裸で独りぼっち

愉快な毎日の記録

就活中、夜行バスで泣いた話

anond.hatelabo.jp

就活の話に興味を持ってページを開いてしまう、というのは自分のどうしようもない小ささを示しているようで辛い。

この増田に対して「そんな悩みは今だけや」と思えるのも、現在曲がりなりにも正規雇用で働けているからだろうし、2016年の秋になんとか現在の会社に拾われなければもっと切迫感を持って彼の不満に自分を重ねていたはずである。

 

思い出せば大学入学当初はかれっじライフハッキングの学歴論とかよく見ていたし、俺は結局卑近な半径30センチメートルほどの世界に目玉だけスプリンクラーみたいに絶え間なく配って決して本気で戦おうとはしない木偶である。

 

とはいえ現状余裕があるので木偶であることに絶望したりはしない。

木偶は木偶なりに肥大化した14歳の心を相対化するすべは身に付けてきたのだ。

それは、とりあえず形にすることである。

詳しくはこちらに書いた。

hadahit0.hatenablog.com

 

というわけで、就活中の思い出を1つ書くことで自分から切り離そうと思う。

 

あれは2016年の夏。

いわゆるNNT状態の俺は迷走の末、今更のOB訪問をおこなうことにした。

 

相手は大手出版社Sの幼年向け漫画の担当編集H。

 

俺は出版社を志望していた。

といいつつ、本当はマスコミなら何でもよかった。

そこまで金がほしいとも思えず、かといって休みに打ち込むような趣味もない。

ならば、曲がりなりにも自分の好きなポップカルチャーサブカルチャーの近くに入れた方が楽しいのではないかと思ったのだ。

――今にして思うが、こういうやつはが学生時代に業界にコネを作っておかない限り決して受からない。

 

当時S社は本社の建て替え工事の真っ最中。

そのため思ったよりも可動域は広くない本社ビルの応接間がある9Fに俺は足を運ぶこととなった。

 

Hは時間通りにやってきた。

今となっては要望もよく覚えていないが、八嶋智人に似た風貌だった気がする。

 

Hにつれられ、俺は小さなミーティングルームの一室で相談をすることになった。

 

H「―で、どうなんだっけ?まあ俺あんまりこういうの受けないからわかんないんだけど。とりあえず、どこ受けてたの?」

 

俺はキー局・準キー局や大手出版社、番組制作会社に編プロなど一通り受けたがどこも受からなかったこと、Hの所属するS社についてはESすら通らなかったことを話した。

 

H「ESが通らなかっていうのは痛いなー。なんでなんだろ、コピーがあるなら見してみ」

 

H「字ぃ汚っね!!」

 

原因はすぐにわかった。

俺の字が汚いから多分読まずに棄てられたとHは分析していた。

俺はそんなひどい話があってたまるかと当時は思ったが、今ならわかる。

字が汚いのはかなり損である。

東進の今でしょ林先生が頭のいい奴ほど字が汚いみたいみたいな説をはなしていたというワンポイントを頼りに俺は自らの悪筆を許してきたが、それは社会では通用しなかったのだ。

 

ともかく、字が汚くて落ちてしまったのはしょうがない。

話は今後の就活の話になる。

俺はその数日後、I社という番組制作会社の面接を受けることになっていた。

 

俺「というわけで、こういうES出したんですけど、どう思われますか?」

 

H「全然だめだね。まず、その会社のHP見た?」

 

俺「一応は見ましたけど……」

 

H「ほら、みてみな、こんな奴らよ、去年の内定者」

その会社の採用サイトはカラフルで、元気なイメージ。その内定者らも銘々希望を描いたボードをもって微笑み、というより破顔といった笑顔で正面を向いて映っていた。

 

H「ここに入るとすると、普通に言ったら君は向いていないと判断されるだろう」

 

俺「うーん。まあ、そうかもしれないですね……」

 

H「君は自分をどういう人間だと思う?」

 

俺「そうですね。モテず、」

 

H「モテず?」

 

俺「童貞で、根性もなく、顔もよくなく、やたら頑固で理屈っぽい……」

 

H「そうかもしれないねえ。それが君なんだよ。まずはそこから始めないと」

 

H「それを次の面接ではそのままいうといい。それが言えるだけで君は一次面接は突破するだろう」

 

俺「」 

――絶句しつつも礼を言い、俺はその場を後にした。夜行バスの時間が迫っていたからだ。理系から院進を考えていたが、試しに出版社を受けてみたら受かったため高額な給料にも惹かれ、入社を決断したというH。

自分よりはるかに順当な人生を送っているHにコンプレックスをさらけ出させられた俺は、まるで犬じゃないか。

そう思うと、嗚咽が止まらなかった。

俺は夜行バスの中で声をこらえて涙した。

幸い遅い時間の車内はすくに電気が消され、静寂に包まれていた。

運転席と客席を仕切るカーテンの隙間から漏れる明かりを見つめて俺は鼻水を垂らしていた。

ああなんかこの気持ちを曲にできる才能でも有ればなあ――と思いながら。

 

その数日後、俺はI社の面接に出向き、Hに言われた通りのやり方でやり取りを行った。

 

えー、、僕は、そうですね、モテず、生まれてこの方彼女もおらず、才能も打ち込んだものもなくですね、ただ理屈っぽいままに暮らしてきたんですが、だからこそ、御社で頑張りたいと、、っそう、思って居ります。

 

結果としては、その面接は不通であった。

 

俺は二度とそのアピール方法は使わなかった。

 

そんな一回の体験で何かが変わりはしない。俺はただ、駄々をこねる子どものような心とそれに見合わない身体を有した凡人だということを、突きつけられただけである。

 

しかし、今はこんなに穏やかな気分だ。

だけど、ああ、俺に音楽の才能が有れば、あの日の気持ちを曲にするのに。

いまだにそう思っている。

死ぬまでずっとそう思うのだろう。

 

「ワタクシハ」