『ムーンライト』感想
なんか切ない気持ちにさせられた。
それは、LGBTQの方にとっては逆差別に感じる言い方になるかも知れないが、やはり描かれすぎた男女の恋愛ではストレートに描きがたくなってしまった感情だと思う。
男はみんなホモ・ソーシャルという意見に俺は賛成だ。
女なんて、恋愛なんて、綺麗な嘘だ。
男と男の中だけが本当であり、青春時代のそれは、何物にも変えられない。
『スタンド・バイミー』のラストのセリフ。
「あのときみたいな友だちは、きっともう2度とは出来ない。」
大いに首肯してしまう。
本作でも、シャロンとケヴィンの関係は、当初ホモ・ソーシャル的に映った。
いじめられっ子のシャロンに「強くなれよ」といい、じゃれ合うように取っ組み合いを挑むケヴィン。
階段で女とヤったハナシを「特別だぞ」と教えてくれるケヴィン。
男の世界。友情という愛情以上に純粋なことの多い思い。それを、ここで思い出した。
だけど、そこに愛情が生まれたら?
いやむしろ、友情は愛情じゃないのか?
親友と恋人2人が崖から落ちたらどちらかを助けるかという究極の選択問題。
俺は2人を選べない。
それは、愛ではないのか?
そういった気分にさせられた。
極めて純粋に抽出された気持ちは、結果「愛」としか言い様のないものになる。
芸術はそれを描くことを一つの使命としている。
それを体現した本作は、やはりアカデミーにふさわしいと言えるだろう。