地震──羽虫と誘蛾灯
ラジオをとった。
夜は地震だ。
俺は自分の声を自分で聞いて自分でご満悦に浸っているオナニーの王様。
世界を自己完結で閉じる。
地震なので、久しぶりの友達から心配のラインが来た。
みんなこうやって、心配を口実に昔の友達に連絡を取りたいとうずうずしているのだ。
よく、お笑いのショーレースなどで優勝すると全然知らないような人からラインが来るなんて話があるけれど、あれは「あわよくば得するかも」という算段もあるだろうが、それ以上に寂しさを埋める口実ができて、そこに光に集まる羽虫のように人間の感情が群がってきているのだと思う。
俺だって羽虫だが、本当は誘蛾灯になりたい。
誘蛾灯は所詮誘蛾灯であり、羽虫に比べて偉くもましてや自由でもないのだが、楽ではある。
羽虫が集るのを待つだけだからね。
といいつつ、羽虫が誘蛾灯に殺されることはないので、もっとうすぼんやりとした虫を寄せ付ける何かの方がたとえとしてふさわしいかもしれない。
あるいは木からしたたるシロップとか。
地震で花瓶が割れた。
嫁はんが職場の一番好きな先輩から結婚祝いでもらった花が入っていたピンクの花瓶。
いいものだからと、玄関先に出していたのが悪かった。
余計なことをして、僕はまた一つ損をする。
<↑これは歌詞みたいな一節だから描いただけの空虚な一文>