深淵をのぞく
ここ最近、猟奇殺人犯関連の本を2冊続けて読んでいる。
と言っても、多分その界隈を趣味とする人からすれば有名すぎる作品だと思う。
一冊はこれ。
もう一冊は北九州一家殺人事件の「消された一家」。
こういうのをハラハラしながら読むのって我ながら不謹慎だし、「物語」じゃない以上、怖いことだと思う。かといって、規制されるべきことでもないし、なんせぐいぐい読んでしまう。
前者は殺人犯だって人間だという臨床心理士の視点から分析したもので、後者は、完全なるサイコパス殺人鬼としてもはや有名すぎる存在になった松原太の怪物性をクローズアップしつつ事件の経過を追ったものだ。
要するに別物なんだけど、受け手である俺の需要は「怖くておもしろい」がでかい。脳内メーカーを見たら怖いと興奮が同じくらい満ち満ちていると思う。
それってなんだか平和ボケっていうか、深淵にのぞき返されたとき、お前は無辜の民でしかなく、ホラー映画冒頭で殺される無知でスケベな若者のように同情を買わずに消えていくんだぞ!と思う。
でもほら、もうホラー映画で例えてるわけで……。
死ぬとか殺すとか平気で使っているけど、実際の生き死にのフィールドはこういう陰惨なものであって、かなり日常ではそこから目をそらしているなと思う。
そして、目をそらすというのが基本的に敗北とか無知とか無考えに感じられてしまう俺みたいなもんは、それがどうにも悔しい。
悔しいが、かといって普段から常在戦場誰が人殺しかわからないと思っていてはベトナム戦争帰りのPTSDの兵士みたいになってしまうだろう。
だから、結局は深淵から目をそらして生きていくしかないんだけど。
でも、たまにこうやってのぞきたくなるんだ。