『スティング』(映画)感想 77点 名作ってこういうもの
いわゆる超名作超王道コンゲーム映画『スティング』を1.5回見た。
なぜ1.5回かというと、1回目は途中で寝てしまったからだ。
勿論夏にしては過ごしやすいその日妙に早起きしてしまったとか、
昼下がりの微妙な陽光に眠気を誘われてしまったとか
環境面での理由が大きいのだが、
それでも寝てしまったということで
やや退屈に感じてしまっていた部分はある。
”スティング的”なものがあふれた世代
スティングの影響を受けて生まれたであろう作品はこの世にごまんとある。
いわゆるどんでん返し系――『ユージュアル・サスペクツ』(1995)とか、『シックス・センス』(1999)とか、『SAW』(2004)とか、全部『スティング』の遠い子孫と言っても良いのではないか。
それらでさえ10年も前だ。最近で言えば『スプリット』(2017)とか『22年目の告白 私が殺人犯です』(2017)とかも…。もはやこれでも怒る人がいるくらい慎重に扱わなければいけない部分。。。
で、昨今の風潮としてカット割りの細かさで観客を飽きさせない、というのがある。そういうものと比較すると、スティングは長回しが多いし、シークエンスの切り替わりも小窓がシュルシュル小さくなったり、画面が横からスクロールして入れ替わったり、古典的(当時は最新)の手法ばかりだ。
”スティング的”なものの世代
勿論だからと言ってスティングがつまらないわけではない。
そもそもつまらなかったとしても全ての源流の1つとしてリスペクトされるべきだろう。
ちょうど今度新作が発表される『ブレードランナー』が今見ると多くのSFのあるあるシーンの詰め合わせに感じてしまうように。
ライムスター宇多丸がダイノジ大谷のラジオで映画『キサラギ』の問題点を解決している理想のモデルとして『スティング』を引き合いに出していた。
ダイノジ大地:どうしても、最後予想もつかない大どんでん返しとかそういうのはもう大好きですよね?そういうのが映画のだいご味なのかなと。
宇多丸:例えばスティングですよね。予想もつかない大どんでん返し。
ダイノジ大谷:最高じゃないですかスティング。
宇多丸:スティングは何度見ても面白いと思うんですよ。だからそのパズル映画(予想もつかない大どんでん返しだけが魅力の映画)って何度も見る気になったりするの? みたいな・
ダイノジふたり:あー
宇多丸:いったん説いたジグソーパズルをもう一回やりますか? みたいな。
ダイノジ大谷:あとやっぱわかるのがさっき言った洒落とかおしゃれとかいうけど俺やっぱそっちの映画はおしゃれじゃないけどスティングはめっちゃおしゃれだと思う。
動画の24:35~
まあ全面的には首肯しかねる((そもそも一度しか見る気にならないパズル映画にも映画的価値はあると思うし、ドラマが描けていなくてもそれはそれでいいのだと思う。ちょうど綾辻行人に代表される新本格ミステリが、松本清張に代表される社会派ミステリと比較して「人間が描けていない」と批判されたが、いまだに多くの支持を集めているし、それ自体が小説の地平を広げたように。が、確かに「何度も見れる」「おしゃれ」というのには俺も同意だな、と思う。
この映画をどんでん返しだけにしない工夫がどこにあるかと考えると、ひとえにゴンドーフというキャラの魅力ではないか。
ポール・ニューマン演ずるゴンドーフのキャラクターはいわゆる絶対的な師匠。主人公フッカーが家を訪れた時には飲んだくれていたが詐欺の実力やトランプの手さばき(実際はニューマンではなくプロの手の差し替え)には絶対的な実力がある。
ジョジョ1部『ファントムブラッド』のツェペリ男爵みたいだよね。
フッカーよりもこのゴンドーフのキャラクターが作品を引っ張った。
だからこそ、wikiで紹介される順番もゴンドーフの方が先なんだろうし。
逆にいうとゴンドーフ以外の人間はもう少し描いてほしかった気がする。
フッカーに金をだまし取られたロネガン一味の下っ端なんて「お、こいつが主役か」と思っていたら開始20分で殺されたからね。