休日のブルース
動物園に行こうと嫁はんを誘ったが、「暑いからいやだ」と断られた。
その代わり、というわけではないが、スープカレーを30分かけて食べに行く。
郊外のその店は土日祝日、テイクアウトしか対応していないということを現地に到着してから知る。
どこか食べるところはないか、とその店の真向かいにある神社を訪問してみたり、車の冷房を強くしてみたりするが、どうもしっくりこない。
結果、近くにある図書館と公民館が一体になったような施設に向かうことにする。
このコロナ禍で、飲食が許されているか不安だったが、問題なかった。
窓際の席で単独の食事客として、嫁はんとバラバラにスリランカカレーとベーコンカレーを食べる。
一度交換する。
図書館をちょっとのぞくが、特に長居するつもりはない。
このあたりでだんだん嫁はんがイライラしてくる。
それはなぜか。
「無機質で美織の少ない郊外の街で特に行く当てもなく暇をしている“ここは退屈迎えに来て”的な状況が嫁はんは大嫌いだから」だ。
ちなみに、俺はそんなに嫌いじゃなかったりする。
嫁はんは田舎の、行く当てもなく休日はイオンに行って、地元のちょっとしたカフェに行って~という暮らしを自らが体現していることが許せないんだと思う。
退屈な田舎の風景、家畜のように消費社会に慣らされた三級市民。
そればっかりの空間に閉じ込められて、大学まで過ごしていたから。
俺はもとから自由を手にしていたから、その価値にあまりこだわりがないのだと思う。
二人で幾何学折り紙を見に行く。
クーラーが壊れた会場内は厚く、嫁はんのイライラは。
ブルースは加速していく。