読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

裸で独りぼっち

クソみたいな最近のはなし

バズマザーズ『普通中毒』-⑧「スクールカースト」

先行シングルがある。

ストレートなメッセージソング。

サビと、歌詞とタイトルはそちら側。

イントロは攻撃的で、初聴は不意を突かれた。

 

今回はシングルバージョンに比べてイントロが長い。

ミドルバラードである吃音症からの自然な導入を考えてだろうか。

 

スクールカーストをテーマとした局なんかめちゃくちゃありそうだけど、

スクールカーストと歌詞に出てくる曲は思えばこれ以外知らないな。

スクールカーストは、やはり比較的新しい概念なんだな。

 

歌詞はかなりストレートであまり考察する余地がない。

前々作アルバムの「HEY BOY GOOD LUCK」みたいな感じだね。

 

あのアルバムはバズマザーズとしてセルフタイトルであり、

ある種童貞を捨てた作品だったのかなと思う。

 

最後の最後、シークレットでは普段世話になっている人やファンの名前・あだ名が列挙される。

ダサい。身内ネタ。囲い込み。ダサイクル。

いくらでも批判する言葉は思い浮かぶし、実際されていたが、

そういうことが確実に人を救うし、それでいいんだよ。

そういうモードに入るのが大人になるということだ。

 

だから誰にも奨めなくて良いよ

お前が百万回聴いてくれたらそれで良いよ

スクールカースト

 

バズマザーズ『普通中毒』-⑦「吃音症」

一番ハヌマーンぽい。

昔からの山田亮一のコード進行とか感覚が出てる曲に感じる。

 

ro69.jp

こちらで、パクチーの話が出ている。

俺、吉田拓郎ボブ・ディランが大好きで、歌謡曲も大好きやし、ルーツはそこにあるけどやっぱパクチーはかけとかんとあかんやんかっていうとこがあって。バズマザーズがやる歌モノやから。でもそれをやめてん。もうパクチー入れんでええやんって

「「俺の曲は、俺なんかよりも尊いものやねん──バズマザーズ、4年ぶりのアルバム『普通中毒』と成長を語る」 

 それでいうと、この曲はパクチー入ってへんな。

とてもとても分かりやすい山田の私小説な歌詞。

別にソロで弾き語ってもいいだろう。

そういう意味では、何か物足りない曲かもしれない。

少なくともこのアルバム全曲の中では一番影が薄い。

でも、

はい、んー、

あー、また言葉に詰まる。

伝えたい言葉など詰まるほどないのに

 最後に歌い上げられるこの最もメロディアスなフレーズは、

ギターと歌のみで歌あげられるからこそ、バンドでやっていた

ということが際立ち、そこにおいてのみバンドでやる意味がはっきりと逆説的に表れているように思う。

バズマザーズ『普通中毒』-⑥「傑作のジョーク」

アルバムリードトラック二曲目。

テーマは人生について?

 

ぐるぐる回転木馬が回っている

「傑作のジョーク」

人生とは回るものだと感性の尖った一部の者は関知するらしい。

中島みゆきの「時代」しかり、

銀杏BOYSの「人間」しかり。

 

だけど、この曲はその輪に入れない人間の歌だ。

アイリッシュフルート?的なキーボードの音色が郷愁を誘う。

最後に傑作のジョークを一つ。

人生に行き詰まったある男が

精神科に救済を求めて言う。

「何をしても笑えやしないのです」

「傑作のジョーク」

有名なジョークだ。

ベタで陳腐で小咄だ。

だけど、傑作である。

 

永遠の救いはない。

我々は痒いところにムヒを塗ったような一瞬の刹那救い救われた気分になる。

その連なりを遠くから眺める僕。

淋しいが輝きを眺めるのもまた耀きである。

 

 

 

バズマザーズ『普通中毒』-⑤「ソナチネ」

この曲は、このアルバムでも屈指の作品だと思っている。

展開がわかりやすく、複雑で予想しがたいのが良いよね。

全編マイナーで怪しくドープな曲調なのだが、最後のサビだけ開けたメジャーに変わる。

 

描かれるのは人間の無理解と男女の諍い。

1晩(番)は男目線で、もう1晩(番)は女の目線で

最後はその二人の情事と痴話喧嘩を隣室で盗み聞きする男の目線で語られる。

 

歌詞の流れ

男は女を枕に誘い、2人は一戦交えたが、何かをきっかけに争いが起こる。

品の無い顔、金切り喘ぎ声、

熟れた愛撫に望まぬチールアウト

ソナチネ」 

両者ともに相手を見下し、同衾する時間に、とてつもない気まずさを感じている。

心から相手を軽蔑している。

それを隣室で盗み聞く男がいた。男はその晩に悪夢を見る。

ソナチネが男を殺しに来て、毒か薬か選ばせる。

男はこう言い遺す。

それではみなさんさようなら、明日も貴方が幸か不幸か、

御自身で選べるくらいの平和が垂れ流されていますように

ソナチネ」 

 (以上)

 

マイナーで怪しくメロウだが耳障りの良いメロディラインや、「貴方」などの言葉遣いから、どこか椎名林檎っぽさを感じた。

この性のどうしようもねえなあ、という感じも「勝訴ストリップ」っぽい。

 

ソナチネは、北野ビートたけしのカルト映画のことだろう。

その中の、得体のしれない阿南組の殺し屋を指すに違いない。

 

くだらない、どうしようもない、男女の諍いやそれを聴く厭感。

だが、それらはソナチネが来てしまえば、明るく(メジャーに)変わるような「ご自身で選べるくらいの平和」でしかない。

 

それだけじゃ、まだ不安か?

ソナチネ」 

ーー不安である。

戦争も地獄も、人の心(あるいは脳)の中にあるからだ。 

 

最後に吐き捨てるように歌われる「まだ不安か?」が、マザーファッカーに聴こえるのはきっと気のせいではないだろう。

人は皆、母を犯し、生をうける。

バズマザーズ『普通中毒』-④「月と鼈」

月とすっぽんと読む。

 

いわずと知れた、一見似ていながら大きく差があるものを表す慣用句。

 

テーマは世間の誤解について。……だろうか。

 

お前がほしいのは汚い性行為

でもしてるのは潔癖な性行為

…(中略)

安心しな、峰打ちだって云ったハナから、

お前、返り血に濡れる

「月と鼈」

 お前はズレたものを欲し、見当違いな言葉を発する。

月と鼈の違いも判らない。

という解釈が引用部からはできる気がするが、

月とスッポンになんて、

大した違いはないね

「月と鼈」

 だともいう。

世間の誤解だけじゃなく、自分への不信もここには含まれているのだろうか。

正解は世間にはわからないし、自分にもわからない。

億通りの正義、誰も間違っちゃあ、いないね

「月と鼈」

 自分が月と思えば月だし、鼈と思えば鼈だ。

とはいえ、それは億通りの解釈の一つに過ぎないが。

こういうことだろうか?

いささか素直過ぎるだろうか?

わからないことがわかる、のではなく、わからないことがわからない。

そんな気分にさせられる曲だ。

ラスサビ後アウトロは1と1/8小節だけ。

この途切れ方も、わからないままにあきらめざるを得ない我々の思考の終をほのめかす。

だが、

似顔絵師になどなる位なら、

俺は贋作の技巧を捨てる

「月と鼈」

 というフレーズは「サンダーボルト」とテーマを同じくし、

ただただ力強い。

 

酩酊のようなサビのなかにこんなフレーズが出てくるということに、

バズマザーズの今考えていることがうっすらと見える気がする。

バズマザーズ『普通中毒』-③「せっかちな人のための簡易的な肯定」

一番奇才感があるおかしな曲。

とても好き。

 

8bitなイントロからナイフみたいなリフへ。

今聞いて思うのはすごくグルーヴが気持ちいい曲だということ。

 

ドゥンダドゥンダというベースラインとスネアの重ね合わさる3拍子目。

 

これ、キーボード入ってるのはAメロの頭だけなんかな。

 

幽居先の宇宙で火星生まれはどうも礼節が無いなんて往々に憤慨して

「せっかちな人のための簡易的な肯定」

このSF(スーパー不思議)な世界観と卑近で卑小な肌感・思想の交わりが

たまらない。

 

どこかでアイデアとは距離間であり、距離感は驚きであり、驚きこそが芸術の価値だと聞いたが、 そのノウハウ聖典があるならリードを飾るような表現である。

 

この曲から山田はアフロ山田となったわけだが、

そのぐらい大きく思想が変わったことを象徴する曲なのだろうなと思う。

 

ところで君は手錠のカギをずっと探してるように見受けるが、果たして何につながれてるというの?

「せっかちな人のための簡易的な肯定」

シングル盤よりこなれてきれいになった(米1)が、俺はこちらのほうが好きだ。

単に新しいからという理由かも知れないが。

 

米1

・ギターの音のトレブルが下がった。

・ワウワウするようになった。

・ドラムもよりタイトになった。

・2番のAメロのオブリガードがなくなった

・アウトロのデーンデーンのところのチューニングフレーズがなくなった

バズマザーズ『普通中毒』-②「サンダーボルト」

このアルバムのリードトラック。

 

曲名は懐かしい響き。小学生の好きそうな単語だ。それも、00年代以前の。まだボンボンがあったころの小学生だなこりゃ。

 

Youtubeのコメント的にはこのひとつ前に公開されたサンダーボルト以上に

評価が高く「これで方向性が固まってきたな」といったような発言も寄せられていた。

 

だけど、当初俺はどちらかといえばこの流れに否定的だった。

 

確かに方向性は固まってきたが、歌謡ロックという枠組みにこのままでは収まって行ってしまう気がしたのだ。

 

それは俺がバズマザーズの曲の中でつくりとしては一番の天才だと思っている「せっかちな人のための簡易的な肯定」からの退化である。

また、「戸田が誤訳かましゃジゴワット」などというフレーズがあまりに遊びすぎじゃないかという気がしていた。

 

しかし、アルバムで聞くと、違った。

 

「時代をくれ」とスタンスは同じで、いいたいことは「俺の音楽は最高だ」ということ。

 

俺は稲妻を生むのさ

「サンダーボルト」

 

わがままである種滑稽に聴こえてしまう。

 

しかし、それさえも許容できるようになったのが、

山田が成熟したということであり、

バズマザーズがバンドとして強度を高めたということである。