裸で独りぼっち

マジの日記

映画『さがす』ネタバレ感想 絶賛より。ストレートにみた

さがす

youtu.be

脚本だけなら4.4くらいある。
予想できなかった。

序盤テンポよく進み、中盤で「なるほどこんな話か」と思わせておいて、最後に物語の全体を絵解きする。全く見事なのだけれど、中盤の「なるほどこんな話か」期間で面白さのバロメーターが盛り上がらなかったので、結果として映画全体の評価は下がってしまった。
もう少し中盤のテンポも良ければな(3カ月前からとんで13カ月前に戻るというのはさすがに「過去の過去」すぎて…)。
難病と安楽死というテーマはそれはそれで一本の映画になるくらい重いので、聖は妻の難病で金がなく、名無しに協力させられたくらいでシンプルでよかった気もするが・・・ありきたりかなあ?

最後も切れ味重視でいうと、以下のどちらかの方が良い気がする。

・聖がアドレス帳を見つけて、自殺志願者の問い合わせに「はい」と返事して「新たな殺人者(もう変わってしまったお父ちゃん)」の誕生で〆

・情報は伏せておいて、聖が待ち合わせ場所に行くと、カエデが現れ「やっと見つけた」で〆

ただ、確かにそうするのは安易で映画として何か描きたいものが出るのは最後の卓球シーンだよな。。卓球が普通にうまくて見入ってしまうというのもあるし。

ただ、カエデがあそこでまっすぐ父を警察に突き出すという決断に至るというのもそれはそれで不自然な気がして、(それこそTwitterアカウントという証拠を見つけた時点で警察につきだせばいいし・・・)。

まあでも、見事だった。
こういう言い方がいいのかはわからないが、おもしろい韓国映画みたいだった。
片山監督はこういうことを言われまくってうんざりしているんだろうな(ポンジュノの助監督だったから)。

おまけの夜の考察も見た。

youtu.be

卓球台のネットが善悪の此岸というのは確かになあと思う。

構造的に物語を見ると、単なる作者の絵解きになってしまう気がして、俺は逆にあんまり好きじゃないのだけれど、ここまで証拠をそろえられると確かにそうなのかもと納得はさせられる。

すごい。

 

カエデが同級生を花林島に連れていくためにおっぱいを見せることを要求されるくだりについて嫌悪感を示すFilmarkのコメントが散見。

しかし、この映画の倫理観の中でそんなとこにだけ注目するなよというのが俺の意見だ。

カエデがシスターに唾吐き掛けるとか、チャリンコを声をかけたとはいえさっと借りるとか、そういう世界観の中の話なので、殺されるかもしれない島に連れていかれるかもしれない状況で男子がおっぱいを要求したとしてもそこでブーブー言うのは違うと思う。

というか、おっぱいかよ、というのがむしろ俺の感想で。

死ぬかもしれへんのやからセックスまで要求しないその遠慮の塊(誤用)具合がむしろ気持ち悪かった。

 

まあ、そんなことはどうでもいいのだ。

中盤までは、随所に入れられる大阪感のあるギャグも含め、じゃりン子チエmeets殺人事件というコンセプトで作られたのかなーと思った。

それ自体は面白いけど、漫画的にどうしてもなってしまうので、「物語のシリアス度に対してマイナスなんじゃないかなー」と考えていたところで、終盤グッとシリアス度が高まったので、俺はやられた。

『岬の兄弟』に特にエンタメ的飛躍がなかったので油断していたのだ。

スリラーとして期待以上の完成度を見せられたので、今後もこの調子でエンタメ的作品・商業的作品に片山監督には踏み込んでほしい。

ただ、アトロクで通常の映画では3~4週間で撮りきるところをスタッフを減らすなど予算を工夫して2~3カ月かけてじっくり撮ったと話していたので、そのやり方がバジェットが大きくなって崩れないか、心配ではあるが。