裸で独りぼっち

マジの日記

20200808_カセットテープダイアリーズ

朝から『カセットテープダイアリーズ』をみた。

カセットテープ・ダイアリーズ

だいぶ良かった。
ずーっと歓びにあふれているので見ていて気持ちがいい。
話の落としどころは「まあそこしかないでしょうね」というところに落ち着いたが、それでいい、ストレートに万人におすすめできる快作だ。

そういう意味で一昨日見た『サンダーロード』がB.スプリングスティーンの現実へのメッセージをオフビートに描いたB面、本作がストレートに描いたA面といえるかも。

B.スプリングスティーンについては全然知らなかった。きいてみて「ああ、Born in the USAはきいたことあんな」くらい。2作見ての印象といえば日本で言えば長渕的な立ち位置なのかなと。
一見、マッチョなイメージがありながら一貫して弱さ・苦しみ・しがらみとそこからの「心」の脱却を歌っている点が似ているように思う。

イギリスでの90年代のパキスタン人の立ち位置やムスリム的厳格さと自由を求める若者の対立といたモチーフに関しては、パキスタン移民二世のコメディアンと白人女性のロマコメ『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』と共通している。また、『ボヘミアンラプソディ』でも「パキ」という蔑称は使われていた。

その、現代日本ではちょっと想像もつかないような家・宗教の堅牢さが、そこからの逃避を描く映画の舞台建てとしてとても魅力的なのだろう。

中盤、どんどんB.スプリングスティーンにかぶれた主人公が調子に乗ってどこでも歌い出すミュージカル的シーンは半ば主人公の心象風景なのだろうが、すごく共感性羞恥を覚えた。
カブれてんなー感がすごい。

劇場の暗闇で身もだえしていると、きちんと後半2分の一で冷や水をかけてくれたので安心した。シンセが未来だということを否定しなくていいし、街で構わず歌い踊るのは迷惑だ。

とはいえそのような実は「ずれてる行い」さえも音楽とともに、主人公の目線で語られるので、とにかく常に歓びにあふれている。映画には主人公を痛めつける喜びもあるが、やはり原初的な脳内ドーパミンがドッバーの気持ちよさを追体験する歓びにはなにものも代えがたい。
そりゃまなじりに涙も浮かぶというものである。

あえて気になった点を一つ上げるなら、主人公の彼女イライザの両親が娘と逆に保守・排斥的だという点が別に解決されず終わったことだ。実話をもとにしているんだからしょうがないんだけど、結局イライザとは今後分かれてしまうんだろうなーという予感も感じられて一抹の悲しさが快哉の中に混じる。

でも、それが青春の苦みでもある。

 予想通りいい映画だった。

ベタすぎ!という批判意見があるがそこでいやんなっちゃうほど俺はまだ映画を見ていない。

それにこれとまったく同じような映画だってないだろう。

やっぱり展開の大筋はあるものの魅力的でユニークなモチーフがあるはずだ。