浴衣と湿地植物園
朝から美術館に行こうと思った。
嫁はんは夏のピークに買った浴衣を引っ張り出して身にまとう。
帯を自分で絞めて、支度をする。俺はその間ギターを練習している。
弾いているのではなく、練習しているというのがミソで、なんだか愉快で余裕のある夫婦に見えるが、どちらかと言えば不格好な俺がいる。
そしてそれは、美術館に足を運んだ時、より具体的な形で結実する。
コロナ禍による臨時休館。
せっかく浴衣まで着たのだからこのまままっすぐ帰りたくない。かといって浴衣でそこら辺の店に行くのもな。
こういうときにいつでもどこでも情報にアクセスできるスマホ登場以降と強みが最大限発揮される。
湿地植物園に行くことにした
ミズバショウの季節は5~6月。
当然今は9月。
何も咲き誇っておらず、ところどころに藤が花開き始めていた。
また、勿忘草も少し。
それほど広くない湿地植物園(というより公園)だが、だからこそ立ち去りやすい。
そのままのいでたちでパスタを食べに行く。
シモネッタという名前の珍妙なパスタ屋。店構えもなんだか普通の店みたいである。
しかし、これが大当たりだった。
まるでイタリアの風は感じさせないおでん屋の雇われ店長のいでたちの店長がさく裂させるオリーブ、にんにく、ベーコン……。
舌鼓を打ち、大満足で店を出て、帰路に就く。
そこで段差をうまく乗り越えられずタイヤがボンと音を出す。
先日パンクさせた立場なのでどうなってしまうのかとはらはらしたが、結果としては特に何も起こっていなかった。
それで午前は終わり。午後はダラダラと過ごし、夜になったのだった。