雪深い山に嫁はんが一人で向かう2つの理由
嫁はんは遠い国へ出稼ぎに行ったじゃ。
それを見送るために、朝俺がしたことといえば“レンタカーの回収”である。
うちの車は二駆。東北なのに二駆。
冬の山道を超えて雪“国”に行くことを予定している嫁はんにそれはこころもとなかった……。
というわけで、朝から嫁はんの免許証を携えて駅近くのレンタカー屋まであるく。
お供はマイナビラフターナイトだ。
四輪駆動の軽自動車をレンタルして、そのまま、自宅へ。
嫁はんは寒い寒いといって布団にくるまっていた。
放り出して、行くぞ!というと。
「ちょっと職場に取りに行くものがある」と嫁はん。
……待つことにする。
嫁はんが帰ってきたので早速出発。
運転は嫁はん。
しかし、嫁はんはどうも不機嫌である。
その理由1:そもそも車がレンタカーの軽ということが納得いかない。ダサいし、レンタルするだけの金をまるまる損した気持ちになる。
その理由2:俺がついてくる。嫁はんは俺との生活で、まるで過保護な親と過ごす娘のような気持になっていたのだ。久々に僻地で解放されるというのにこぶ付きで発進となると、気がめいって仕方がない。
「理由2」の方が比重が大きい。
その気持ち、俺も味わったことがある。
関西から仙台に就職と同時に出ることになって、借りたアパートで生活の支度をする数日の間、両親が狭いアパートに滞在していた。
今思えばありがたい話なのだが、俺は「ちっシコれもしねえ! ダサいカーテンを付けようとするし……はやく帰ってくれねえかなあ」と内心思っていた。
その現象が嫁はんにもある。
ということで、俺は2日ほど滞在する予定を変更。
その日のうちに帰ることにする。
道路は田舎に行けば行くほど凍てついていた。
「ハンドルが取られる」と不安な声を漏らす嫁はん。
俺は「降ろしてくれ」といい、歩いて30分かかる駅へと雪深い道を進んだ。
雪は、コワイ。