カフェの不思議
機能は年度末の末だった。
4月1日──すなわち本日──いろいろな場所で何かが始まる。
俺は何にも始まらない。
だけど、嫁はんが始まるのでそれに付随して何かが変わる可能性はある。
新しいことを迎えるにあたってのたっぷりの期待とたっぷりの不安。それを抱えて嫁はんはきりきりと胃をしめつけており、俺はそれを傍観してゐる。
昼は、カフェに行った。その前日もカフェに行った。
思えばカフェとは不思議な概念である。
飲み物あるいは軽食を提供する主に小休憩を目的とした飲食店というのがその大まかな定義だと思うのだけれど、俺たちは食事を目的に足を運んだぞ?
カフェに。
田舎の大学の近くにある、平日でもやたら混んでおり、おそらくバイト2~3人だけで回しており料理をサーブする人手が足りていないカフェに。
嫁はんは茄子のトマトパスタを、俺はフルーツパフェを注文する。
その日の朝に個人的に肉を炒めて食べたので、“ちゃんとした食事”が別に要らない気分だったのだ。
嫁はんのパスタは対面の俺にもぷんぷんとにんにくの香りが漂う代物で、嫁はんいわく──まずかったらしい。
俺のパフェは遅かった。
もしかしたらデザートと誤解されちゃってるのかも……という旨をもごもごと伝える。
嫁はんが「話すのが下手だな!」とパスタの調子の悪さへのイライラも手伝って俺を批判する。俺は「これが俺のやり方だ!」と言い返す。
車で帰って、嫁はんは新しい職場でお近づきのために配るお菓子を買いに行く。
俺もついていく。
そのままどこかエ──と思っていたのだけれど、嫁はんはどうも具合が悪そう。
デパ地下で半額や100円引きのシールが張られた惣菜を買って帰る。
それを食べながらAmazonPrimeチャンネル恐怖の山咲トオル司会のホラー漫画家インタビュー番組を視聴。
日野日出志の回。『蔵六の奇病』についてみっちり取り扱った話を聞く。
とにかく緻密で緻密がゆえに醜悪な絵が魅力の日野日出志。
蔵六が亀という意味だと辞書で知って落ちを決めたなど、話が魅力的で、ついついkindleで全集を買っちまったよ。
¥550×2なり。