裸で独りぼっち

マジの日記

『メランコリック』 感想 90点 ヤンマガの読み切り55Pの面白い漫画

※ネタバレがありますよ

Filmarks

漫画みたいな話だけど面白かった。
古谷実の漫画

こっちが抱いた疑問(「なんではやく田中を殺さない?」「こんな素人連れてってもしゃあないやろ!」など)にはっきり回答を用意してくれるのもありがたい。

松本がもう少し残忍な人間でないとやってることとのバランスがとれない点がちょっと気になったくらい。

タイトルのメランコリック。そこまで憂鬱な話がどこにあるやらとおもったが、まあ主人公や松本や銭湯のおじいが浸っていた憂鬱感から息継ぎのようふっと浮かぶ瞬間、それとの対比なんだろうなあ。

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Story

東京大学を卒業した後、実家で夢もなくフリーター生活を送る和彦。銭湯「松の湯」で高校時代の同級生・百合とであい、彼女目当てにそこのバイトに応募することに。しかし、なぜか銭湯の様子がおかしい。夜足を踏み入れると、死体と銭湯経営者の東、先輩社員の小寺が。松の湯は殺し屋の死体処理場としてつかわれていたのだ。

 ヤンマガの読み切り55Pの面白い漫画

日本では映画を撮るための才能(画作り・ストーリー運び・脚本力)を持つ人物は漫画家になってしまうといわれる。確かに人も金もかかる映画に比べれば、とりあえず一人で完成させられ、想像力次第でどんな画もつくれる漫画家は強い。

このメランコリック、ヤンマガで読み切り掲載されたら「普通に面白い」作品という感じだ。連載に期待が持たれる。古谷実とか花沢健吾フォロワーなのかな。

とはいえ、映画だからこそ面白い部分もあるんだなあと思わされた。

それは、ヒロイン百合の魅力。

いってしまえばリアルなちょうどいい女感である。

 

リアルなちょうどいい女感

きさくで会話をリードしてくれて、小さくて気軽に接することができる。なぜだかこちらを誘ってきて気がある風である。

童貞だった鍋岡は初の「ボーナス」で景気の良いディナーに百合をつれていき、告白。

すると「一つだけ条件があるの。つぎはもっと気軽な居酒屋とかにしよ」だって。

 

都合がいいなあ~~~。

 

この女を漫画にするとやっぱりちょっと童貞の妄想感が出てしまう。だから古谷実とか花沢健吾は女視点での思惑とか裏切りとか描くことになるわけだ。

しかし、映画は当然ながら生身の役者が演じるので、漫画より質感がリアルである。

これが、百合を生々しくしていた。

 

そして、欲望の対象たる百合に感化される形で、和彦の能動性も花開くのだ。

 

頻出する「なぜ?」が意味するテーマ

作中では「なぜ?」という問いが重要な場面で頻出する。

 

―なぜ、この人は殺されなければならなかったんだろう?

―なんで、和彦さんはいい大学出て、フリーターなんですか?

―なぜ、田中を今まで殺そうとしなかったの?

―なぜ、松本はこんな仕事をしているの?

 

これらの答えは、濁される。わからないからだ。

はっきりとした理由はないが仕事だからという理由で関根は殺されるし、多分本人にも理由がわからないまま和彦は定職につかなかった、あるいはつけなかった。

田中を殺さない理由は報復のためではなく何となく現状維持のためで、松本は生まれからしてなぞだ。

 

なぜ生きるのか?趣味もなくてなぜ生きるのか?なぜ働かないのか?

 

田中襲撃前に居酒屋で交わされる会話に集約されるのが、「回答なき問い」である。

 

そして、襲撃後はそれが問われない。

 

―なぜ、和彦さんは助けに来たんですか?

―なんで、この子は銃で撃たれてるの?

 

普通ならある問がそこにはない。理由なく和彦は松本を助けるし、母は消毒液をかける。

 

久々に松の湯に訪れた百合は銭湯に度々来ていた理由を「広いお風呂が好きだから」ではなく…「公共料金を払い忘れて家の風呂に入れないから」だという。ここで「和彦に会うためかと思った」とスカされた観客は少なくないだろう。

 

なんだそれ、と和彦は笑う。

 

そして、終盤の独白。

最高だ、と思えるときのために生きているんだと思う

へ。

 

理由なんてきっと、他人には理解されない「なんだそれ」なものなのだ。しかし、それでも生きるし殺すし風呂に入る。

Filmarksの感想ではメランコリックというタイトルの由来をテーマと絡めて推察したが、監督の語る理由は以下らしい。

 

松崎:“憂鬱”を意味するタイトルの由来も教えて下さい。

田中:“メランコリック”という言葉は「憂鬱」という意味があるにも関わらず、音としての響きは何だか可愛い。本質的には憂鬱かもしれないけれど、そこから生まれ出る要素は、可愛かったり愛しかったりする、というのがこの映画を上手く言い表しているように思えて。僕の人生観もまさにそういうものだった、というのも由来のひとつです。出典:『カメ止め』に次ぐサプライズ。 映画通の度肝を抜く 『メランコリック』、田中征爾監督にインタビュー(ELLE)

 なんだそれ。

だけどきっと、そういうものなんだろう。