昨日の僕と二日酔いマン
嫁はんは酒を飲み、ひっくり返り、布団にゲロをはき、二日酔いで体調が悪くなった。
酒の悪さは本人にまっすぐ帰ってくる。嫁はんの肝臓はいぬかれ、そこから毒が回り、全身の機能は低下。牛乳を飲んで解毒しなくては!
俺の家は不透明な金魚鉢。ひと際冷たい冷蔵庫から『おいしい牛乳』を取り出して、マグカップにそそぐ。
「おいしいか?」
「……おいしい」
二日酔いマンは低いうなり声を漏らして再び眠りにつこうとするのだった。
俺はアーティスト。
といっても、ほとんど誰にも知られていない。
銀河系チャート22390位を記録した『Edge cobre』の作曲者だといっても、誰も知らないだろう(あの当時は、こちらの星系ではよくきかれていたのだ)。
ガチャン。
胸ポケットから音がするので、パスワードを入力して開く。
クォンタム・メイル(量子メール)が届いていた。
二日酔いマンと僕の隔離された暮らしに、いったい何の連絡があるっていうんだろう? セールスの知らせはごみ箱に突っ込んでおくよう設定しておいたはずだけど……。
そういぶかしがりながら開襟する(文面に目を通す)と、地球語でこう書かれていた。
「アナタヲスイリノヤカタヘゴショウタイシマス ヤマベ」
それで、昨夜は深夜1本記事を仕上げて、眠りについた。
本気を出せば3時間もあれば終わるのだ。
だからめんどくさくても仕事を受けてしまう。
まいったね、しかし。