裸で独りぼっち

マジの日記

プロミシングヤングウーマンネタバレ感想

映画を見た。

プロミシングヤングウーマン。

プロミシング・ヤング・ウーマン

全然ダメな映画化と思ったら「Ⅳ」意向で持ち直したけど、そこまでのイライラが募ってるから別に普通以上の評価にはならなかった。

娯楽映画として。
結構この映画の娯楽部分はべたである。ライアンとの恋愛パートについてはそれ単体ではちょっと古臭いくらい都合がいいし、ファンタジー臭い。むろん、後半の展開とのギャップを出すための計算なんだろうけど、この映画をわざわざ見に行くような層は「くさいな…」と勘づくだろう。
復讐パートについては、冒頭のホットドッグ演出といい、予告と言い、男の局部をちょん切るぐらいはしているのかと思ったが、どうも脅してるだけ臭い。どうせなら男を殺しまくって最後も墓場からよみがえるくらいがよかった気もする。まあでも、それは好みの問題だし、『デス・プルーフ』とか割とそんな感じだ。

告発映画として。
中盤のイライラはここが足を引っ張っていた。そのせいで娯楽部分にも影響していたのだ。
いかに列挙する。

・この世界には法や警察、Nシステムは存在しないのか。ニーナの件も警察がどう対応したのか、裁判は起こしたのかについては結果泣き寝入りになったとしても説明してくれないとリアリティにひびが入る。
カサンドラも狂人で、犯罪者なのであまり正義側として支持できない。特に中盤、車を道路に止めておいて、おっさんが暴言を吐いたからと車をぼこぼこにしたのはひどかった。お前が先に迷惑をかけているし、あんなことをして警察を呼ばれないのもおかしい。
・悪人側の記憶力が悪すぎる。ニーナの事件の事とか、自分が昏睡レイプに参加していたこととか、告発までされたらふつう忘れないと思う。あいつらはしっかり覚えていて、しかしそれを回避すべき障害としか考えていないからたちが悪いのではないか。ただの馬鹿をスカッと成敗する話なら、単なる娯楽作としてしか消費されない。別にそれはすごく尊いことだけど、それならやっぱりチンコちょん切っちゃいなよ。

上記のポイントが気になって、中盤はマジで劇場を出て行ってやろうかなと思った。でも、さすがアカデミー脚本賞を取っただけあって一応それぞれにアンサー(というかいいわけ?)は用意されている。
カサンドラは報いを受けるし、最後には警察も出てくる。悪人の記憶力に関してはまあ、ごまかしていたという判断でいいか。だから「これで終わりだと思った?」というメッセージが効果的になる。

ただ、そこまでがイライラエンターティメント過ぎたので、あんまり「はあーすごい脚本だ」とはならず。むしろうまいことバランスとったねという感じだ。

結局法治主義しかないと俺が考えているから、法を無視するこの映画の描写がムカつくのかもしれぬ。もっと法の不完全さをついてほしい。

「おまえは悪くないぜ」とかばいあう悪いホモソーシャルを描くことに焦点置いたのかもしれないけど、ああいう文化ってあんまり非モテ陰キャにはなじみがないのでよくわからんかった。というか人間のなかでも特別ジョックみたいなやつだけしかわからん気がするな。もうちょっと浅い人間が集団になったときのたちの悪さなら共感できるんだけど。

Ⅳとか書いているが、どうやらこれは倒した男の数をマークするはしごマークのようだ。

要するに、殺しのリストというわけ。

また、いろいろと検索して調べて、

・登場人物の男どもがアメリカの人気ドラマで好青年役を務めているキャスティングの妙があること

・製作人は意図してカサンドラを正しいものとして描いていないこと

・当初のプランではカサンドラが復讐して、あるいは死んで終わりだったこと(どちらの説もあった)

・プロミシングヤングマン(前途有望な男子)という言葉があり、スタンフォードで水泳選手がレイプし、禁固6カ月で済んだ件でその言葉が使われたこと

等を知った。

 

割とアメリカ内でのニュースとかコンテクストに依存した話だったことが分かる。

また、超映画批評の前田さんによると、何か平凡な脚本なら「描く」シーンが「描かれていない」ことに妙味があるらしい。

多分、レイプされた当時のニーナの姿なのかなと思う。

レイプの光景とか、レイプされた当人をあえて描かないことで「そいつの証言がほんとに信頼できるのか?」「加害者側にも同情の余地があるのでは?」と同様の構造を観る側に与えるための脚本ということだろう。

 

まあ、ちょっと内向きでどうなのかなと思うが、このように調べてしまうということは何か魅力が詰まった映画だったということだろう。