小説『こちらあみ子』『ピクニック』『チズさん』ネタバレ感想
今村夏子の『こちらあみ子』『ピクニック』『チズさん』を読んだ。
いずれも、足りない人の話であった。俺は漫画の中で『ちーちゃんはちょっと足りない』がいっとう好きなので、もちろん『星の子』を読んで今村夏子の筆力にも信頼を持っていたので、面白く読んだ。 町田康の解説は、ちょっとよくわからなかった。
【こちらあみ子】 気づいているのかいないのか、明るい白痴のあみ子の話。卑近かつちょっと近代の嫌な言葉でいうとガイジの話。この場合、障害のある人、というニュアンス以外の何かがあるし、その言葉の存在もみんな知っているけどまあ大人になって言葉に出すことはない。でも、覚えている。
言葉は傷つける。その曰く言い難いニュアンスと、また映像的で心情を描かない、漫画が文学を描くようになってからの、諸説よりも文学的な「読み取る」ニュアンスをフィードバックして「感じ取る」に昇華させたニュー文学だ。
【ピクニック】 ルミたちの行為がいじめかどうかというと、いじめかもしれないが七瀬さんの扱い方にはそれくらいしかないじゃないという事情も分かるし、俺はきっとピクニックに行く側でも、新人でもなく、ただ黙ってニヤニヤ笑いを浮かべて横に立ってきいて、ソソクサと帰るだけの姑息な人間なので、まだこいつらのほうが立派に思える。
【チズさん】 流石に短いので受け取るものは少ない。チズさん以上に、主人公が足りないのでは、と想像させる。 全体的にコントにもできるよなあと思った。クローズアップ寄りのロングショットというか、本当に独特のピントの合わせ方だと思う。すごい。
かなり絶賛に近い。
俺は文句たれだからな。
今村夏子に関しては文句を余りつけられない。
なぜなら、俺は世界のいろいろな人間に気まずい思いを味合わせてやりたいからだ。
その徒党という意味において、俺と今村夏子は仲間である。
俺は仲間に甘い。
以下、採点。
こちらあみ子:95点
ピクニック:90点
チズさん:77点
長さに比例して点数が付けられている。
なかでもやはりあみ子が良かった。
いじめられようがはじかれようが平気の平左で存在できる「他者」の存在は俺にとって心強い。
「そうやっていこうや、もっと社会を内部から瓦解させていこうや」と思う。
これは緩やかな、非暴力の反社である。
あまりよくない。社会から抹殺されるかもしれない。
それでも、そのために芸術や文学は存在するのだという名目で、ゆるされている。
映画とかは結構点とか星取りとかする人がいるのに、小説を表する人であんまりそういう人はいない。
なぜかと考えると、以下のような理由が思い浮かぶ。
・小説は映画に比べて読むのが速い。よって、いちいち点をつけてらんない
・ジャンルが映画以上に固定されていないので採点が難しい
・小説読みは映画好き以上に作者リスペクトが強いので怒られそう
・小説書きはめんどくさい人が多いので怒られそう
・小説は頭がいい高級なジャンルのイメージがあるので、採点するとおこがましい感じが出る
はなしはかわって
毎年なら、そろそろ確定申告の書類作成に手を付けているのだが、今はやっていない。
やらなければ、と思うのだが、同時に何回かやったので「なんとかできるか」という余裕も生まれている。
慣れた方がいいが、慣れ切ってはだめだ。