサーモンの漫才は久保田という異質な人間を村田がザ・ナニワなツッコミでいなす。システム厨の俺は透かし漫才が好きだったが本人たちが嫌いだったと聞いて驚き。

 

1本目のネタは3回戦でもやっていた「旅館」。

どんな季節も雨が降ったら終わりだと無粋の塊のような偏屈発言をする久保田。

旅館の女将に全く寄せる気がない久保田。

カマキリからハリガネムシがでているという不快な話をやばそうな早口で語る久保田。

俺は実はそんなに久保田のこういうやばい奴感にはまってない。

なんか大喜利下手な人がキャラでごまかしてる感じがしてしまう。

感覚的な笑いは苦手だ。

でも、「続行!」「継続!」は確かにかっこいい。

あれは非常にわかりやすいメタだということはわかっているけど。

でも、スマブラでいうと確実にあれがスマッシュだ。

あれがみれれば満足だ。

 

2本目のネタは去年の敗者復活でもやっていた定番ネタ「焼き芋屋」。

ここで決勝初出場のベテランパワーが光った。

面白いネタが大量にプールされていると強い。

Twitterコンテンツリーグの雑誌、SHOWCOMにも連載しているお笑いDVDコレクターの菅家しのぶが言っていた通り、何言ってるかわからんところも多々ある。

『芋だけに 雪水とれる明日かな』

 

芋だけに 雪水とれる明日かな 。これ、どうゆう意味ですか?とろサーモン... - Yahoo!知恵袋

でも確かに「芋神様~」のくだりの新興宗教間はとろサーモンにしか出せない威光みたいなものを放っていたし、これもやっぱり「スマッシュ」なのだ。

2回必殺技を放ったら強い。

それは和牛もなのだけど。

 

4組目 スーパーマラドーナ

敗者復活戦をぶっちぎりで勝ち上がったスーパーマラドーナ

なんかほかの決勝常連コンビ。和牛、銀シャリ(優勝したけど)、ジャルジャルらに比べると一枚落ちる感は否めなかったと思う。

ドラゴンボールでいうとピッコロというか。

でも、やはり宇宙人はちとレベルが違う。

敗者復活戦でものすごい追い風が吹いた。

それは、笑神籤ルールとなり、敗者復活の絶対的アドバンテージが崩れたとしても、やはり追い風だと思った。けど、Gyaoの後番組で武智自身が言っていた通り、敗者復活が一番良いネタだった。

3回戦でもやっていた「合コン」。

設定は平平凡凡なのだからとにかくボケの質とツッコミの技術で稼ぐしかないのだが、やっぱり「アントニオ猪木のセリフ山手線ゲーム」のくだりがピークだったね。

昨年の『エレベーター』といい、見えないところにわなを仕込む達者さが武智の最大の武器である。さすがM-1前日までネタを直しているようなストイック人間なだけある。

まあその、つまり一回集団演劇みたいな舞台をやったらいいんじゃないかと思う。

田中を含めた大勢を操る演出家が武智だ。

で、その状況を漫才で成立させるにはどうすればいいか。

見えないボケをどう表現するか。

それをやったとき、最強のネタができるのではないか。

あ、でもスーマラ来年ラストイヤーかな。

ああ。。。

 

5組目 かまいたち

「怖い話」。

俺はかまいたちが優勝すると思っていた。

ライアーゲームで有名な漫画家の甲斐谷先生が偉くお笑いが好きなようで、優勝予想を当てた人に似顔絵入りサイン色紙をプレゼントするとのこと。

かまいたち、ゆにばーす、さや香といったのかな俺は。

赤っ恥である。

今見た共通点としては、とにかくひらがなが多い。

俺は読みやすさ重視で予想していたのだ。ときどき自分が痴ほう症じゃないかと疑う時がある。

ともかく、その甲斐谷先生はとろサーモンを押していたのだろう。

DVDのジャケットも出がけたようだし。

優勝したのはさぞうれしかったでしょうね。ええ。

なぜかまいたちにしたかというと3回戦・準々決勝で披露した「心理テスト」がやたら良かったからだ。

これと昨年敗者復活でやっていた「UFJUSJ」があれば固いなと思った。

それなのに、「勝ち切るネタ」ではない!

なんども劇場でかけてきたら飽きてくるのだろうか。

初出場のベテランコンビはぜったい既存の勝負ネタ2つで挑むべきで、今年のネタ2本で行く必要はないだろと思うが和牛のこともあるし、それが漫才師の、いやいや芸人の矜持なんだろうなあ。

俺は卍がはまらなかったよ。

 

6組目 マヂカルラブリー

 俺は去年やっていた「ベランダ」よりも「野田ミュージカル」の方が好き。

劇場で一度もマヂカルラブリーを見たことのないズブの素人にもかかわらずだ。

だから、ネタ選びが失敗した(ネタが初見向けではなかった)というのはちょっと違う気がする。

大吉先生もたまむすびでいっていたが、村上のツッコミが単調。

それでもボケのパンチで引っ張っていけるはずだが、この一億総ツッコミ時代には、その波は起こらなかったのだろう。

かといってたとえツッコミとかしても仕方があるまい。

2人ともボケになれ。

でもそしたら、虹の黄昏の亜種みたいになっちゃうよなあ。

難しい。

 

7組目 さや香

別に好きでもないけどはまる予感がしていたさや香

案の定はまったがあと一歩点数が伸びず。

ネット上ではボケの新山がチュートリアル徳井過ぎるとの評価。

俺はフォーマットに目が行き過ぎて「ダイアンやん」と思っていたが

確かにあのリアクションは徳井なのか。で、顔が後藤。

コピーキャラでダークホースの順位としては、最終結果6位というのはまさにちょうどいい順位である。

 

8組目 ミキ

ミキがこんなに伸びたのが正直一番納得できない。

よくも悪くもいつものミキだったのになあ。

1発目のネタは「漢字の説明」。

舞台で体で漢字を表すのはTIMっぽくていいなとは思った。

でもなんか頭で漢字を描きにくいしもちゃっとしてないかとはまれなかったのも事実だ。

2本目がスターウォーズ。定番のやつ。

「体悪いねん」のくだりはいつも面白い。

ああいう生活の実感に即したワードがいいな。

だから、選曲が古いとかそういう批判はんまりピンとこない。

ただ、ボケが弱い。それに尽きると思う。

もっと亜星が変態になれ。

 

9組目 和牛

度肝が抜かれた。

伏線回収好きというのは恥ずかしい。

そこに笑いの本質はないと思う。

和牛だけ2本とも1分近くネタ時間をオーバーしていたというのも気づかなかった。

恥ずかしい。

だから優勝しなかったのは妥当なのだなと思う。

でも、面白かったなあ。

1本目はウェディングプランナー

前半は動きのない打ち合わせなこともあり、あんまり受けていなかった。

で、飛び出してからのバーン、パーン、ジョブズ―である。

そういう受けとかメリハリとかすべてが緊張と緩和を体現しているようであった。

2本目が温泉旅館。

伏線回収は大好物だけどボケ数は明らかに減ってたよなあ。

女将の演技をリアルにやりすぎではないか。

そに力を入れるとボケ数も減るしコントになってしまう。

漫才コントはあくまで漫才である。

なんてことは和牛はわかってるんだろうけど。

 

10組目 ジャルジャル

M-12015でジャルジャルが優勝を逃し、トレンディエンジェルが優勝を手にしたときは俺は悔しく思ったものである。

新しさとポップさなら新しさだろうよーと思った。

で、今年のジャルジャルは決勝にこそ残らなかったもののめちゃくちゃ大きな評価を得た。

まっちゃんからの最高得点。福徳の一言「ようお前いまボケれんなあ」のピックアップ。

しかし、俺はもはやジャルジャルやろ、ここは新しさやろ、とは思わない。

一昨年のジャルジャルが進化したらこうなるだろうなという感じだったからだ。

もちろんお前これ思いつくんか、と言われたら思いつかない。

でもジャルジャルが思いつくだろう予想はつく。

だから、世間ほど評価はしていない。

世間は少なからず松本の最高得点に引っ張られたと思っている。

あと、決勝進出者決定記者会見のときのジャルジャルのコメントはちょっと滑ってた印象がある。

なんだったっけ。

M-1後、ラジオで福徳が「あれはゲームやからマジでちゃんとは決めてない」と言っていた。

俺にいわせりゃ、ゲーム過ぎた。もうちょっと隙があっても良かったんじゃないの、とお笑いに救いとだらけを求める俺は言う。

でも、真剣勝負の場で真剣にゲームやるっていう状況はすごいおもろいな。

そういうことを意図してるのかな。