裸で独りぼっち

マジの日記

映画『Our Friend』ネタバレ感想…絶賛

Our Friend/アワー・フレンド

youtu.be

めちゃくちゃよかった。
結局ヒューマンドラマが好きだな俺は。
もうちょっとメロドラマな話かと思いきや、過去と現在?の時系列を往ったり来たりするトリッキーな構成で、かといって笑って泣けて勇気がもらえるという感じでもなく、病気発覚前の不倫話とか、今回のテーマである夫婦の友人が居候状態であることに周りの人から嫌味を言われたりだとか、子どもに余命について話すかどうかでもめたりだとか、旦那が看病に疲れ切って憔悴したので旅に連れ出して、キャッキャしてる若い女とふれあってちょっと元気出したりだとか、そういうあってもなくてもいいが「こういう場面は確かにありそうだな」と確信できるシーンが続く。
そうだよな、死ぬことそのものや衰弱していく過程、病気が本人の精神も壊してしまうことも苦しいが、単純に病気の人間の面倒を見るというのはめちゃくちゃ衰弱することだ。
介護や闘病のリアルみたいなドキュメンタリーとか、あるいは社会派な切り口でそういった部分を描く作品は昨今増えてきたが、闘病もの感動作的な切り口(たとえば定番のバケツリスト(死ぬまでにしたい~~個のことを書くやつ)も出てくる)と、ドッキングさせるのはちょっと見たことがない試みだなと思った。
いや、知らないところでありふれているのかもしれないが。

旦那が眠っているときに最後の一呼吸をして、そのことを介護福祉士に知らされる。娘二人は本当の終末期には別の家にあずかってもらっていた。死ぬときはこんなものである。というか、家で死ねるだけ幸福である。
──と、思い知らされる映画を見せられて、「ちょっと難病者もので泣きますか」と軽い気持ちで劇場に足を運んだ俺はたった一人の劇場で、すっきりできないじんわりにじむタイプの涙をこぼした。

子どもに将来「〇〇なとき」に読んでね的な手紙を託す奴もやっていた。

結婚のときとか、出産するときとか。

それに対し、子供がLGTBQだったらどうするの!?的な糾弾する意見を見かけた(一個だけ)のだが、「もうそんなんええやん……」と切れるでもなくうんざりしてしまった。

俺は屁理屈であれロジックを重視する、争うタイプのよく言えば気骨がある、普通に言えば面倒な性格の人間だと思っていたのだが、その美点も汚点もそろそろ失いそうだ。

俺は平成の価値観とともに死んでいくだろう。

時代においていかれて老いるのは少し淋しいが、よくよく考えたら10代から別に時代との足並みはそろっていなかった。

ただ、人間がこの世には山ほどいて、情報社会がどんな影響力を与えたとて、俺は大山の蚊トンボ一匹である。

蚊トンボに新しいも古いもあるものか。

どうか、大山よ、鳴動してくれるな──。

穏やかに死なせてくれ。