『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』90点 ウロボロスのハリウッド ※ネタバレ
Filmarks
タランティーノ作品を劇場で見るのは初。
シャロン・ステート殺人事件も知らない。
その事件を一応下敷きにしていることも見た後に知った。俺がとりあえず作品を見て思い出したのは推理作家竹本健司の『ウロボロス』シリーズ。宮部みゆきや島田宗次など実在の作家が登場する現実パスティーシュ、入れ子構造メタミステリである。
ブルース・リーやロマン・ポランスキーが混在するこのハリウッド世界もそれに近く感じた。現実とファンタジーがパラレルに混在している。ただの過去ではない。
意味ありげなシーンや独特の会話がタランティーノの持ち味だと聞いた。クリフ・ブースが家で餌を犬に与えるシーン。にょっこりと落ちる感いっぱいの餌、それを待つ犬。あそこがえらく印象に残った。
それに1人の女に振り回される2人の男の会話か。終盤のマジックエンドについては歴史を知っている人こそが感動できるのだろう。俺はただただリックもクリフも生きてくれと願ったのみ。今後、火炎放射器を目にしたら笑ってしまうなあ。
概要
西部劇のリック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)とスタントマンのクリフ・ブース(ブラッド・ピット)。全盛期を過ぎた二人は人生の下ろし方を模索しながら映画製作に携わり続けていた。リックの家の隣に『ローズマリーの赤ちゃん』を撮ったロマン・ポランスキーとその妻で新進女優のシャロン・ステートが越してくる。実際に起こったシャロン・ステート殺害事件に着想を得た物語。
追加
・やっぱりスリラーの予感を感じさせるシーンのすご味は大したものだ。ヒッピーの住処にて昔の友人に会いに行ったシーン。家の奥まで突き進むと寝っ転がった盲目のそいつ。あれは、実際の事件の概要(ヒッピーの教信者集団がシャロンステートを殺害)を知っているとあのシーンは緊張感をあおられた絶妙な透かしだったろうなあ。
・話の緩急だよなあ。ただただ一日の顛末を流してあーやっと話が終わったと思いきや六カ月が経過。一日を細切れにすすめていかれヒッピー集団が訪れる。それに出てくる赤毛と東洋系の女とリーダーめいた男。全員こちらの記憶に残っているというのが計算高いところである。あの東洋系の女の演技は良かったなあ。